ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

洋画の邦題問題はどこに帰着すればいいのか

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洋画沼を中心に絶対炎上しそうな記事を見つけてしまった。というかTLに怒りを伴って流れてきた。

www.sbbit.jp

筆者は英国沼を攻めていったらいわゆる「単館系のマイナー作品の洋画」ばっかり見続ける有様となってしまった人間なので、ちょっと胸が痛い話である。『女王陛下のお気に入り』に歓喜したばかりなので尚更なのだが、今回はちょっとここを掘り進めてみたいと思う。

 

 

 

どうせ炎上目当ての記事だろうけど

もう炎上させることを目的として書いてる気がするので反応するのも癪なのだが、この中で映画プロデューサーだというA氏は次のように語っている。

「映画ファンがTwitterなどで邦題に文句をつけているのは私もよく見かけますが、洋画の原題まで気にしている人なんて、おそらく数千人程度です」

かくいう筆者もそういう「原題まで気にするクチ」で、こんな田舎町にひとりいるんだから数千人ってこたないだろう……とか思うがその辺はさておいて。いや、広報する側がこんなに諦めきってたらダメじゃん? 映画ファンも舐められきったものである。

 

当然ながらぼんやり眺めていたTwitterのTLにも沢山お怒りの声が流れていた。

 

マーケティング上の目標は間違ってない、だけど……

——それはそうだけど

配給会社として、放っておいても映画館に来るようなコアなシネフィルより、「何か面白そうな作品らしいから観に行こう?」という感じの、ライトな浮動層を獲得したいというのは正解だ。そりゃ何のマーケティングだって当たり前のことだし、浮動層をどれだけ取り込めるかが興収の伸びを決める。

blog.marketing.itmedia.co.jp

でもこの記事の舐め腐った考え方は絶対アウトだ。根性論は嫌いだが、伝える側が作品にどれだけの思いを持っているかというのは薄々伝わってくるもの。ものへの愛があればフォロワーは増えるし、逆に舐め腐った態度で作品を粗末に扱っていたら、付いてくるものも付いてこない。そしてその作品の"真価"を知るもの、つまりシネフィルのみが悲しい思いをするのである。

これを筆者は勝手に「庭理論」と考えている。周りをぐるりと塀に囲まれた古い屋敷だが、門から垣間見える玄関までの小路は、やる気の無い執事と庭師のせいで荒れ放題だ。実はこの家には素晴らしい盆栽があるのだが、執事と庭師が手入れをさぼっているせいで真価が損なわれている。当然ながら入口が汚らしいので一般客は寄りつかないし、そういった惨状を、盆栽に詳しい玄人は嘆いている……というわけ。

 

庭理論に大成功しているのが、我らが杜の都のオーケストラ、仙フィルさんである。1月19日現在でツイート31K越え、フォロワー13,000人越えを誇るこのアカウントだが、この成功のきっかけにはオーケストラという「もの」を愛した姿勢が大きいと思う。気軽に足を運んでもらうため、「オーケストラでそこまでやっていいの?(笑)」といったような広報を展開しているが、それでもオケに対する愛が伝わってくるので丸く収まってしまうのである*1

 

 「庭理論」でわたしが説明したのと同じようなことを別の方も指摘していた。そう、「映画ファン」は「ダサい邦題」「タレントPR」に怒っているわけではない。それが成功する例だって絶対あると思う。どっちかというと舐め腐った態度の方に憤っている。

 

作品への愛は無くてもいい、最低限敬意を持ってほしい

ロードショー映画は確かに1,800円で手に入る手軽な娯楽だけれど、元を正せば芸術作品のひとつである。高尚な芸術は時に一般人に理解の出来ないもので、だからこそそれを適切に紹介する人が必要だ。その役目は配給会社、宣伝会社ではないのだろうか? そして、人間、誠意の無さを薄々感じ取ることは前の節にも書いた通りである。

 

——大好きなブログ "CARL THE POLICE!!"のCarlさん

そして忘れてならないのは、彼らが扱っているのは、飽くまで「他人の作品」であるということだ。自分の作品なのだとしたら、「どうせお前らには理解出来ないだろうけどなw」みたいな態度だって自由だ。でも、人の作品を預かって宣伝している以上、真摯な姿勢で取り組むのは当然のことだと思う。

