ちいさなねずみが映画を語る

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映画『アリー/スター誕生』についてつれつれ雑記

今回は自分の備忘録的記事なので、特に読まなくても大丈夫。むしろネタバレレビューとかサントラの話を読んでほしい。

 

mice-cinemanami.hatenablog.com

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ほんとにどうでもいい雑記ですよ?☞

 

 

 

トレイラーの話

 

 

Twitterでこんな話を見かけたのでちょっと調べてみた。本国版ワーナー公式が1つ出していたので、まずこれから。

 

……いや、普通にいいじゃん?

 

続いてYouTubeに本国版トレイラーをまとめたのがあったのでちょっと覗いてみることにした。

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露骨にガガだけ強調している日本版トレイラーと違い、ガガの歌にクーパーの映像が載ったり、逆もあったりという印象。またアリーとジャックの関係が一歩進むことになるメンフィスのシーン(デイヴ・シャペルが出ているところだ)が使われていたり、ボビーが「音楽とは12音の繰り返しだ」と語るシーン(サントラの32."Twelve Notes"前半に相当)が使われていたりと(この脚注は大ネタバレ☞*1 )、良シーンを余すことなく使っていて興味深い。

 

簡単にまとめるとこれ。

 

興行的にも少し物足りないスタートを切ったことが報じられているが、やっぱりその原因は配給のプロモーションにあったのではないかと思う。上の日本版本予告を観てほしいのだが、明らかにその対象は「女性」(敢えてかっこ付きだ)にシフトしているし、クーパーが初監督/主演/脚本の3役をこなしたことは、(海外メディアで絶賛されているにもかかわらず)全く触れられていない。

リアルサウンドに掲載された宇野維正氏の記事ではもっと原因が指摘されている。

realsound.jpゴールデングローブ、オスカーが控える賞レース期間を前にし、年内に公開したことは評価できる。しかしながら、本国では10月に公開のものを今公開し後塵を拝しているのも問題だし(日本公開は12月21日だ)、そのせいで5週目まで興収を伸ばし続けたモンスター映画『ボヘミアン・ラプソディ』に割を食っているようではしょうがない。

 

同じく男女ダブル主演だが、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』の予告なんかはストーンとカレルを割と平等に扱っている気がする(ストーンの方が若干多い気もするが、明らかにエマ嬢だけ推してる訳でもない)。

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ついったではちょっと暴言吐いているが、かっこ付きの「女性」をターゲットにした広告は色んな意味で宜しくないと思う。「女性向け映画なのか」と思った瞬間に来なくなる男性客だっているし、「女性」向けにシフティングして得られる「流行に乗った」女性たちは意外にわずかだと思う*2。何より「女性」にシフトした時点で、映画館に足を運ぶかもしれない男性たちを広告ターゲットからばっさり切り落としているわけだし、そういうのはやはり上手い戦略ではない。

本来、この映画は、ブラッドリー・クーパー演じるジャックと、サム・エリオット演じるボビーの男臭いぶつかり合いもある作品だ。ガガ以外で台詞のある女性の役は(ドラァグクイーンたちを除けば)デイヴ・シャペル演じるヌードルズの妻/娘に、『シャロウ』を披露する直前アリーたちをバックステージに連れて行くマネージャーひとりくらいしかいないし、ベクデルテストをパスするかというとかなり微妙だ(一応パスするということになっているがかなり疑問である)。

 

日本での「歌って、恋して、傷付いて」というのも、真ん中が「愛して」になった方がもっと良いと思う。また、この作品はジャックが退廃的生活に嵌まり込んでいくことも大きなポイントなのだから、『シャロウ』から "I'm falling" という一節を引いたっていい。

 

 

人を動かすことに絶対は無いし、宣伝というのも難しいものではあるのだが、この作品の場合は明らかにそこがまずかったよなあと思わされた。

 

 

! SPOILER ALERT!!! SPOILER ALERT!!! SPOILER ALERT!!! !

 

 

 

笑わされたシーン

1つは冷凍豆のシーン。詳しいことは言わないでおくが、シークエンスが終わる直前、ガガが上げる右手から豆の袋が消失している。駐車場のシークエンスはその直後に終わるので、単に溶けたから外したのかな、と思うのだが、やっぱり演出上忘れていたのだと思う。

 

 

もうひとつはアリーの父親とその仲間たちが日本の競馬に明け暮れているシーン。詳しいことはオスカーノユクエさんに色々書いてあるのだが、馬の名前によくよく注目していると面白い

1番笑ったのは「ジャクソンメイン州」だった。絶対Google翻訳とかの機械翻訳使っただろ(笑)

oscar-no-yukue.com

ジャックの事実上最終シーン

ジャックがどういう結末を辿るのかは何となく知っていたし、本編でもちらっと匂わされていたので、どういう風に映像化するのか気にしながら観ていた。演出上色々大変なことがあるだろうな、と思っていたら、カットの切替だけでそれを表現していたので、内心大正解だなと感じた。

 

 

何でこんなことを言うかというと、こういう映像が流れると後追い自殺が増えるというのは医学的によく知られた事実だからである(岡田有希子の話を調べれば分かると思う)。

www.sanspo.com - 当時この現象は「ユッコ・シンドローム」と言われた

元はと言えばゲーテの『若きウェルテルの悩み』出版時から知られており、その名を取って「ウェルテル効果」とも呼ばれる。概要は日経ビジネスオンラインの記事に詳しいが、この中で触れられている上田氏の論文は、内閣府のページで無料公開されている

business.nikkeibp.co.jp

今時様々なプロップがあるので、ああいうシーンを安全に映像化することも簡単なのだが、敢えてそうせずにカットの切替だけで描いたところは正しい選択だと思った。

 

関連:アリー/スター誕生 / ブラッドリー・クーパー / レディー・ガガ / サム・エリオット / デイヴ・シャペル

*1:このシーン、その直前にジャックの声が使われているので、ボビーが話しかけている白シャツの人物が彼だとミスリードさせる良演出が効いている

*2:映画『ボヘミアン・ラプソディ』だって、当初考えていた客層とは全く違うところでうねりになったのが大ヒットのきっかけだと思う。この記事で言われているのもきっとそうだ☞

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