ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

自らのキャリアを盛大に揶揄するヒュー・グラント - 映画『パディントン2』

イギリスが誇るもふもふムービー、パディントン2"Paddington 2" ('17)を観た。2014年に公開された前作の登場人物が再集結。おまけにしわくちゃになったヒュー・グラントが、前作のニコール・キッドマンに負けず劣らず魅力的な悪役を演じる一作だ。今作でもパディントンの魅力は彼の大好きなマーマレードのように激甘だった🍊*1

パディントン2(字幕版)

パディントン2(字幕版)

  • 発売日: 2018/06/13
  • メディア: Prime Video
 

 

そう言えば意図していなかったけれど2記事続けてうぃしょさん祭りになった。

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  • あらすじ
  • キャリアを自ら揶揄するおヒュー
    • 若かりし日のおヒュー
    • 因縁のライバル(?)コリン・ファースの台頭
    • この作品はグラントにとって大きな転機だ
  • And Now for Something Completely Different.
    • 相変わらずミスコミュニケーション祭り
    • 泳ぐサリー、TSOWじゃん
    • ハリポタ組がまたひとり
    • ビュキャナンが送るミュージカルシーン
  • おしまい

 

あらすじ

ロンドンであたたかいブラウン家の一員となったパディントン(声:ベン・ウィショー)。ペルーに残してきたルーシーおばさん(声:イメルダ・ストーントン)が100歳を迎えることになり、パディントンは誕生日プレゼントにロンドンの名所を綴った年代物の飛び出す絵本を選ぶ。ところが彼がうっかり口を滑らせたことから、絵本は落ちぶれた「元」俳優フェニックス・ブキャナン*2(演:ヒュー・グラント)に盗み出されてしまう。強盗現場に居合わせたパディントンは誤認逮捕されてしまい、無実の証明と絵本の奪還にブラウン家ともども立ち上がるのだった……

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!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT!  SPOILER ALERT! !!!
※新鮮な気持ちでこの作品を観たい方はご遠慮ください※
(でも正直そんなにネタバレはないと思う)
 

キャリアを自ら揶揄するおヒュー

誰が何と言おうとこの映画はおヒューのセルフパロディだ。ビュキャナンはウェストエンドで鳴らした俳優ながら、今ではドッグフードのCM(しかも犬役!)が精一杯の落ち目ぶり。実際のおヒューのキャリアはもうちょっとマシだが、この姿に彼のキャリアが思い起こされないと言ったら嘘になる。

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若かりし日のおヒュー

オックスフォード大学在学中に俳優としてのキャリアをスタートさせたグラントは、27歳時の1987年に出演した映画『モーリス』"Maulice" がきっかけで世界的な知名度を得る。その後、1994年の映画『フォー・ウェディング』"Four Wedding and A Funeral"から脚本家リチャード・カーティスと蜜月を築き、相次いでカーティス作品に出演して「ロマコメの帝王」の名を欲しいままにしたのだった。『ラブ・アクチュアリー』('03)のコメンタリーで、カーティスから「君のキャリアはほとんど僕の作品じゃないか」と揶揄されているが、実際この頃のキャリアはそんな感じだったのである。

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*1:映画『パディントン』チームはGiphyで公式GIFを公開しているのだが、前作のかわかわパディントンから今作の凜々しいパディントンまで沢山公開しているので是非観てほしい。推しはこれ。☞Orange Fruit GIF by Paddington Bear - Find & Share on GIPHY

*2:どう聞いても「ビュキャナン」と発音されているが、あらすじのところだけは字幕に表記を合わせておく

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ひとりでいるのも、ふたりでいるのも苦しい - 映画『ロブスター』

奇才ヨルゴス・ランティモスが2015年に発表した映画『ロブスター』"The Lobster" を観た。昨年初めに『女王陛下のお気に入り』が公開された時から気になってはいたのだが、その頃録画してそのまま放置してしまっていた。……ううむ、ランティモス作品、好きかもしれないな。

ロブスター(字幕版)

ロブスター(字幕版)