最近の映画では、エンドロールに「この作品は◯◯人のスタッフが結集し、◯◯時間の労力をかけて制作されました」と表示されるものが増えてきた。勿論海賊版防止の抑止力として表示されているのだが、映画はそれだけの労力をかけて作られているのだと毎回考えてしまう。宣伝サイドにも、そういうものだと考えて仕事に当たってほしい。大体、そうやって血道を上げて作ったものが、海の向こうで「どうせ売れないと思いますけどwww」みたいなテンションで売られていたら悲しいと思う。冒頭の記事で言われているような態度は、本当の映画ファンに対する侮辱だけでなく、クリエイティヴ側に対する多大な侮辱でもあるだろう。

 

見出しにも書いたが、その作品に対する愛まではなくてもいい。「これちょっと自分には合わないなー」という作品を宣伝することだってあるだろう。でも、最低限敬意は持ってほしい。本国から作品が届くまでには、多大な人の多大な苦労があるのだ。それを宣伝ひとつで握りつぶさないでほしいと思う。

 

ものを伝えることの難しさは確かにある

広報官の端くれのような仕事をかじっているので、人にものを伝えることの難しさは痛い程分かっているつもりである。こちらがどれだけ熱量をかけて説明しても、伝わらない時は伝わらない。多くの人に伝えたいと思っても、池に波が広がるどころかさざ波も立たずに終わることだって多々ある。頑張っても頑張っても報われない辛さというのは確かにある。

でも、それを伝える側が口に出してはならない。そして、そういう態度で仕事に臨んでもいけない。先述の通り根性論は嫌いだけれど、真面目に仕事をやっていて、誰も振り向かないなんてことは絶対無いと思う。真摯な気持ちはその内誰かの心を打つ。

それを何じゃあこの舐め腐った態度は、というのがわたしの感想だ。お前さんたちの配給した作品に客が入らないのは「マイナーな作品のせい」か。そもそも「公開してやってるんだから感謝しろ」みたいなマウンティングをされたくない。映画への敬意だったら、そうやって邦題に文句を言っているファンの方がよほど持っているだろう。

 

反知性主義

何より、そういう態度でやっている宣伝が伝わらないのを、おバカな邦題にしないと寄りつかないから、と言いつつ、しれっと客のリテラシーのせいにしてるのが1番問題だと思う。相手にものが伝わらない時、「こっちがこれだけ言ってるのに通じないの、こいつがアホだからなんちゃう?」と考えてしまうのは、伝える側として絶対アウトだ。

 

このブログの『スリー・ビルボード』考第1回でも書いたが、優れた作品というのは、(それが正解か不正解かはさておき)、観た側に「もっと知りたい」「もっと観たい」と思わせ、その先を考えさせる余地や原動力があるものだと考えている。

これはわたしの座右の銘(的なもの)なのだが、優れた作品は、観た側をその先に進ませようとする力があるものだと思う

——正体はただの暴力映画では無かった - 映画『スリー・ビルボード』ネタバレ考察1 - ちいさなねずみが映画を語る

この記事でも言われている態度はその正反対だ。作品に含まれたアイロニーや比喩、様々な作品背景をそぎ落とす作業は、「ライト層に観てもらうため」と言えば聞こえがいいが、実際の所「バカでも分かるようにする」ということだろう。逆に言えば、それだけリテラシーの無い人間、知的探究心の無い人間がターゲットだと思われているということであり、だからこそこれだけ舐められ切ったマウンティング記事になる。

 

 そういう話を目にして思うのが、いわゆる「反知性主義」である。元々は既存の知識体系、すなわち科学の世界で立証されたことを否定し、ある種原理的な宗教観に戻っていくことだが*2、宗教的背景の無い日本ではもう少し違った意味で捉えられているように思う。反ワクチン、麻疹パーティ、脱ステロイド、癌治療の代替療法……そういった新種の「宗教」が出てくることの根っこにはメディア側のこういう姿勢があるのかもしれないなと考えさせられた。

 

映画ファンの力はそんなに小さいのか?

よしなはなしはさておき、ここで冒頭の引用文に立ち戻る。映画ファンの力は、そうやって配給(の一部)に見下されるほど、取るに足らないものなんだろうか?

 

そうやって考える時に思い出すのが、ここまで延々記事を書いてきた映画『ボヘミアン・ラプソディ』である。 そう言えば先日コードブルーを抜いて昨年の興収第1位に躍り出たらしい。100億円も間近に迫っているというから恐ろしい映画だ*3。その影には、多くの人に聴き馴染みがあるクイーンの曲だけでなく、SNSでの感想戦があったことは既に指摘されている。

www.sankei.com

toyokeizai.net

 

ここでツイートを引用した雨宮夏樹さんは、Twitterで「#もっとクイーンが好きになるトリビア」タグを作った張本人でもある。勿論この話は、映画ファンによる宣伝というより、クイーンファンによる宣伝だったので多少趣旨はずれているが、それでもファンの力がけして小さいものではないという証明にはなると思う。

togetter.com

ところで『アリー/スター誕生』の宣伝についてはこちらの記事をどうぞ☞

mice-cinemanami.hatenablog.com - 「女性」をターゲットにした宣伝は果たして正解だったのだろうか

 

そもそも「ダサい邦題」は本当に成功しているの?

