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#BAFTA 授賞式!、主演女優賞まで - 英国アカデミー賞2019総括その1

アカデミー賞最大の前哨戦、英国アカデミー賞; BAFTAの授賞式が終了した。1月に発表されたゴールデン・グローブ賞は、技術系部門が存在せず、純粋に映画とテレビの作品・出演者だけを賛美する賞。BAFTAはこれに編集や音響など、技術系部門が加わるので、オスカーの技術系部門を予想する上で見逃せない賞でもある。それでは今回の結果をさらってみよう。

結果を紹介する前に…… Congratulations you all!!!!!!!

 

ノミネーション振り返り

mice-cinemanami.hatenablog.com

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部門別

以下のデータは、BAFTA公式発表に邦題を付け加えたものである。ソースはここ。また作品名のリンク先は、基本的に日本語版公式ページに飛ぶようにした。受賞作品は🎭を付けて太字にした。だってほら、BAFTAのトロフィーって仮面でしょ……?

www.bafta.org

 ——BAFTAってどう選考されるの? フローチャート

 

筆者の授賞式前予想はこちらのスレッドに☞

 

作品賞

『ブラッククランズマン』(※公式トレイラー(英語))、『女王陛下のお気に入り』、『グリーンブック』、『アリー/スター誕生』を退けて、ある意味順当に『ROMA/ローマ』が受賞。Netflix配信ということもあり、冷遇を受ける映画賞もあったが、BAFTAでは順当に評価された結果となった。

オスカーは外国語映画賞の最有力候補だが、作品賞も合わせて受賞するかどうかが注目される。Netflix作品が最有力になったことは過去に無く、AMPAS会員がどう反応するか未知数だからだ(個人的には受賞に充分値すると思うが)。ちなみにこれでオスカーの作品賞も獲得すると、外国語映画としては『ライフ・イズ・ビューティフル』なども成し得なかった初の快挙となるはずだ。

 

ちなみに筆者のレビュー記事はこちら。

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キュアロンによる授賞スピーチも。ヤリッツァ・アパリシオはじめ主要キャストも勢揃いだ!

英国映画賞

 

直前にブライアン・シンガーのノミニー権利剥奪が発表された英国映画賞。選考上は『ボヘミアン・ラプソディ』に多少の追い風が吹いたかもしれないが、やはりここは『女王陛下のお気に入り』の方が強かった。個人的にはこの2作のどちらかで、恐らく『女王陛下のお気に入り』だろうなと思っていたので想像通りの結果だったと言えよう。

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ヨルゴス・ランティモスは今作でその手腕が絶賛されながら、『ROMA/ローマ』が席巻する賞レースの割を食ってほとんど作品賞を獲得できずにいた。彼に英国作品賞が渡ったことは、この作品を心待ちにする筆者にとって素直に嬉しい結果である。

 

外国語作品賞

作品賞も制した『ROMA/ローマ』が順当に受賞。これでオスカーの外国語映画賞もほぼ当確となった。日本人としては是枝裕和監督の『万引き家族』も注目していたが、これはまあしょうがない結果だろうとは思う(どこかで是枝監督自身が、有力なのはキュアロン作品だからこっちは気楽なもんだと話していた*1と読んだ気もするが)。先日のノミネート発表後、『COLD WAR』の日本公開が決まったことも嬉しく思う。こちらは6月公開予定だ。

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ドキュメンタリー

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アニメ映画賞

GG賞に引き続き『スパイダーバース』が獲得。これによりオスカーもほぼ当確となった。先日のアニー賞では、同じくアカデミー長編アニメーション部門にノミネートされている細田守監督の『未来のミライ』がインディペンデント作品賞を獲得したことが話題となったが、このアニー賞でも作品賞を押さえており、揺るぎない様子だ。

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監督賞

——Viva México!!!!!! - 🎭アルフォンソ・キュアロン(『ROMA/ローマ』)

 

今年もメキシカン・パワーが強かった。前評判通りアルフォンソ・キュアロンが監督賞を獲得し、2013年の『ゼロ・グラビティ』以来5年ぶりのオスカー監督賞に王手を掛けた(というか多分当確だと思う)。キュアロンがオスカーを獲得すれば、デイミアン・チャゼルが最年少で獲得した2017年・第89回を挟み、2013年・第86回以来6年で5回のメキシコ人監督の受賞となる。

今年は決して不作だったわけではない。キュアロンが押さえ込んだのは、スパイク・リー(『ブラッククランズマン』)、ブラッドリー・クーパー(『アリー/スター誕生』、主演男優賞とダブルノミニー)、ヨルゴス・ランティモス(『女王陛下のお気に入り』、作品は最多ノミネート)、そしてポーランドからノミネートされたパヴェウ・パヴリコフスキ(『COLD WAR あの歌、2つの心』、同じく外国語映画賞ノミニー)といった強豪たち。全員が映画賞で高く評価されており、その中で外国語映画ながら監督賞をもぎ取ったことは、彼の手腕を示すものだと思う。

 

 

脚本賞(オリジナル脚本)

 

