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#BAFTA 授賞式、大注目主演男優賞から! - 英国アカデミー賞2019総括その2

アカデミー賞最大の前哨戦、英国アカデミー賞; BAFTAの授賞式が終了した。先程前編を公開したので、大注目・主演男優賞以降の残りの部門と総括を公開する。ノミネーション振り返り記事はこちら。

 

結果はここから。受賞作品は🎭を付けて太字にした。

www.bafta.org

前編はこちら。

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部門別

主演男優賞

🎭ラミ・マレック、『ボヘミアン・ラプソディ👑

 

 ——ボラプクルーにマレックが一通り挨拶した後、駆け寄ってきたのは何と、スパイク・リー!そして、ブライアン・メイ同席の中、『ボヘミアン・ラプソディ』のギターソロで送り出されるのは何とも粋だなあ

 

まだちょっと信じられない感じがある。GG賞ドラマ部門、SAG賞、BAFTAを制し、ラミ・マレックオスカー筆頭候補となった。当確……出していいんですよね? フレディを演じたからBAFTAで優遇されたとかそういう引き算は要らないんですよね……?(恐る恐る)

このブログを始めた頃、『ボヘミアン・ラプソディ』は批評家からの大ブーイングに遭っていた。マレックの演技は確かに評価されていたものの、主演男優賞は映画本編の評価にも引き摺られやすい部門であり、彼がここまで来るとは信じられない状況だったと思う。それとも、本編へ逆風が吹いていたからこそ、「自分は素晴らしいと思う」という票が沢山集まったのだろうか。いずれにしろ素晴らしい結果だ。おめでとう!

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ノミニーとなったのは、『アリー/スター誕生』ブラッドリー・クーパー、『バイスクリスチャン・ベール、『僕たちのラストステージ』スティーヴ・クーガン、『グリーンブック』ヴィゴ・モーテンセン。オスカーではスティーヴ・クーガンに代わって、ゴッホを演じて高く評価されたウィレム・デフォーがランクインしている。これはいよいよオスカーの行方がよく分からないことに……始まる前はクーパーが最有力なんて言われていたのになあ(勿論大好きな作品なのでマレックの受賞はとっても嬉しいんですよ)。

 

 ——授賞式前ツイート

 

 ——このふたつは授賞式前!後者では日本についても語り、ほとんどみんながライヴ・エイドのシーンで歌っているのに驚いたとも話している。その後はキャスト同士が大親友になった話についても💕「これはフレディ・マーキュリーからの贈り物だよ」というラミの言葉が素晴らしい

よく聴くと後者のインタビューでは、あちこちのスタジオで撮影したことが素晴らしかったと述べつつ、今はロンドンに住もうと思って家探ししていると。これはルーシーちゃんとゴールインフラグ……!幸せになってくれたらこれほど嬉しいことはない💕

 

 

因みにマレックが受賞してみんなぱっぱらなのでボラプボーイズの特集もまたする予定です。

 

theriver.jp - 言われてみればここ数年は確かに実話ものが多い気が

助演女優賞

🎭レイチェル・ワイズ、『女王陛下のお気に入り

 ——授賞式前ツイート

 

最有力候補だった『ビール・ストリートの恋人たち』レジーナ・キング落選により、誰が獲ってもおかしくないと言われていた助演女優賞。個人的には、最多ノミネートを勝ち取った『女王陛下のお気に入り』からどちらか、それもイギリス人のワイズの方が多少有利かな、と考えていたが、その通りの結果となった。

その他のノミニーは『バイスエイミー・アダムス、『ファースト・マンクレア・フォイ、『女王陛下のお気に入りエマ・ストーン、『ふたりの女王 メアリーとエリザベスマーゴット・ロビー。実力者揃いな上、直前のSAG賞は滑り込んだエミリー・ブラントが受賞していたので(『クワイエット・プレイス』)、全く予想できなかった。

オスカーではフォイとロビーに代わり、レジーナ・キングと『ROMA/ローマ』のマリーナ・デ・タビラがノミニーとなる。ここのところ足踏みだったキングが獲得するのか、『女王陛下のお気に入り』組のどちらかが票割れを回避して獲得するのか、それとも無冠の女王になりつつあるエイミー・アダムスが遂に獲得するのか、少し楽しみである(マリーナ・デ・タビラは驚きのランクインだったのでちょっと難しいだろう)。

 

 