こうやって色々考えてきて思うのはこれ。本当に、そうやって作った「ダサい邦題」って成功してるの? そうやって考えてたらこういうツイートを見かけた。

 

ある程度のローカライズは必要だ。日本人には分かりにくい海外の慣習とか事情とかも絶対あるし、その辺を上手くローカライズするのは配給・宣伝会社の腕の見せ所だと思う。邦題を付けることは悪ではないし、特に昔のハリウッド映画の邦題では、秀逸だなあと思わされるものも沢山ある。例えば ビリー・ワイルダーの "The Apartment" の邦題は『アパートの鍵貸します』だし(これはよく名訳の例にされる気がする)、"The Notebook" という原題に『きみに読む物語』という邦題を付けたのもなかなかに良い仕事だと思う*4

matome.naver.jp

filmaga.filmarks.com

あんだけマウンティングしたインタビューになるくらいだから、さぞかし洋画はご成功してらっしゃるのだろうと思うが、現実はそうではない。冒頭の記事と同じA氏だという人物が答えたとかいう別記事だが、「稼げるのは邦画」と言い切ってしまっている。

www.sbbit.jp - これも日本の配給会社色々舐め腐り過ぎだろという気分にさせられた

日本映画制作者連盟が発表している2017年の興収結果を見てみたが(締め日の関係で2018年版はまだ出ていない)、興収10億円以上を達成した作品は、邦画38本に対し洋画24本。洋画で邦画トップの『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』(68.9億円)の上に行く作品は3作品あるものの、『美女と野獣』(ディズニー)、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(ハリポタ新シリーズ)、『怪盗グルーのミニオン大脱走』(ミニオンズシリーズ)と、いずれもブランドがしっかりした作品だった。そのすぐ下に来た『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海』だってシリーズ作品だし、他にもマーベルやDCなどのアメコミシリーズ、ファミリー向けのアニメ作品など、既にシリーズが進んでいて固定層がしっかりしている作品ばかりが並んでいる(ただしこの傾向は邦画でも同じだが)。

そうやって考えてみると、単発の洋画作品でまともにヒットしている作品は、『ラ・ラ・ランド』(洋画8位)、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(洋画12位)、『キングコング:髑髏島の巨神』(洋画13位だがキングコングのブランド力があるので微妙だ)、『ダンケルク』(洋画17位)など、限られた作品になってしまう。やはり洋画を巡る状況はなかなかに厳しいのである。

でもよく見てほしい。ここで10億以上を叩き出した作品には共通点がある。

なんだかんだ言ってほとんど原題をいじっていないのである。だから最初の記事で言われているようなとんちき論は全く当てはまらない。

 

もうこうなったら何とでも言い放題だ。どうせ影響力は無い(笑)らしいし、原題そのまんまの方がよっぽど流行ってるんだから、映画ファンはいいぞもっとやれ状態だ(このツイートの通り)。

 

単館系?マイナー映画でしょ? - とんでもない!

冒頭の記事では、洋画はTOHOが取るかで決まるみたいなことを書いているB氏が登場する。さっきから延々話題になっている「洋画」とは、どうやら大手シネコンで上映される作品を指しているらしい。そもそも単館系ばっか観てる筆者とはちょっと認識の違いがあったようだ。

でも単館系と言われる映画、最近は頑張っている配給会社が結構増えてきているように思う。このツイートで指摘されているCMBYN(拙記事)の邦題は『君の名前で僕を呼んで』。直訳ながら日本語としてもとても綺麗だと思う。ファントム・フィルムはシャラメの次回作 "Beautiful Boy"の配給権も取得しているが、こちらも『ビューティフル・ボーイ』という直球ドストライクの邦題だ。

natalie.mu - ツイートされたNODOKAさんご指摘の通り、CMBYNは連日満員興行を出し、遂にはシネマカリテの興収記録を塗り替えた

2017年の洋画興収ランキング8位に『ラ・ラ・ランド』を送り込んだギャガも、独立系配給の代表格である。最近唸ったのは『スターリンの葬送狂騒曲』。映画の原題は "The Death of Stalin" だが、モロトフ役を演じたマイケル・ペイリンを意識してか、モンティ・パイソンの映画第4作『人生狂騒曲』にオマージュをかけた邦題になっている*5。しかもこの話、スターリン死後のソ連で起きた権力闘争を、ドタバタコメディとして描いているので、話の内容も分かって一石二鳥だ。

