ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

初潮が来てもバービーちゃんねるのこの動画観れば大丈夫

是非シェアさせてください。

 

最近フォーリンラブのバービーちゃんがYouTuberとして活動しています。あばた面だったのをどうやって治したかとか結構赤裸々な動画を作ってるのですが(チャンネルはこちら)、自分の美をとことん追求しているのを包み隠さず喋っていて面白いです。そんな彼女が先日公開したのがこちらの動画です。

www.youtube.com

いやこれいいなあ……ほんといいなあ……

 

だってこういうのきちんと教えてくれる人、普通は誰もいないんですよ。女子だったらいずれ月経が来るのは当たり前なのに、どうやって付けたらいいかとか、何を選べばいいかとか、教えてくれる人はいないわけです。なんかよくわかんないうちに初潮が来て、近くに母親とか姉がいれば教えてくれるかもしれないけど、そうもいかない子だって多いわけで。彼女だって動画の中で1ヶ月隠したって言ってましたもんね。そんなもんです。

今どきだとよく小学校高学年の集団旅行の前に、女子だけ集められて生理用品会社からサンプルとパンフレット貰ったりするけど、その前に初潮が来る子だっているだろうし。保健の時間だと言っても、そういうところは何か包み隠して終わっちゃうもんね。そんな中で彼女が実際こうやるんだよと実物を見せつつ動画を作ってくれたのは凄く良いなあと思いました。

 

これもこないだ読んで面白かった。料理が好きなのは自分のためであって、男を落とすためじゃないわい! という檄文。

gendai.ismedia.jp

実は筆者もちょっと関係あるような記事を書いてるので良かったら読んで下さい。

mice-cinemanami.hatenablog.com

関連:生理 / 初潮 / 月経 / 生理用ナプキン / タンポン

好きも突き詰めれば解剖に行き着く……? - 『キリン解剖記』書評

ある日何となくTwitterを眺めていたら、こんなツイートを見かけた。

 ——解剖? それもキリンの? しかも新しい構造を見つけたってどういうこと?

そうやって思ったら数分後にはこの本を予約発注してほくほくな気分になっていた。今日ご紹介するのは郡司芽久さんの『キリン解剖記』である。

キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)

キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)

 

 

 

好きも突き詰めれば解剖に行き着くらしい

現在国立科学博物館*1で研究員として働く郡司さんだが、キリンの解剖を始めたのは東京大学在学中のことである。出来るなら大好きなものを仕事にしたいと思った彼女は、そう言えば昔はキリンが大好きだったな、と気付き、キリン研究を主軸に据えることにする。そこで出会ったのが恩師・遠藤秀紀教授であり、彼との出会いをきっかけに、テーマはキリンの解剖へと移っていく。

 

遠藤教授の書いた本。『キリン解剖記』があまりに面白くて、完全にノリで買ってしまった(笑)。

東大夢教授

東大夢教授

 

 

献体を無駄にした不甲斐なさは次へのエネルギーに

とは言うものの、解剖男を自称する遠藤教授の研究室にいても、キリンを解剖する機会は非常に限られていた。それも何も、動物園で亡くなったキリンの献体に依拠していたためである。思うように解剖する遺体は手に入らないし、そうかと思えば盆も正月も関係無く解剖の日程が入るし、やっと手に入れたと思っても参考に出来る成書などほとんど無くて手探りの解剖になってしまう。1体1体が大変貴重なことは分かっていても、理想と現実はかけ離れている。

 

第3章では、対になって解剖した2例が象徴的に取り上げられている。1つ目は初めての「解剖」になったニーナ。2つ目は、後追いするように亡くなったパートナーキリンのシロ。ニーナの解剖では、勢い余って腱まで外してしまったり、自信を持って同定できた筋肉が皆無だったりという有様だった。70頁でこの時の感情を振り返った言葉には、なまじこの感情が分かるがゆえの苦しさを感じた。人体解剖でも全く同じことを感じる。献体を無駄にしてはならないと思いつつも、自分の至らなさ、根気の続かなさを痛感させられる作業なのである。それでも人体の系統解剖なら周りに沢山同級生もいるし、別の班へ観に行くこともできるけれど、キリンは基本的に目の前のひとつしかない。

 「無力感」。その一言に尽きる。キリンの遺体に、解剖という名の破壊行為をし、何の新知見にもたどり着けなかった。知識の向上にも至れなかった。命を弄んでしまったかのような後味の悪さと罪悪感が、胸に重くのしかかってきたのを、今でもよく覚えている。