助演男優賞

🎭マハーシャラ・アリ、『グリーンブック』

アリはここまで来たらオスカー当確だろう。2年前『ムーンライト』でも助演男優賞を獲得しているアリだが、映画賞に戻ってきて今年も最有力候補というのは嬉しいものがある。

 ——プレゼンターはヴァイオラ・デイヴィスだ!彼女も2年前共にオスカーに輝いた人物

 

その他のノミニーは、『ブラッククランズマン』アダム・ドライバー、"Can You Ever Forgive Me?"リチャード・E・グラント、『バイスサム・ロックウェル、『ビューティフル・ボーイティモシー・シャラメ。ロックウェルとシャラメは、それぞれ『スリー・ビルボード』とCMBYNで去年も賞レースを沸かせた人物。これからも見続けたい俳優ばかりだ。

 

作曲賞

🎭『アリー/スター誕生』 - ブラッドリー・クーパーレディー・ガガ、ルーカス・ネルソン

 

勝手にBAFTAは主題歌賞があるんだと思ってこの結果を読んでいたのだが、実は作曲賞だった。意外にこの部門はほとんどノミネートされてこなかったので、伏兵的な印象がある。

グラミー賞が同日開催だったためガガは出席できなかったが、この結果にこんな投稿を。あなたの音楽は充分それに値するものだったよ、という気分でいっぱいだ。賞は主演男優賞と監督賞でもノミニーになっていたクーパーが受け取った。

 

『シャロウ』でオスカー主題歌賞ほぼ当確状態だが、こちらは同日開催のグラミー賞で最優秀ポップ・デュオ部門を獲得した様子。おめでとう!

 

その他のノミニーは、『ブラッククランズマン』テレンス・ブランチャード、『ビール・ストリートの恋人たち』ニコラス・ブリテル、『犬ヶ島アレクサンドル・デスプラ、『メリー・ポピンズ リターンズ』マーク・シャイマン。オスカーでは『スター誕生』と入れ替わって『ブラックパンサー』のルートヴィッヒ・ヨーランソンがノミネートされている。(個人的にはブリテルを推したい……) GG賞は『ファースト・マン』で『ラ・ラ・ランド』以来2年ぶりにジャスティン・ハーウィッツが受賞したが、BAFTA・オスカー共に選外だ。

『アリー/スター誕生』は、今年の映画界で最も話題になった作品のひとつながら、ノミネートされる部門部門に強敵がおり、なかなか受賞までは辿り着けずにいた。ガガとクーパーが丁寧に作ったサントラが評価されたことは嬉しい結果だと思う。

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撮影賞

🎭『ROMA/ローマ』

今年のBAFTA3強とも言える『女王陛下のお気に入り』(ロビー・ライアン)、『COLD WAR』(ウカシュ・ジャル、同じく白黒映画だ)を破って、盟友エマニュエル・ルベツキと袂を分かったアルフォンソ・キュアロンがまたしても受賞。筆者も「白黒なのに『美しい』というものはあるのだなあ」と思わされた映像だったので納得の結果だ。

 

その他のノミニーは、『ボヘミアン・ラプソディ』のニュートン・トーマス・サイジェルと、『ラ・ラ・ランド』コンビだった『ファースト・マンリヌス・サンドグレン。個人的には賞レース苦戦していた『ファースト・マン』辺りが獲らないかと思っていたが、そこはやっぱりクアロンの方が強かった。

 

編集賞

🎭バイス』ハンク・コーウィン

 

密かに『ボヘミアン・ラプソディ』のジョン・オットマンを推していた部門だが*1、『バイス』のコーウィンにこの栄誉が輝いた。ボラプは技術系でひとつくらい堅いかなあと思っていて、その内のひとつがこの編集賞だったのだが、未見の作品が獲得なのでオスカー予想を少し修正しなければと思っている。

ファースト・マン』も賞レースでかなり苦戦していたので期待していたのだが、受賞までは至らなかった。ここにも『女王陛下のお気に入り』(ヨルゴス・モヴロプサリディス)と『ROMA/ローマ』(アルフォンソ・キュアロン、アダム・ゴフ)がランクインしている。

 

プロダクション・デザイン賞(美術賞)

🎭女王陛下のお気に入り

 

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』、『ファースト・マン』、『メリー・ポピンズ リターンズ』、『ROMA/ローマ』を押さえ、ブリティッシュ・コスチュームプレイの『女王陛下のお気に入り』が獲得。この題材であの映像ならBAFTAは当然だろうなという結果となった。