  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: Prime Video
 

—— 今週のお題「最近見た映画」

 

  • あらすじ
  • ひとりでいるのも、ふたりでいるのも苦しい
    • ホテルにて - ふたりへの道は遠い
    • ホテルにて - 波乱の幕開け
    • 森の中へ
  • 物語の結末はあなたの心に

 

あらすじ

パートナーがいないと強制的に「ホテル」へ送られ、期限内にカップル成立しなければ、好みの動物に変えられてしまう世界。主人公デイヴィッド*1(演:コリン・ファレル)は妻に捨てられ、犬の「兄」を連れて「ホテル」住まいを始めることになる*2。上手い伴侶を見つけられず、犬も殺されて絶望した彼は森へ逃げ込んで独身者パーティの一員に。恋愛御法度のグループで上手く行くかと思いきや、彼は近視の女(演:レイチェル・ヴァイス)と出会ってしまうのだった……

!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※この先には物語のネタバレとなる記述があります※

 

*1:ここではそう書いたが、この作品世界では意図的に固有名詞が避けられており、以下表記は「主人公」に統一する

*2:この時主人公はロブスターへの変身を希望するが、これがこの作品のタイトルである

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久々にブリリアで沢山映画を観ました

ここ1ヶ月ほど大変ばたばたとしていて、ゆっくりと映画を観る時間もなかった。忙しかった分、急に何するでもない時間ができたので、何の映画を観ようか皆目見当も付かない。そう言えば忙しさにかまけてブリリアの配信作品を放置していたので、折角だから一気観してみた。相変わらずいい作品ばっかりだったので、ちょっと記録に残しておく。

 

ブリリアってなんやねん、という人にはこの記事を。ブログを始めた頃の記事ですね。短編映画祭を背景にしているだけあって、いつも作品の目利きがしっかりしている。

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  • ハーモニー / Harmonies (2015年・フランス)
  • ハロー・アゲイン / Hello, Again (2014年・イギリス)
  • 祖父とのお別れ / Eutre Deuils (2015年・フランス)
  • 最後の望み / Erledigung Einer Sache (2014年・ドイツ)
  • 犬の生活 / A Dog's Life (2014年・ベルギー)
  • サミラ / Samira (2016年・ドイツ)
  • ゾンビと花束 / Over My Dead Body (2015年・アメリカ)
  • おしまい

 

ハーモニー / Harmonies (2015年・フランス)

今日最初に観たのはフランスの『ハーモニー』。オペラ歌手だったローラは舞台上で突然失声し、キャリアを絶たれてしまう。失意の彼女が散歩中に出会ったのが聾唖のコメディアン・ロレンツォ。一期一会だと思っていたのに、彼はローラのアパルトマンにやってきて、手話を教えてくれるのだった……

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作品はオペラの最中に失声するシーンから始まるが、見せ方がとても工夫されていて、映画的に面白かった。ラストシーン、ロレンツォの抱擁は、ローラへの愛情表現と聾唖の彼が音を"聴く"手段というふたつの意味があって愛おしい。オペラ歌手を演じるローズマリー・スタンドリーはプロの歌手であり、劇中登場する "Oh My Love" は作品の前年にドム・ラ・ネナと共作で出したアルバムからの1曲だ。Eurydice Calméjane監督のデビュー作。2015年、20分23秒。配信は今年12月29日まで。

Birds On a Wire

Birds On a Wire

  • 発売日: 2014/03/31
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

——当該曲はアルバムのラストに収録

ハロー・アゲイン / Hello, Again (2014年・イギリス)

次の作品はイギリスから。実写版『アラジン』での好演が記憶に新しいナオミ・スコットが助演している。母親を亡くし、憔悴しきったオーウェンは、父を置いて母の墓前に向かい、隣の墓に手を合わせに来たモーラと出会う。墓の中の父へ話しかけるモーラの言葉を、オーウェンは自分への挨拶だと勘違い。ひょんなことから奇妙な会話が始まる……