 装置を通して得られた数字やアルファベットの羅列データではなく、生身の体を扱うことが、解剖の魅力でもあり、恐ろしさでもある。

——『キリン解剖記』70頁

 

リベンジのチャンスは意外に早く訪れた。後追いするように亡くなったシロも解剖できることになったのである。この時彼女は気持ちを入れ替え、ただ名前を追うのではなく、筋肉がどことどこに付着しているかをよく観察するように方針転換した。分からないなりにベストを尽くすことで、解剖数が少ないというハンディを乗り越えることにしたのである。……3ヶ月の系統解剖でんひーんひー言っていた昔の自分に読んで聞かせたい。

 

首の骨の解剖をするには解体が邪魔をした

この本でも大きく取り上げられている「8番目の"首の骨"」の発見。詳しい話は著作の中でも丁寧に扱われているし、何より先日ろんぶ〜んで取り上げられていたので敢えてさくさくめでお送りしたい。

www4.nhk.or.jp

哺乳類の首の骨、いわゆる頸椎は7個というのが一般常識である。しかしながらキリンはヒトやその他の哺乳類では考えにくいほどしなやかな首の動きを持つ。その動きを生み出す構造について知りたいというのはキリン解剖学者なら誰でも抱く疑問だろう。わたしもキリン解剖学者だったらそう思うに違いない。

ところがこの謎の解明には大きな障壁があった。キリンは背の高い動物なので、そのまま解剖室に運び込むことが難しい。何パーツかに解体されて搬入され、それから解剖作業が始まるのが常だった。そしてこの解体時に、最も解剖したい首の付け根の部分は解体線として利用されてしまうのだった。

 

この問題に、解体線をずらした遺体を準備することと、扱いやすい子供の遺体をCTスキャンすることで挑む。「8番目の"首の骨"」とは果たして何なのか? 本書いちばんの読みどころなので、敢えて結末はお知らせせずにおく。

 

解剖学という学問だからこそ

「8番目の"首の骨"」問題のミソとなった論文は1999年のものだという。112頁からのコラムでも、リチャード・オーウェン1839年に発表した論文を読みながら、その内容に深く共感したことを記している。こういうのは研究対象も使う道具もそうそう変わらない解剖学だからこそできることかもしれない。こういう古い論文を読んでときめく作業には憧れてしまう*2

 

本書の冒頭、18頁あたりからは、解剖の流れをざっくり紹介する中で、用具がさらりと紹介されている。丁寧な挿絵まで付けられていたが、使っている道具がヒトの解剖とそう変わりないので笑ってしまった。とげ抜きピンセット、先端を上手く使うとものも切れるので重宝だよねえ。解剖の経験があるとこういう細かいところまで手に取るように分かって楽しいかもしれない。勿論そんな経験がなくても物凄く面白い本である。むしろ「解剖始めちゃうかな〜」と思うくらい。全然過言じゃない。

 

百聞は一見にしかず……!

というわけで百聞は一見にしかず、是非『キリン解剖記』をお読みください! 解剖学だけでなく、化学的思考の面白さも伝わってくる良書です。ついでに師匠である遠藤教授の本もご紹介。

キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)

キリン解剖記 (ナツメ社サイエンス)

 
東大夢教授

東大夢教授

 

 

うっかり人体解剖が気になってしまった方には、スケッチが大変美しいFeneisの解剖学事典をオススメしたい。人体の構造ひとつひとつにちゃんと名前があるんだなあと思って惚れ惚れする。

図解 解剖学事典 第3版

図解 解剖学事典 第3版

 

 

著者である郡司さんに迫ったインタビューも秋に公開されているので合わせてどうぞ。

 

ちなみに普段でもこんな面白いTwitterをされている方なので、是非是非フォローしてみてください。

2月20日までご本人が出演されたテレ東の「探求の階段」がアーカイブ視聴できます!

video.tv-tokyo.co.jp

【投稿後追記】200621

ニュースイッチで郡司さんの楽しいインタビューが出ていた。飾らなくて明るい人柄が伺える素敵なインタビューなので是非お読みくださいませ……!

newswitch.jp

関連:キリン解剖記 / 郡司芽久 / 国立科学博物館 / キリン

*1:何を隠そう、日本で1番好きな博物館です……!