gensakudaidoku.hatenablog.com

そして最近の筆者のイチオシとも言えるのが、フォックス・サーチライトである。既に『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のレビュー記事でも触れたが、『gifted/ギフテッド』、『シェイプ・オブ・ウォーター』、『犬ヶ島』など、結構優秀な邦題が揃っていると思う。そして来月公開の "The Favourite"の邦題は『女王陛下のお気に入り』。アン女王の寵愛をふたりの女性が取りあう話だから、大正解としか言いようが無い。ほとんど無駄の無い素晴らしい邦題で、筆者も歓喜した記憶がある(12)。是非是非冒頭の記事のプロデューサーの鼻を明かすためにも大ヒットしてほしい。

 

単館系と言うとマイナー映画みたいな扱いをされがちだが、実はこういうところにこそ、映画を愛する人々が多く残っている気がする。地方になると地元劇場での上映が無いこともあったりするが、こういう作品こそ頑張っているので、もしお近くで上映されていたら貴重な機会だと思って是非足を運んでほしい。

   

他にも色々ありますが

これはわかる。ファミリー層を当て込んでなのだろうが、大手シネコンだと上映回数が字幕版<<<吹替版なのも結構辛い。そうやって『パディントン2』と『プーと大人になった僕』を見損ねた人間なのでかなり泣いている*6

 

こんだけぐちぐちと文句を書いてきたのだが、最終的にこのツイートでくすっと笑ってしまった。サメ映画、沼っぽいから手を出さないできたけど、今度チャレンジしてみようかな(笑)

 

投稿後追記

アップリンクの浅井社長のツイートを見つけた。ここから繋がる数ツイートがとても興味深かったのでシェア。そうですよねえ、ミニシアター作品はまだまだ映画愛に溢れてる邦題がしっかり残ってますよねえ。

 

そしてすなおさんのツイートでガン監督のこの話を思い出した。Vol.1ではクィルが新しいテープに手を伸ばすまでの道のりを描いたのに(だから「Vol.2」は全く新しいテープなのだ)、「リミックス」となってファンが猛抗議した記憶があるが、次回作「Vol.3」*7はどんな邦題になるのだろうか。そう言えばウォルト・ディズニーさんと言えば、『ドクター・ストレンジ』で「女性にはラブ♡」みたいなことを公言して炎上した過去があったけど……?*8

 

関連:洋画 / 邦題 / 映画配給

*1:そんな仙フィルさんと神奈川フィル(かなフィル)さんの中の人対談がこちら☞

magcul.net - 素敵な記事なので是非読んでね!

*2:これがアメリカで広まった理由には、アカデミアやIT関係、そして富裕層の枠組みに入れなかった白人たちの存在が大きいはずなのだが、それについてはこちらの記事でさらっと触れている☞

mice-cinemanami.hatenablog.com 

*3:そう言えばコナンの映画版(『名探偵コナン ゼロの執行人』)で「安室さんを100億の男に!」とか言っていたのに、フレディはこれをも抜いて国内だけで100億の男になりそうで恐ろしい話だ。なお、既に『ゼロの執行人』は上映終了しているので、国内興収100億超えは幻になってしまった(歴代ランキング - CINEMAランキング通信 参照)。

www.huffingtonpost.jp

nijimen.net - これは海外興収も合わせた場合のお話

*4:作品そのものに興味が湧いた人向けです

アパートの鍵貸します [DVD]

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きみに読む物語(字幕版)
 

 

*5:音楽用語は「狂曲」だから、これは明らかにわざと付けた邦題だ

*6:あのね、わたし、斎藤工堺雅人も嫌いじゃないんですよ。むしろ大好きなんですよ。でもさあ、それがおヒュー様とかユアン・マクレガーの吹替となると話が別なんですね

*7:ジェームズ・ガンからスクリプトを書き上げた旨が報告されており、その際の写真から原題は「Vol.3」で確定☞

metro.co.uk

*8:詳しいことはこちら☞

togetter.com - 個人的には『キングスマン:ゴールデン・サークル』の広報も結構うるさかったけど、重大ネタバレまでは無かったような……?

business.nikkei.com - マントちゃんは確かにうざかわいいけどさー!

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