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日本人がホーリー・グレイルを知らないと思うなよ - 福田組の『新解釈・三国志』予告編

本当に偶然なのだけど、大泉洋主演、福田雄一監督で12月に公開される『新解釈・三国志('20)の予告編を見た。いわゆる福田組(=福田雄一作品御用達俳優たち)勢揃いで、主演に福田組作品初出演となる大泉洋を迎え、福田雄一の新解釈で『三国志』の世界をコミカルに描く作品だそうだ。ふうん。

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ところがこの予告編の中盤、西田敏行が出て来たところで筆者は椅子から転げ落ちそうになった。彼が演じる現代の歴史学者が、「わたくしの新解釈では、こんな感じだったんじゃねえかな〜」と考えた筋書きを映像化したのがこの作品という枠組みになっているらしい*1おい待てよ。その発言は看過できねえよ!!!!!

 

 

筋書きがあまりに『ホーリー・グレイル』をなぞりすぎている

そもそも『ホーリー・グレイル』とは

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』"Monty Python and the Holy Grail" は、1975年にイギリスで制作・公開された映画で、B級映画の金字塔とも言える作品だ。モンティ・パイソン(以下パイソンズ)というのは当時イギリスで人気絶頂だったコント集団で、イギリス人なら誰でも知っていて、本国だけならず世界中のその後のお笑いに影響を与えたのだった。日本で言えばザ・ドリフターズみたいな立ち位置で、おまけに彼らがめちゃめちゃインテリだったという感じで理解していただきたい。

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実はパイソンズのメンバーは、アメリカ人のテリー・ギリアムを除いて*2、全員がオックスフォードかケンブリッジを卒業したインテリたちである。『ホーリー・グレイル』の製作では、オックスフォードで歴史学を専攻していたテリー・ジョーンズが中心となり、B級映画なのに時代考証が無茶苦茶正確というアホみたいな映画を作り上げた。製作費は常にカツカツだし、スコットランドの城に目を付けていたら当局に撮影許可を取り消されて、ある城の表から裏から中から外から使い回して撮影したという話まである。そんな苦労もどっこい、アーサー王物語をネタにしたこの作品は、製作費を補って余りあるくらいの大ヒットを収めたのだった。

mice-cinemanami.hatenablog.com - テリーJは今年のはじめに亡くなりましたが追悼記事で彼のキャリアを振り返っています

作品の元ネタは『アーサー王物語』

前節でもちらっと触れたが、映画はイギリスが誇る騎士道作品、アーサー王物語を元ネタにしている。アーサー王は侍従のパッツィが鳴らすココナツの殻を馬代わりに(?)、旅の合間に円卓の騎士たちを仲間とし、神の命によって聖杯探しを始める。しかしながらそこはパイソンズ、映画製作の第4の壁は破るわ、アーサー王キャメロットの馬鹿騒ぎ*3に辟易して素通りしていくわ(キャメロットアーサー王の国の都とされているのに)、無駄な殺戮合戦が繰り広げられるわ、と無茶苦茶な筋書きで物語が進んでいく。ほんと時代考証が正しい以外に何の取り柄もねえ*4

 

パイソンズ作品にありがちな通り、この作品にも唐突なインサートが何回も挟まれる。その中のひとつに、歴史学者のくだりというものがある。これまでの物語の歴史的背景について、「著名な歴史学者」が自らの研究成果を元に解説を始めるのだが……ってあれ?*5

www.youtube.com - ※この動画は本編のネタバレです!!!!!