*2:医学の場合、日進月歩過ぎて、数年前の論文ですら内容が古いことはままなので

刑のあり方さえ考えさせる現場ルポ - 宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』

宮口幸治氏が新潮新書から出した『ケーキの切れない非行少年たち』を読んだ。発達障害という言葉が単なる精神科的トピックスに留まらず、メディアや一般人の間で人口に膾炙するものとなって久しい。この本はそんな問題に対して、いわゆる少年院で「非行少年たち」と接してきた筆者が独自の視点で切り込むものである。

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

  • 作者:宮口 幸治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: 新書
 

 

  • 認知行動療法が通用しない非行少年たち
  • "理解"が出来なければ、乗れない船は沢山ある
  • 画一的教育からこぼれ落ちる者
    • 数字で切ってしまったがゆえの悲劇
    • 発達の歪みが生む問題
  • この本は刑のあり方さえ考えさせる
  • おしまい

 

認知行動療法が通用しない非行少年たち

筆者が少年院に送られる「非行少年たち」の治療に専念するようになったのは、認知行動療法が通用しないある少年との出会いだった。認知行動療法; CBTというのは精神科的治療法のひとつで、心理療法の中ではある種パラダイムシフトと言ってもよいかもしれない。誤った思考回路に陥っている患者自身を、一定時間のセッションを何回も繰り返す方式で救い出し、新たな考え方を与えて、問題行動に至らないようにしよう、というものである。筆者は性的問題行動を抱える少年にCBTを試した*1が、どんなにセッションを重ねても彼の問題行動は治らなかった。

 

その後、筆者はこういった少年たちの治療に関するヒントを求めて医療少年院への入職を決意する。そこで筆者が出会ったのが、タイトルにもなっている『ケーキの切れない非行少年たち』である。彼らが"切った"ケーキの図は、Amazonリンクで見える本書の帯でご覧いただきたい。この結果に驚いた筆者は、少年たちにRey-Osterrieth複雑図形検査と呼ばれる図形写し問題をさせることにした。その結果がこちらの図だ。

https://president.jp/mwimgs/1/3/-/img_13eecb1f58cd1004889f7b95dcda4f88204411.jpg

*1:「試した」というのは勿論言葉のあやで、こういった少年に行う治療としてはCBTは恐らく第1選択である

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感染症対策に個人の人権はありません

結構ショッキングなタイトルを付けたけれど、意外にこのことを認識していない人が多いように思うので、敢えてセンセーショナルな題名を付ける。

 

武漢で見つかったコロナウイルスによる肺炎の話で世間は持ちきりだ。やっと「COVID-19」という名称がWHOから付けられたが、それでも日本語には落とし込みにくい名前だなあと思う。昔と違ってウイルスには地名を付けないようにしよう、とは言われているが、そうやって悩んだ名前ゆえに仮の名前っぽいし、逆にノロウイルスとかサポウイルスが不憫になってしまう*1

wired.jp

こんな大騒ぎになっているのは、勿論日本で患者が出たから、そのひと言である。SARSもMERSも基本的には対岸の記事だったけれど(細かいことを言うとSARSの時は陽性者が入国していて、接触者調査も入念に行われているが)、今回はクルーズ船での集団感染、武漢からの観光客をキィとした感染連鎖などが起こっていて、とても他人事と言うことはできない。中でもクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の一件は本当に毎日報道されている。早く下ろせと言う人も、下ろさずに船内で隔離せよと言う人もいて、正直どうすればみんなが納得するのか分からないくらいだ。結局日本政府は船内に旅客を留め置くことを選んだわけであるが、それに対して人権侵害だと言う声もある。

toyokeizai.net - 書いているのはナビタスクリニックの久住英二医師

news.tv-asahi.co.jp

気持ちはよく分かる

筆者もソシオパスではないので、気持ちはよく分かる。家に帰ることもままならぬまま、船室やホテルの部屋に押し込められていれば当然辛い。暇つぶしに何かを頼むことも自由にはできないだろうし、鬱屈とした気持ちで過ごすことになるのだろうとは思う。ましてや自分が感染しているかどうか分からない状況では……と考えてしまう。

 

しかしながら、普通に家に帰って、そのままいればいいかといってもそうでもない。帰宅するまでの道をどうしたらよいだろう。仕事や学校は当然休むことになるのだろうが、食事ははてどうしようという問題がある。宅配を使えばいいだろうという声もあるかもしれないが、接触感染で二次感染を起こさないとも限らない。もし同居の家族がいたとすれば、厳重な装備をして一緒に暮らすのか、家庭内で隔離部屋に籠もるのか、どちらかを選ぶことになるのかもしれない。

