『ブリジット・ジョーンズの日記』第4弾制作決定 - 気になるおヒューとコリン・ファースの行方
1週間くらい前だが、『ブリジット・ジョーンズの日記』第4弾映画の製作が決定したと噂になった。主演のレネー・ゼルウィガーに加え、第3作に登場した産科医のエマ・トンプソン、そして第2作まで登場したヒュー・グラントの再登場が報じられている。なお、ブリジットにとってのダーシーさまことコリン・ファースのキャスティングは発表されておらず、ちょっとどきどきな結果だ。
variety.com - THE RIVERが引用している典拠記事
当日にも匂わせで呟いたが、原作にわりかし忠実だった前2作とは違い、映画化第3作ではほぼオリジナルストーリーと言ってもよいような独自脚本が採られた。このため、映画第4作では、原作回帰するのか、はたまた再び独自路線に走るのかという点も含めて目が離せない。また、気になるおヒューとコリン・ファースの行方も深掘りしたいところだ。
コリン・ファースの役は原作第3作だと……であり、寧ろ第3作を嫌がったはずのおヒューが復帰するのもおひょひょと思うし、とするとどこを映像化するのか? 問題もあり。キャスト的には原作第3作の内容? #ブリジット・ジョーンズの日記 https://t.co/AcGou6SG9d
— ふぁじっこあなみ (@mice_fuz_anami) 2024年4月10日
!!! この記事には『ブリジット・ジョーンズの日記』原作・映画版のネタバレを含みます !!!
そもそもの前提
大河ドラマ『光る君へ』で源氏物語をはじめとした平安文学への本歌取りが話題になっているところだが、実は『ブリジット・ジョーンズの日記』もそういった構造になっている。主人公のブリジット・ジョーンズは、1995年にアラサーに差し掛かった冴えない行き遅れ。通りから人が消えたことで有名なBBC版『高慢と偏見』に胸を躍らせるが、自分にとってのダーシーさまが近くにいることには気付かない。1997年のダイアナ妃事故死に大きく心をかき乱され、ふとするとプチ事件が起こる自らの人生に叫喚しながら生きていくのだった。
ちらっと書いた通り、この作品は原作者のヘレン・フィールディングが、1995年に放送されたBBC版『高慢と偏見』の大ファンで、そこから着想を得て執筆されたものである。この作品で国内知名度を一気に上げたのが我らがコリン・ファース。一躍セックスシンボルとなり、本当に通りから人を消し、作品も今までで最高の映像化と呼ばれるようになった。ブリジットとぶつかりながらも惹かれ合っていくマーク・ダーシーの名前は、勿論『高慢と偏見』のダーシーから採られており、フィールディングも(さながらブリジットばりに)ファースを想定して書いたキャラクターであった。それ故彼のキャスティングも、原作者の望み通りだったのである。
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実際、物語の流れも『高慢と偏見』の筋書を基にしている。ブリジットにきょうだいはいないが、30代を過ぎて仕事も恋愛もあまり上手く行かず、オールドミス一歩手前の人生を密かに嘆いている。『高慢と偏見』のエリザベスは、父親が娘たちの結婚や財産の行方に無頓着なので、結婚先も決まらずに放置されている状況だ。
何より『高慢と偏見』らしいのは、主人公の女性とダーシーの出会いが最悪ということである。『高慢と偏見』では、ダーシーがずけずけ言うエリザベスへの文句が本人に立ち聞かれて第一印象は最悪。『ブリジット・ジョーンズの日記』でもブリジットとマークの初対面は最悪で、お互い恋人になる未来など1mmも見えない。映画版では更にアグリーセーターまで着ていて本当に最悪だ。
原作を下敷きにした2作目まで、大きく外れて現代的な内容にした第3作
ファースを起用したキャスティングに原作者の意向が反映されていたように、続けて制作された第1作・第2作は原作小説の影響が色濃く、原作の重要なエピソードをしっかり押さえて制作されていた。ブリジット役にはイギリス人ではなくアメリカ人のレネー・ゼルウィガーが起用されたが(レネーの起用に関しては一悶着あるものの)*1、蓋を開けてみればゼルウィガーはイギリス人よりもイギリス人らしいと言われ、アカデミー賞主演女優賞ノミネートなど賞レースで大健闘した。
続く☞☞☞