🎭『女王陛下のお気に入り

オスカーに向けて注目していたオリジナル脚本部門は、GG賞を受賞した『グリーンブック』を押さえて最多ノミネート作品『女王陛下のお気に入り』が獲得。BAFTAでは『ROMA/ローマ』、『COLD WAR あの歌、2つの心』と共に三つ巴の戦いを繰り広げていたが(共に脚本賞ノミニー)、イギリスという地の利を活かして獲得した形だ。

オスカーでは『COLD WAR あの歌、2つの心』の代わりにイーサン・ホークが主演した『魂のゆくえ』First Reformedがランクインしている。もう1つチェイニーの暗躍を題材とした『バイス』もランクインしており、目が離せない。

 

因みにこれでオスカー当確を出さないのはこういう事情があり。

 

折角ネトフリ入ったんだから『ロブスター』観ようっと……

ロブスター(字幕版)

ロブスター(字幕版)

 

 

脚色賞(非オリジナル脚本の翻案)

🎭『ブラッククランズマン』

事前にひとつくらい賞を取ってくれと願っていた『ブラッククランズマン』が受賞。主演男優賞(ジョン・デイヴィッド・ワシントン)、助演男優賞(アダム・ドライヴァー)、監督賞(スパイク・リー)など主要部門に満遍なくノミニーを輩出していたものの、どの部門も強敵ばかりで受賞にまでは至っていなかったので、嬉しい結果だと思う。

一方で、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンスが送る新作、『ビール・ストリートの恋人たち』は有望株と言われつつ受賞には至らなかった。この作品は、レジーナ・キング助演女優賞レースのトップを走っておりながら、SAG賞、BAFTAともにノミネート落ちという波乱もあった。オスカーでは以上2作が有力候補となるはずだが、果たしてどうなるかどっきどきである。(個人的にはバリー・ジェンキンスを応援したい……!)

 

なお、その他のノミニーは「キャン・ユー・エヴァー・フォーギヴ・ミー?(原題)」CAN YOU EVER FORGIVE ME?(※公式トレイラー(英語))、『ファースト・マン』、『アリー/スター誕生』の3作。オスカーでは『ファースト・マン』がOUTで代わりにコーエン兄弟の『バスターのバラード』がINだ。

  

主演女優賞

——授賞式前ツイート

 

🎭オリヴィア・コールマン、『女王陛下のお気に入り

特大の "Congratulation!"を付けたい。BAFTAだから分かってた気もするがとっても嬉しい。おめでとうオリヴィア・コールマン!!!!!

via GIPHY - これはGG賞授賞式、「撮影中ずっと食べっぱなしなの、ほんとに素晴らしいでしょ!」可愛い〜

 

グレン・クローズが獲得すればオスカー当確だったのだが、そこは島国根性イギリスさまなので、想像通り(?)オリヴィア・コールマンが受賞。制作の噂が出てポスターが発表された頃からずっと応援してきた作品なので素直に嬉しい結果だ。オスカーは流石にグレン・クローズやガガの方が有利だとは思うが、彼女があのトロフィーを受け取ったということはとても嬉しく思う。今週末の公開が待ちきれない!

www.independent.co.uk - ところでコールマン、イギリスが誇る大学コメディ集団フットライツ*2の出身らしいのだが、オーディションを受けに行った時は名前も中身も知らなくて、普通の劇団だと勘違いしていたとのこと(笑)というかコールマンってケンブリッジだったんだね……?(無知)

 ——プレゼンターは昨年『ウィンストン・チャーチル』"Darkest Hour"で主演男優賞を獲得したゲイリー・オールドマン!

 ——レイチェル・ワイズエマ・ストーンへの讃辞が含まれた後半部分はこちら!

 

個人的にはメモを見ながら"Shaky..."「震えてるわこりゃあ」と呟いたり、「しこたま呑んじゃうなあ」と正直に語るコールマンが可愛くてならなかった。トリプル主演とも言われたこの作品に相応しいスピーチであり、コールマンの口からそういう言葉が聞けてとても嬉しく思う。「私の名前が書いてあるけど、削って別の名前[=3人の連名]にしてもいいもんね!」という彼女の言葉に嘘は無いと思う。

 

そういうわけで……

 ——「オリヴィア・コールマンを好きにならずにはいられない」そうよね、だってわたし泣きそうだもの😭😭😭😭😭

 

対抗馬は『天才作家の妻 40年目の真実』で悲願のオスカーが近付いているグレン・クローズ、『アリー/スター誕生』のレディー・ガガ(残念ながら授賞式はグラミー賞で欠席だったようだ)、"Can You Ever Forgive Me?"のメリッサ・マッカーシー、そして『妻たちの落とし前』(※THE RIVER)のヴァイオラ・デイヴィス。オスカーではグレン・クローズが強いと思うけど(7度目の正直を達成してほしい気持ちもある)、やっぱり英国オタクとしてはコールマンを最後まで応援したく思うのだ。

 

 

 

続きは後編にて

それではみんながお楽しみ主演男優賞からは後編にて!

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関連:映画賞 / BAFTA / 英国アカデミー賞

*1:190214別ソース追記。どうやらあちこちで同じ話をしているようだ(笑)。

*2:フットライツと言えばパイソンズのケンブリッジ組3人(ジョン・クリーズグレアム・チャップマンエリック・アイドル)、ヒュー・ローリーとスティーヴン・フライの同期組、エマ・トンプソンなどを輩出した名門劇団。その中身は喜劇である

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