☜このシーン、単なるインサートのように思わせて、後半でめちゃめちゃ効いてくるから笑ってしまう

見てないとは言わせんぞ

でもまあもしかしたら、西田敏行の役柄も、何だか少し似たように思えるだけなのかもしれない。共通点は単に物語の外から研究者として俯瞰的に見ている役柄、というとこだけなのかもしれない。そうだそうだ。きっと奇妙な偶然だ。

 

……と言いたいのだが、残念なことにそうは行かない。実は『ホーリー・グレイル』には後話がある。

 

本家『スパマロット』もすったもんだ

映画版の製作から30年後の2005年、パイソンズのメンバーであるエリック・アイドル*6『スパマロット』"Spamalot" というミュージカル作品をブロードウェイに送り込んだ。この作品は『ホーリー・グレイル』の筋書きをあらすじに、アイドルの独自解釈/演出を盛り込んで膨らませ、2幕もののミュージカルに仕立てたものである。

SPAMALOT (OST)

SPAMALOT (OST)

  • アーティスト:PREZ & IDLE
  • 発売日: 2005/05/24
  • メディア: CD
 

 

ところがこの作品は、アイドルが「自分はパイソンズなんだから翻案も自由だろ」と言わんばかりに、メンバーの許可も取らずに勝手に仕上げたものだった。当然ながら我の強い他のメンバーは大反発し、アイドルは総スカンを食らったまま興行へ乗り込むことになる。結果的に大ヒットしてトニー賞*7まで獲ったからよいようなものの、そうでなかったら焼け野原なんじゃないかというくらいの嫌われっぷりだった*8。中でもジョン・クリーズ*9とは、アイドルが当初の予定を翻して、物語上重要な神の声(アーサー王に聖杯探しを命じる重要な役どころ)をクリーズに当てるはずだったのに、自分でさっさかやってしまったことから、大きな溝が生まれたほどだった。ほんと出てくるものだけ素晴らしいおじいちゃんたち!!!!!

www.dailymail.co.uk

その上、アイドルが無理矢理(?)ミュージカル化したところ、本家映画版のプロデューサーがしゃしゃり出てきて権利を主張する羽目に。残念なことにパイソンズはこの裁判で敗訴してしまい、プロデューサーへの権利料支払を命じられる。2014年の復活ライブはファン待望の再集結だったが、実のところはこの時の負債が元だったとかいう大分生々しい事情もあって、ほんと場外で踏んだり蹴ったりな作品なのであった。

www.bbc.com

 

日本での上演歴もあるのだが

そんな『スパマロット』だが、実は日本でも既に2回の上演歴がある。何なら来年はじめに再々演も決まっている。手掛けたのは、何を隠そう福田雄一だ。もう一回言うけど福田雄一だ。

www.spamalot.jp

先述の通り、このミュージカルはオリジナルの映画版を元にして、アイドルが歌で膨らませた作りになっている。ブロードウェイのミュージカルは現地に行って英語で見なくちゃいけないけれど、既に字幕と吹き替えの付いた映画版があるのだから、製作の過程で見ない訳が無い。そういうことは2012年の日本初演時のインタビューでも垣間見えるし、何ならアイドルが来日した際に、福田雄一がガチガチに緊張していたなんて話まで残っている。見てないどころかファンの態度だ。

omoshii.com

おまけに『スパマロット』にはマルチという役がある。来年の上演ではシソンヌのじろうがやる役どころだ。その解説には次のように書かれている。『スパマロット』には歴史学者が出てくるのだ。余計知らない訳が無い。

マルチ

・役どころ【歴史学者
この物語の案内人として、イングランドの時代背景を解説。
唯一の現代人。
 * * * * *
・役どころ【ハーバート王子】
真実の愛を夢見る沼の城の王子。
自らの父により高い塔に監禁され、意思に反した結婚を余儀なくされている。

——『スパマロット』2021年版キャストページより

 

パイソニアンとして『スパマロット』は見ておきたい作品なのだが、再々演が決まった段階で、大分苦々しいものを感じていた。演者たちのコメントが「福田組作品に参加できて」というものに終始していて、まるで最初から福田組作品だったかのように塗り替えられた印象を受けていたからである(演者のコメントはここで読むことが出来る☞公式サイト)。そこに来てこれだ。いやダメだろう。筆者が穿ち過ぎなのか? いやそんなこともない気がする。

 

