ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

役所広司の役者魂こそ、渇き - 映画『渇き。』

拝啓ギャガ様。

これこれ!!!!!こういう邦画が観たかったんだよ!!!!!

敬具

 

今更ながら、2014年公開の『渇き。』を観た。役所広司がクズ親父を演じる一作として宣伝されており、個人的に随分気になってはいたのだが観る機会がなくここまで先延ばし先延ばしに。「元刑事のクズ男が失踪した娘を探してみたらとんだクズ女だった」という筋書き以外はシャットアウトして観てみたら——バイオレンス、エロ、グロ、何でもござれのとんだ映画だった。登場人物の狂気だけでなく、それを演じる役者側の力量にも目を見張るところがある。どうやら公開当時は賛否両論のようだったが(Yahoo!映画は8月20日時点で2.65点)*1、専ら洋画専門のシネフィルと化しかけていた筆者の心をわくわくさせた邦画作品としてレビューしてみたい。

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※ネタバレと思われる記述は白字にしてあります。反転させて読むかは貴方次第です※

*1:Yahoo!映画は、filmarksなどと違いYahoo!IDがあれば誰でも投稿できる手軽さもあってか、普段映画を観ないんだろうなという人のコメントも沢山あるのが特徴。海外の映画祭で高く評価されている作品でも、平気で「よく分からなかった」みたいなコメントが乱発する有様なので、正直筆者はあんまり当てにしていない。しかしながら、その手軽さから「話題作だから観に行った」というライトな層の素直な感想も沢山溢れているので、賛否両論映画のバロメータとしては凄く分かりやすい指標である。つらつら書いたが要するに、2点台半ばというのは賛否両論映画の証拠であって、大絶賛少数+大不評多数というところだろう

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ホロヴィッツは「信頼できない語り手」がお好き - 『メインテーマは殺人』ゲラ読み企画

先日、こんなツイートを目にして、出来心で応募してみた。(実は)ホームジアーナの筆者にとって、アンソニーホロヴィッツと言えばシャーロック・ホームズ財団公認の続編を書いた人物。そう言えば昨年『カササギ殺人事件』も話題になっていたな、と思ってちょっと興味が湧いたのである。

そんなこんなで応募してみたら何と当選。今回全編を読み切ったので、ネタバレない程度にレビューをお送りしたいと思う。

 

あらすじ

ダイアナ・クーパーは自身の葬儀の段取りを申し込みに行き、それから数時間で殺害された。脚本家として働くアンソニーホロヴィッツは、以前のドラマで監修を依頼した元刑事デイヴィッド・ホーソーンに依頼され、顛末を小説に起こすことと引き換えに捜査に巻き込まれることになる。クーパーが依頼した葬儀屋のコーンウォリス、息子デイミアンなどから話を聞くうち、ホーソーンらはクーパーが10年前に交通事故を起こしていたことを知る……

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サイモン・ペグとクリスマスに贈る映画『アナと世界の終わり』小ネタ集

先日『アナと世界の終わり』"Anna And The Apocalypse"('17)を観てきた。ネタバレ回避のあまり砂を噛むようになってしまった紹介記事で、筆者はこの作品についてこんな風に紹介しながら、ライアン・ゴスリングへの偏愛だけ解説して残りふたつは放置してしまった。これも何も、『アナと世界の終わり』の制作陣があまりにゾンビ映画好きで、「誰がそんなところまで拾うねん」という細かいネタまで盛り込んでいたことにあるのだが……

そう言えばこの作品、ある雑誌では「『ショーン・オブ・ザ・デッド』meets『ラ・ラ・ランド』」と評されていたが、全編にわたって溢れていたのは、クリスマス、『ショーン・オブ・ザ・デッド』の小ネタ、そしてライアン・ゴスリングへの偏愛だった……

ライアン・ゴズリングは死んでてもイケてるぜ - 映画『アナと世界の終わり』 - ちいさなねずみが映画を語る

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……というわけで、今回の記事では『ショーン・オブ・ザ・デッド』のネタバレ全開に、『アナと世界の終わり』の小ネタ集を大特集! みんなジェネオン版ディスクを用意して*1突撃だー!

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※この先は『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『アナと世界の終わり』のネタバレを許容する皆さんだけお進み下さい※

 

そう言えば『アナと世界の終わり』って、どう見ても「アナ雪」のぱくりっぽい邦題なのに、実はこっちの方が原題に忠実って面白いよね……("Anna and The Apocalypse"と"Frozen")。

 

*1:何故ジェネオン版を指定するかというと、現在発売中のKADOKAWA版は、ジェネオン版にたっぷり収録されていた特典があらかたカットされてしまっているのだ……

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ライアン・ゴズリングは死んでてもイケてるぜ - 映画『アナと世界の終わり』

のっけから訳分からないことを、と思われるかもしれないが、取り敢えず読み進めてほしい。

 

アナと世界の終わり』"Anna And The Apocalypse"('17) を観てきた。THE RIVERで予告編の公開が記事になった時から楽しみにしていた一作。5月末の日本公開決定後も、なかなか杜の都での公開が決まらずに鬱々としていたが、この度ようやく封切られたのでレビューをお届けする。ちなみに仙台の公開館、チネ・ラヴィータでは7月12日から2週間の限定公開とのことなので、気になる方はお早めに! (とか言いながら書く時間が無くて放置している間に最終日が迫っているけれど、気にしない気にしない!)