オスカーではファンタビ2に代わって『ブラックパンサー』がノミネート。うーん、どれも受賞に値する映画なのでちょっと予想が難しい……

 

衣装デザイン賞

 

ダブルノミニーになっていたサンディ・パウエルが『女王陛下のお気に入り』で獲得。イギリスを舞台にしたコスチュームプレイということでBAFTA獲得は当然とも言える結果だが、元々パウエルのデザインは高く評価されており、オスカーも最有力候補と言えるだろう。オスカーは『ボヘミアン・ラプソディ』OUT☞『ブラックパンサー』IN。この結果を見るだけでもBAFTAがイギリスびいきなのが垣間見えるだろうと思う(笑)。

 

メイクアップ&ヘア賞

当然のようにここも『女王陛下のお気に入り』が獲得。オリヴィア・コールマンもスピーチ中に讃辞を述べていたナディア・ステイシー(Nadia Stacey)がノミニーとなった。

ところが意外なことに、オスカーのメイクアップ・ヘアデザイン賞では、『女王陛下のお気に入り』はノミニーのショートリストにすら入っていない。代わりにノミネートされたのは、スウェーデン作品の"Border"、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』、『バイス』の3本だ。どれが獲っても嬉しい結果なので注目したいと思う。

 

音響賞

 

最初にひとこと。Yaaaaaaaaaaaaaaaas!!!

技術系ひとつふたつ堅いだろうなと思っていた『ボヘミアン・ラプソディ』がここで獲得。編集賞か音響賞が堅いと思っていたので予想通りの結果となった。オスカーでは音響編集賞、録音賞、編集賞にノミネートされているので期待が高い。

 

特殊視覚効果賞

 

今年の話題をかっさらった『ブラックパンサー』が獲得。ところが、オスカーでは何と選出漏れ……スーパーヒーロー映画や魔法、SFを題材にした作品がノミネートされやすいが、オスカー7部門ノミネートにもかかわらすVFXで漏れているのは意外な結果だ。スピルバーグが久々にSF作品で賞レースに戻ってきた『レディ・プレイヤー1』は、VFX部門でオスカーにもノミネートされている。

 

ライジングスター賞(新人賞) - EE RISING STAR AWARD

 

唯一、一般投票で決まる新人賞には、『ブラックパンサー』のシュリ役で躍進したレティーシャ・ライトが選出された。

 

 

 ——「わたしに『イエス』と言ってくれた人全て、わたしにチャンスをくれた人全てに感謝を述べたい」この後には未来ある若者たちへ向けて自分を信じる大切さを述べる素敵な言葉が続いていた。レティーシャ、おめでとう!*2

 

ノミネーションと獲得内訳

 

最多受賞は最多ノミネートも獲得し、女優2部門を押さえた『女王陛下のお気に入り』。続くのは4部門を獲得した『ROMA/ローマ』。演技部門を獲得したこと、また衣装・美術部門の獲得が勝敗を分けた結果だ。意外にもこれに続くのは主演男優賞と音響賞を獲得した『ボヘミアン・ラプソディ』。『女王陛下のお気に入り』と『ROMA/ローマ』が数多く獲得したことで割を食い、1部門ずつ4作品が分け合う結果となった。

気になるオスカーだが、技術系の結果はまだまだ波乱が多く読み切れない印象。作品賞・外国語映画賞・監督賞は、このままならキュアロンが全てかっさらっていくだろう。男優賞は受賞者が絞られ(固まって)きた印象があるが、女優賞は英国贔屓の受賞となったのでオスカーもこのままということにはならないだろうと思う。

 

気になるオスカー授賞式は2月24日(日本時間2月25日)予定だ。予定が既にあってリアルタイム視聴できないのが悲しい限り……

オスカーに向けた前哨戦結果はこちら

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関連:映画賞 / BAFTA / 英国アカデミー賞

*1:あの映画はクイーンの楽曲をふんだんに使ったという事情から、オリジナル作品を対象とする作曲賞の候補にはなり得ない。実はクイーンの楽曲の他にも、映画音楽が新たに執筆されていて隙間を埋めているのだが、それを執筆したのは編集も担当したジョン・オットマンなのだ(というわけで応援していた)。

*2:冒頭で触れているのは、2015年に"Urban Hymn"のキャストで獲得した BAFTA Breakthrough Britsのことだ

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