原作においてブリジットを前半めろめろにする残念イケメンことダニエル・クリーヴァー役には、ロマコメの帝王との名を欲しいままにしていたヒュー・グラントが選ばれた。映画版の脚本を執筆したリチャード・カーティスは『フォー・ウェディング』や『ノッティングヒルの恋人』などグラントの主演ロマコメをいくつも手掛けていたので然もありなんの展開だ。マーク・ダーシー役のコリン・ファースとは、誕生日がわずか1日違いの同い年ということもあり、様々茶化しつつも俳優としてはよきライバル関係で、その点もダニエルとマークの関係にそっくりだった。
第3作は、映画も原作も衝撃の展開
メインキャストそれぞれにとって飛躍の一作となった連作から12年、2016年に映画第3作『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』"Bridget Jones's Baby" が公開されることになった。マークといい感じになると思っていたのに破局し、アラフォー未婚のシングルトン生活を満喫していたブリジットが、ふとしたことから妊娠する。ところがお腹の子の父親はかつての恋人マークなのか、はたまた浮名を流してきたジャック(演:パトリック・デンプシー)なのか、分からないのだった……という筋書。この作品からはイギリスが誇る才女エマ・トンプソンが俳優・脚本の両方で参加している。
まあまあ衝撃的な展開の映画第3作だが、実は2013年に出版された原作第3作はもっと衝撃的な内容で、尚且つ映画版の後に時系列が来る。結局ブリジットのこどもはマークとの間の子で、ふたりはめでたく(?)結ばれるのだが、原作第3作では、そのマークが事故死していたことがあっさり明かされるのである。
映画第3作にはおヒューさま演じるダニエル・クリーヴァーは登場しない。原作第3作にはしっかり登場していることを考えると、気難しいグラントが様々な理由を付けて出演を拒否したのだろう*2。その代わりに、ブリジットとマークが結ばれる筋書を書くためコリン・ファースが出演したのではないかと思う。実際脚本には原作者のヘレン・フィールディングも噛んでいることであるし。
とすると、映画第4作の筋書は?
そういうことを考えると、原作第2作と第3作の筋書の隙間は映画版でしっかり埋められたので、ここで満を持して原作第3作の内容を映像化してくる可能性がある。おヒュー様のキャスティング情報があって、コリン・ファースの名前が聞こえてこないのは、もしかしたらそういうことなのかもしれないと思う。シングルトンからシングルマザーに成長したブリジットを銀幕で観ることになるのか乞うご期待だ*3。
過去作はこちらから。
原作は現在角川文庫で全冊発売中。
関連:ブリジット・ジョーンズの日記 / レネー・ゼルウィガー / ヒュー・グラント / コリン・ファース
*1:BJの第1作・第2作は当時のミラマックスが制作に関与しているが、ミラマックスと言えば、かの有名なハーヴィー・ワインスティーンが率いていた制作会社である。アカデミー賞生産装置と呼ばれるほど賞レースでは常勝チームだったが、一方で女優たちへ自らへの枕営業を強いたとも言われ、#MeToo運動が始まるきっかけにもなった。ゼルウィガー本人はワインスティーンに関して口を噤んでいるものの、前後して『シカゴ』の主演を務めるなど、彼と制作上の蜜月を築いていたことは間違いない。おまけに両作品でオスカーにも絡んでいる。ザ・イギリス人女性のブリジットへゼルウィガーがキャスティングされたことへ、憶測が沢山飛ぶのはしょうがないと思う☞
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*2:まあその昔『ラブ・アクチュアリー』のダンスシーン(ラジオ放送に合わせてダウニング街10番地で踊り狂うシーン)の撮影が嫌で最終日までごねたとか、昔から嫌なものは嫌だ〜!というタイプなのだが、そんなことしているうちに、あまり仕事を断らないコリン・ファースとキャリアが逆転していたとかそういう話もあったり?
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*3:新キャラであるエマ・トンプソンが出演維持するのは、脚本に関与するからだけでなく、シングルマザーになったブリジットを支える役だったりするのかなあという邪推もできるが……