結論

誰が何と言おうと、イギリスで有名なアーサー王物語を歴史学者が解釈する、という『ホーリー・グレイル』と、日本でも多くの人が知っている三国志歴史学者が自己解釈する、という枠組みは似通い過ぎている。奇妙な偶然ならばよいのだが、福田雄一は既にその翻案である『スパマロット』を手掛けているのだから、状況は限りなく黒に近いグレーといったところだろう。

 

おい福田組、日本人が『ホーリー・グレイル』を知らないと思うなよ。折角ならば是非是非B級映画の金字塔、本家本元をご覧下さい!!!!!(おしまい)

 

関連:福田組 / 新解釈・三国志 / モンティ・パイソン / ホーリー・グレイル

*1:要するに西田敏行は脚本も書いた福田雄一アルターエゴになっているわけだ

*2:今や名監督(迷監督?)としても名高いテリーGだが、キャリアの始まりはパイソンズなのだ☞

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*3:ちなみにこの時に城の中で踊り狂われているのが、後述する「スパムがいっぱい」の曲、つまり『スパマロット』"Spamalot"である

*4:でもパイソンズ映画の中で1番すきなのはこれです

*5:ところで久々に見てやっと気付いたが、歴史学者の声はエリックか誰かがわざわざ吹き替えているのだなあ……

*6:余談だが、プログラム言語Pythonテキストエディタが「アイドル」Idleという名前なのは、開発者がエリックファンだったからと言われている。エリック好きなんてほんと狂ってるなあ(筆者が1番好きなのもエリック)。

*7:ミュージカル界最高の賞と呼ばれる、アメリカ国内上演の舞台演劇を対象にした名高い賞

*8:そこでいいもの作っちゃうのがパイソンズ、ひいてはエリックなんだよなあ……

*9:パイソンズ最年長メンバーだが、日本ではハリポタのほとんど首無しニックと言った方がよく通じるかもしれない

初ノーラン作品でお送りする、世界一当てにならない『TENET』小話(?)

クリストファー・ノーランの新作『TENET テネット』"TENET" ('20) を観てきた。ノーラン作品は大分気になっていたものの、『ダンケルク』も結局時間が合わずに行けなかったし、『インセプション』『インターステラー』といった過去の代表作も「観なければ……」で止まっているので、結局この作品が初となった。「ノーランは時系列ぐるんぐるんさせるのが大好きな人」くらいの認識で行って、そのままこの記事を書いているので、その程度のお遊び記事だと思って読んでいただきたい。

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この記事で作品の詳しい時系列について語る気は無い。むしろ「そんなとこ誰が見てんねん」という小ネタばかりをつついていくつもりである。しかしながら、内容は物語の筋書きと大きく関わるものになるので、ネタバレがお嫌いな方は足を返されますよう。大体テンションとしてはこんな感じでお送りする予定だ。本当に当てにならない

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!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※この先には『TENET テネット』の筋書きに触れる記載があります※

 

ただただ野暮なので、今更この作品のあらすじに触れることはしない。折角なのでメインキャストひとりひとりにスポットライトを当てて紹介しようと思う。

 

主人公 - ジョン・デイヴィッド・ワシントン

『ブラッククランズマン』でその名を確かなものとし、最早「デンゼル・ワシントンの息子」という肩書きすら不要としたジョン・デイヴィッド・ワシントンが主人公。たったひとつ "TENET" という単語だけを与えられ、自らのミッションの裏に隠されていた秘密を解き明かす「旅」に出る。

ブラック・クランズマン (字幕版)

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  • 発売日: 2019/07/19
  • メディア: Prime Video
 
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あなたのその言葉、気を付けて

あまりこういう記事を書くつもりはないのだが、あまりに立て続けにこういう話が繰り返されてしまったので。自分に力があるわけでもないのに、誰かがどこかで引き戻せなかったのかと考えてしまってならない。勿論、誰もが無力だったからこそ、なのだが、いや、これ以上は止めておこう。

ストロベリーナイト

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

この記事は既に出したツイートの補足記事だ。Twitterだと文字数に制限があるので、もう少しだけ深掘りしておく。

 

 

 