 

*1:ノロは最初に見つかったアメリカの地名「Norwalk」(ノーウォーク)からだし、サポは札幌で見つかったことが語源

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暇を持て余した神々の遊び(?) - オスカー授賞式のちょっとした舞台裏

近年のオスカー当日と言えば、映画批評サイト、エンタメ雑誌、そしてノミニーとなった作品の広報関係者たちがTwitterでリアルタイム投稿することでも有名である。ご多分に漏れなかったのが日本でも絶賛公開中の『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』"Knives Out"('19)の英語公式アカウントだ。

このツイートを見て辿ってみたらまー遊んでること遊んでること。自ら劇中シーンを引っ張り出してきてインターネットミームを作っては遊んでいる。ついでなのでこの面白ツイートを掘り起こしてみたい。

www.youtube.com - 本家「暇を持て余した神々の遊び

  • レッドカーペットに到着
  • 普通のツイートも最早束の間
  • 大量に投下されるインターネットミーム
  • 何度でも弄られる猫映画
  • ミーム化するポン・ジュノミーム化を進める『ナイヴズ・アウト』組
  • #アナ・デ・アルマスは評価されるべき
  • クソコラonクソコラ
  • 「楽しみきりました!」何でだよ
  • まさかの返信
  • ついでなので
  • おしまい

 

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#Oscars2020 - ノミネート振り返り記事その4【短編作品・アニメーション】

オスカー授賞式直前企画。全4記事でノミニーを振り返る企画の第3弾である。前の記事はこちらから。ノミネートの出典はVarietyさんです。

mice-cinemanami.hatenablog.com

  1. その1【演技部門主要4賞】
  2. その2【作品・監督・音楽・脚本】
  3. その3【技術系部門】
  4. その4【短編作品・アニメーション】☜イマココ

記事自体の目次

  • 前哨戦結果など
  • 長編アニメ部門
  • 短編アニメーション部門
  • 長編ドキュメンタリー
  • 短編ドキュメンタリー
  • 短編映画賞 (実写)
  • おっしまい!

 

前哨戦結果など

 

長編アニメ部門

筆者予想:『クロース』/ 受賞作品:トイ・ストーリー4』

BAFTAでNetflix対決を制した『クロース』が有利なのかと思いきや、伏兵的にピクサーが送るシリーズ第4作『トイ・ストーリー4』がかっさらっていった。アニメ界の最高賞アニー賞では『クロース』が大躍進し、『失くした体』もこれを追っていただけに予想外の結果である。

natalie.muそう言えば助演男優賞にノミネートされてたトム・ハンクスも会場に姿を見せていたが、彼が第1作から一貫してウッディの声を吹き替えてるの、ほんと凄いことだよな……なんせ今やハリウッドいちの名優だもんな……

 

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#Oscars2020 - ノミネート振り返り記事その3【技術系部門】

オスカー授賞式直前企画。全4記事でノミニーを振り返る企画の第3弾である。前の記事はこちらから。ノミネートの出典はVarietyさんです。

mice-cinemanami.hatenablog.com

  1. その1【演技部門主要4賞】
  2. その2【作品・監督・音楽・脚本】
  3. その3【技術系部門】☜イマココ
  4. その4【短編作品・アニメーション】

記事自体の目次

  • 前哨戦結果など
  • 編集賞
  • 撮影賞
  • 音響編集賞
  • 録音賞
  • 美術賞
  • メイクアップ・ヘア賞
  • 衣装賞
  • 視覚効果賞
  • 続くよ〜

 

前哨戦結果など

編集賞

筆者の予想:予想不可能

 

これは本当に予想できない。編集系の各部門は各映画賞によって受賞者が全く異なっていて予想不可能である。誰が獲ってもおかしくない布陣だ。

 

結果は……『フォードvsフェラーリ

大混戦だった編集部門を制したのは『フォードvsフェラーリ』だった。今年の編集賞賞によって受賞者が全く異なる大混戦ぶり。蓋を開けてみればBAFTAとオスカーを獲得したこの映画が最も強かったということになるのだろうが、編集者組合での賞とは全く結果も違うし、単純にそうは言い切れない気がする。

www.youtube.com

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