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そう言えばこの作品、ある雑誌では「『ショーン・オブ・ザ・デッド』meets『ラ・ラ・ランド』」と評されていたが、全編にわたって溢れていたのは、クリスマス、『ショーン・オブ・ザ・デッド』の小ネタ、そしてライアン・ゴスリングへの偏愛だった……*1

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!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※この記事ではナチュラルに『ショーン・オブ・ザ・デッド』のネタバレを含む可能性がありますので未見の方はご注意下さい※

 

 

*1:人口に膾炙してるからタイトルは「ゴリング」にしたけど、本当の発音は「ゴリング」らしいから、一応ここから下では「ス」で統一しておこうと思う

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人間ニール・アームストロングの苦悩に焦点を当てた静かな作品 - 映画『ファースト・マン』

1969年7月20日20時17分 (UTC)。NASAによる月面探査・アポロ計画において、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンの2名を乗せたアポロ11号の着陸船「イーグル」が月面に着陸した時間である。今年はつまり、この歴史的なミッションから50年という節目の年だ。

 

そんな今年、このミッションの裏側に迫るひとつの作品が日本で劇場公開された。作品の名は『ファースト・マン』"First Man"。『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督、ライアン・ゴズリングが再タッグを組んだことでも話題となり、ヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映されたときにはアーリー・レビュー*1で数多の絶賛を叩き出した。ところが、アポロ11号の偉業を讃える内容を期待していた一部のアメリカ国民からは不興を買い、北米興収は多少の伸び悩みを見せることになる*2昨年が強者揃いの映画賞シーズンであったこともあるが、その後の映画賞の結果も芳しいものではなく、チャゼルは長編映画の監督3作品目にしてちょっとした躓きを残してしまうことになった。

 

しかしながら、この作品を制作情報の段階から心待ちにしており、公開直後に劇場へ足を運んだ筆者にしてみれば、「作品の焦点はチャゼル作品として当然のものであり、その描き方も決して批判されるべきものではない」というのが主な感想だ。確かにアポロ11号へ至る数多のNASAによる計画をはしょって描いたきらいはあるが、この作品の主眼はアームストロングの苦悩にあるのだから、切り捨ててしまってもよい視点なのかもしれないとは思う。というわけで、今回はアポロ11号打ち上げ50周年の節目として、『ファースト・マン』を取り上げてみたい。

www.youtube.com - ディスクは7月3日に発売されたようで何ともタイムリ

 
!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※本記事では、マーキュリー・ジェミニアポロ計画の内容として歴史的に広く知られていることのみに触れるようなるべく配慮しますが、新鮮な気持ちで映画を観劇したい方はご注意ください。またラストのアームストロングの行動について触れる部分があります※

*1:Early Review。一般の上映に先立って観劇した批評家が出す映画評のこと

*2:因みに現在のところ、Rotten Tomatoesの評価は批評家87%支持・一般観衆67%支持(2019年7月13日現在)。Metacriticでは批評家スコア84点/100点の必見映画、一般観衆スコア7.4点/10点(2019年7月13日現在)。

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悲喜こもごも? 『MILK』とカードボード・ベン新作祭り - 何度目だボラプボーイズ

忘れた頃にやってくる、それが「ヤツら」である。

 

映画賞シーズンから早半年。1年も折り返しを過ぎ、次の映画賞シーズンに向けた動きが色々と聞こえてくるはずの時期だが(実際デクスター・フレッチャー監督*1の『ロケットマン』が好評スタートを切ったと話題になっている様子)、未だに『ボヘミアン・ラプソディ』賞レースの仲良しぶりを引き摺って(?)いるのがあのボラプボーイズだ。7月4日のアメリカ独立記念日前後に、そんな彼らの相変わらずな仲良しぶりが投稿されていたので、是非ご覧いただきたい。

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  • 待望のMILK続編……?
    • こちらはかっこいいマルナティ
  • そんなマッゼロさんは尻目に……リーとハーディのフランス旅行
    • 【悲報】カードボード・ベン、まさかの展開
    • 190720更新) このふたりだって負けてないぜ
  • 190730追記) 喜びの余り叱られるマッゼロさん
  • おしまい

 

*1:みんな知ってると思うけど、ブライアン・シンガーがすったもんだで降板した後、『ボヘミアン・ラプソディ』を完成に導いた後任監督。そう言えば彼の監督就任は『ロケットマン』の製作総指揮も務めるマシュー・ヴォーン(『キングズマン』『キック・アス』など)の強い後押しあってこそだった(THE RIVER)。

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どん底のダブリンから羽ばたく珠玉のアオハル映画 - 『シング・ストリート 未来へのうた』

厨二病? そう呼びたいならそう呼べよ」そう言わんばかりに筆者の中で燦然と輝く傑作作品がある。その映画の名前は、2016年公開の『シング・ストリート 未来へのうた』"Sing Street" だ。ジョン・カーニー監督が、自らが青春時代を過ごした1985年のダブリンを舞台に、バンド活動を通して様々な意味でもがきながら成長していく少年たちを描いている。筆者にとって映画館で観たことを誇れる作品のひとつだが、この度ちょっとした上映会を開くことになったので、そのために書き下ろしたしおりの内容を公開したいと思う。(今回の記事はネタバレフリー!)

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