「それほどでも」という人でもこちらを向くのだから

著名人の死というのは影響力が大きい。生前ほとんど興味を持っていなかった人でも、あの人が亡くなったなんて、と反応するものだ。それが突然のものなら尚更で、わたしたちは3月に亡くなった志村けんで既に同じ体験をしている。奇しくも昨日は彼の冠番組だった『天才! 志村どうぶつ園』の最終回が放送されたのだった(番組公式Twitter)。

www.youtube.com - この動画は2021年4月17日まで公開予定だそうです、収益は赤十字に寄付されるとか

ましてやその死に、自らその道を選んだ、という話が付けば、余計センセーショナルになるのは誰でも分かることだと思う。我々は2ヶ月前に同じ悲しみを味わい、9月に入ってからも、同じような悲しみを繰り返し感じてしまった(分からない方はこちらへ)。筆者はどうしてあの時アイネの感想をしっかり残しておかなかったのだろうと後悔している。大切な作品だからこそ、安易な言葉に落とし込まず、大切に言葉を紡ぎたいと思っていたのだが、ああいうことがあった今では、映画を観終わった時と同じようには到底できない。結果としてこの作品は彼のキャリアで最終盤のものとなってしまい、そういったことも悲しみに追い討ちをかける。

アイネクライネナハトムジーク

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  • 発売日: 2020/03/11
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ウェルテル効果は古くから知られている

こういった話が後追いを生むという事実は古くから知られている。古くはゲーテが書いた『若きウェルテルの悩み』が "後追い自殺" を呼び、この現象に「ウェルテル効果」という名前が与えられたほどだった。勿論日本も例外ではなく、歴史上何回も同じような事例が繰り返されてきたが、最も有名なのは岡田有希子の事例であろう。以来著名人の自殺とメディアの報道は深く考えられるようになり、現在では報道のあり方について、国などから指針が提示されている状態である。

 

「自分だけは大丈夫」と思っていても、案外他人事ではないかもしれない。筆者は4年前の1月、アラン・リックマンが急逝した時に胸の中に湧き上がった感情を覚えている。リックマンの死は決して自殺ではなく、人知れず末期の膵臓癌と闘っていた故の急逝だったが、それでも筆者の中には穏やかならざる感情が渦巻いた。どうして彼がこんなにも早く? この世は何て残酷な運命なのか? 勿論自分たちにどうこう出来る話ではないが、そういう考え方をしてしまうのが人間の性なのである。

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わたしたちにできること

反応するまでに、どうか一呼吸置いて

この記事で切に伝えたいのは、こういった報道に触れる際にはくれぐれも細心の注意を払ってほしい、ということである。メディアの報道に関してはある程度の指針が提示されているが(それがしっかりと守られているかどうかはさておき)、個人のSNSでの拡散に関しては抑止力を持たない。あなたは大丈夫と思って、悲しい心の内を赤裸々に綴るかもしれない。その投稿は書き込まれた瞬間にインターネットの世界に飛んでいく。いずれどこかの誰かの目に触れて、その人の中の悲しさを揺さぶり、もしかしたら「"最悪"の連鎖」という結果を巻き起こすかもしれないあなたがそっと飲み込んで心の中で祈るだけで、この連鎖は止めることができる。筆者だって悲しいし、何故だかとても悔しいけれど、その気持ちはぐっと抑えてこの記事を書いているのだ。

 

こういう反応もしてはダメ。著名人のWikipedia記事を更新しては喜ぶ馬鹿をつけあがらせるだけである。マザー・テレサの言う通り、「愛の反対は憎しみではなく無関心」だ。興味を示さない方が相手には効く。

 

あなたが辛い気持ちを抱えているなら

そしてもうひとつ、いまこの記事を読んでいるあなたが途轍もなく辛い気持ちを抱えているのなら、全てをかなぐり捨ててちゃんとした相談窓口に声を掛けてほしい。全国的なもので言えば、こころの健康相談統一ダイヤルというのがあって、どこから電話を掛けても、近くの相談窓口に繋いでくれることになっている。番号は0570-064-556だ。他人に打ち明けることで軽くなる気持ちもある。そうでないのなら、きっちりとした手段を持つ人の元へ紹介してもらえるだろう。

 

悲しみはあるけれど

それぞれの心の中に悲しみはある。しかしながら、これまでに貰った喜びだってある。大きな喜びを貰っていたからこそ、ひしひしと悲しみを感じるのだ。輝かしい過去を思い返し、心の中でそっと祈りを捧げよう。

 

こういう時だからこそ、結びはエリックの名曲にしたい。

Some things in life are bad
They can really make you mad
Other things just make you swear and curse
When you're chewing on life's gristle
Don't grumble, give a whistle
And this'll help things turn out for the best

 

([拙訳]人生ついてないことだってあるさ

そのせいで気狂いだってする 罵りしか出ないことだって

人生の "すじ"*1を噛み当てちまったら 文句言うより口笛鳴らしな

その方が物事いい方に向かうぜ……)

Always Look On The Bright Side Of Life [Explicit]

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  • 発売日: 2014/06/30
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関連:ウェルテル効果 / 著名人の自殺 / 三浦春馬 / 芦名星 / 藤木孝 / 竹内結子

*1:"gristle"という単語は噛み切りにくいあのすじ肉の「すじ」を指す単語。要するに「人生の障壁にぶち当たったら」ということなのだが、chew(噛む)、grumble(不平を言う)、whistle(口笛を吹く)と「口」に関する動作が3連続するので、敢えて意訳せずにそのまま訳してみた

1年ぶりだよ! #Dlifeでシャーロック 『ピンク色の研究』まとめその2

今回はずーーーーーーーっと放置していたあの記事の続きをやっと書きます。ごめんなさい。去年の9月から放置してたよ。気付いたら1年経ってたよ。やばい。本当にごめんなさい。しかも結局『ピンク色の研究』しかやってないし。Dlifeはそもそもチャンネルが消滅してる

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前回の記事では大体半分くらいご紹介した様子なので、残りをえいやっとご紹介したいと思う。……語り過ぎてうっかり第3弾を出さないように注意します。

  • どうあがいても名前を覚えてもらえないレストレード
  • ジョンの人となりを探れ
    • きょうだいはどんな人
    • 華麗なる恋愛遍歴
    • 実は今だとそんなことできない
    • ちょっと先取り
  • 3枚のニコチンパッチは役者への配慮
  • ドイツ語選択のホームジアンなら1度はやるよね
  • 家内制手工業(?)『SHERLOCK
  • Dlifeでの放送までクリフハンガー
  • 原作を読んでほしいという脚本家からのメッセージ
  • もっとSHERLOCKを知りたくなった人向け

 

どうあがいても名前を覚えてもらえないレストレード

なつかしい! なつかしい! 本編も最早なつかしい!

 

筆者の個人的事情はさておき、大人しく紹介していきましょう。レストレードのファーストネーム問題だが、これはホームジアンの中で紛糾しているのを、脚本陣がおちょくった形になっている。彼の名前は何故だか「グレッグ」というのが通説のようになっているが、これは有名ホームジアンがそういう説を唱えているというだけで、物語中に出典があるわけでもない。ツイートした通り、短編『ボール箱』で彼がホームズに宛てた手紙から、イニシャルだけが分かっているが、それ以上の情報はどこにもないのだ。

 

レストレード警部と言えば、ヤードの刑事としては、原作中最多の登場回数を誇る(はずだったと思う)。そのため、映像化作品での登場例も多く、「ホームズものに出てくる刑事ならレストレード!」という人も多いのではないか。しかしながら、初出『緋色の研究』で一緒に登場したグレグスン*1、『四つの署名』に登場したアセルニー・ジョーンズはしっかりファーストネームが明かされているのに、レストレードはわずかにイニシャルが分かっているだけなのだ。

 

実は彼のイニシャルが分かった『ボール箱』という作品は、刊行の上でも面白い逸話を持っている。

*1:因みに彼のファーストネームはトバイアス

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