ちいさなねずみが映画を語る

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やっぱり世界は猫が好きなんだなあ - 映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

ゴールデンウィークだ映画観ようぜイヤッフー!(前記事参照)ということで、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』"The Super Mario Bros. Movie" ('23)を観てきました。本当は3日に公開のGotG:Vol.3と合わせてクリプラリレーにするつもりでしたが、任天堂のお膝元ニッポン+GWの目玉アニメ映画ということで、上映回数の多い吹替版=宮野版マリオになりました。作中の演出・描写については色々とありますが、随所に遊び心のある作品だったなと思います。ネタバレ記事です! (因みにタイトルが1番どうでもよいネタバレです、そのくらいネタバレます!)

www.youtube.com - 今週のお題「何して遊ぶ?」

あらすじ、書きません

普段の記事ならここにあらすじを書いていますが今日は敢えて書きません。ピーチ姫を狙うクッパがやってきて、マリオが奮闘するというみんな大好きいつもの流れです。敢えて言うなら昔親しんだマリオのゲームをちょっと思い出すと楽しいかもしれません。イヤッフー!

 

マリオシリーズとしては実は3作目の映画ですが、原作ゲームのアニメーションに忠実で、尚且つ海外制作の作品というのは今作が初めてでした(前2作は国内制作のアニメ映画と、海外制作の実写作品)。もっとも、最近日本のビデオゲームを映画化するというのは人気のプラットフォームで、2019年には『名探偵ピカチュウ』(ワーナー)、2020年には『モンスターハンター』(スクリーンジェムズ)などの先例があります。2021年にはUSJにスーパー・ニンテンドー・ワールドとしてマリオを題材にした区画がオープンしたこともあり(キノコ王国のシーンでもUSJと同じギミックがいくつか登場していました)、マリオを実写化する今回の作品は以前から注目を集めていました。ユニバーサルと蜜月を築いていることもあり、今作はユニバーサルで『ミニオンズ』シリーズをヒットさせたイルミネーションがアニメーションを担当しています。

 

『名探偵ピカチュウ』でライアン・レイノルズ、『モンスターハンター』でミラ・ジョヴォヴィッチが主演したように、ハリウッド肝いり企画として今作でも売れっ子俳優が沢山キャスティングされています。主演のマリオ役には『ジュラシック・ワールド』シリーズ(新生ジュラシックパーク3部作)やGotGですっかり売れっ子になったクリス・プラット、ピーチ姫役には今をときめくアニャ・テイラー=ジョイなど、気合いの入ったキャスティングでした。アニメ映画でもあり、どうしても日本では吹替版の上映が多いようですが、オリジナル英語版も是非観てみてね。

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ここまで沢山書いたんだから、もうネタバレでもいいよね?

 

!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※新鮮な気持ちで映画を観たい人は出禁です!※

【総評】エンタメ映画としては90点、海外映画化としてはツッコミもある、子ども向けにしてはちと難しい

にっこにこで仕事終わりに映画館へ駆け込んで、色々複雑な気持ちを抱きながら映画館を出て来ました。DSでニューマリ(New スーパーマリオブラザーズ、'06)をやり込んで以来、なんだかんだとマリオに触れてきたので、過去作への目配せが沢山の今作はとても楽しい演出でした。一方でキャラクター造形など海外映画化ならではだな、という点もありましたし、全体を通してみれば、作品の筋書きは子ども向けにしてはちと難しいのかな、と思いました。

 

1985年にファミコンで第1作「スーパーマリオブラザーズ」が発表されてから40年近く、その集大成として作られたのが今回の映画作品です。観に行く気満々だったが故に逆に予告編も観ずに足を運びましたが、過去のマリオ作品に沢山言及したり、お馴染みの台詞を上手いこと使ってきたりと、エンタメ作品としてはかなり評価できるポイントが沢山ありました。減点するならばキャラクター造形と(後述します)、筋書きのちょっとした難しさと、色々あって選曲が過去の映画作品と被っていたところでしょうか。

 

任天堂全面協力ですし、明らかに全世代が楽しめる作品を目指していたようです。しかしながら、今作の筋書きは、どちらかと言えば今までマリオやドンキーコングなど任天堂の名作に触れてきた大人の方がより刺さるのではないかなと思います。子どもが諸手を挙げて楽しむ作品というよりは、ちょっとおませになってきた年代くらいから分かってくる筋書きとの印象を受けました(後述)。実際、過去に『名探偵ピカチュウ』を観たときに比べて、映画館内での子どもの歓声はなかったように思いました。単純にコロナ禍を経て発声禁止が染み渡ったとも取れますが、とはいえ子どもは大人がなんぼ注意しても映画館で声は出しますからね……*1

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マリオに親しんできた人ほど、あちこちの目配せが楽しい

筆者が言うよりファミ通の記事を読んだ方がよさそうですが、今作では本当に過去のゲーム作品へ沢山目配せがされています。そういう意味もあってある程度の年齢の方が楽しめそうです。

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予告編でも様々なシーンが描かれていましたが、例えばクッパの王国がキノコ王国に迫ってくるシーンは「フューリーワールド」、ブルックリンからダークワールドに吹き飛ばされて懐中電灯を手に彷徨うルイージは「ルイージマンション」、ピーチ姫によるマリオ特訓シーンのコースは「スーパーマリオメーカー」、秘密の道ことレインボーロードを、カスタマイズしたマシンで駆け抜けるシーンはお馴染み「マリオカート」と、過去のマリオ作品が様々引用されています。また、マリオとピーチ姫にお供する山登り格好のキノピオは「進め!キノピオ隊長」の引用です(個人的にはキノピオ大好きなのでわーい!という感じでした)*2

他にも、Newスーパーマリオブラザーズ初出(筆者にとって初めてのマリオ)のマメキノコ/マメマリオスーパーマリオ3Dワールド初出のファイアピーチ、更にタヌキマリオなど、過去の作品でプレイヤーを沸かせた特殊効果も様々登場しました。

 

物語の中盤から登場するドンキーコングたちも、ドンキーコングのゲーム本編にそれなり目配せした演出です。コングたちはカートに乗りながらでも決闘を見ながらでもバナナを食べまくっていますが、マリオにおけるコイン的に、DKの本編で収集することになるのがバナナ🍌です(カートでコースを爆走しながらバナナを集めるコースもあります)。コロシアムの造り自体はアーケードゲームで作られた初代ドンキーコングを下敷きにしています。実は冒頭のピザ屋シーンでしれっと登場しているアーケードゲームがそれであり、オリジナル版ではここでゲームプレイしているおじいさんの声がマリオの声を担当しているチャールズ・マーティネーだったというオマージュもありました。*3

ドンキーコングとの乱闘シーンで、勝負の行方を決めることになるのが、「3Dワールド」で初登場したネコマリオやっぱり世界は猫が好きなんだなあ!!!ネズミが好きだっていいじゃないか!!!(力説)

 

個人的に胸熱だなあと思ったのは、冒頭配管工屋を立ち上げて、マリオとルイージが依頼主の元まで走って行くシーン。ブルックリンを爆走するマリオが、ショートカットの道中で、まるでゲーム内のように様々な動きを見せる楽しいシーンでした。ルイージのために手を引く様子も、マリオとルイージの2人プレイをベースにしています。今作では兄弟の絆がひとつの鍵になっていますが、回想シーンにベビィマリオベビィルイージベビィピーチを出してきたのも憎い演出です。

 

また、ピーチ姫の特訓シーンで、マリオがひたすらにミスしまくるのも、ゲーム始めたてあるあるの懐かしいシーンです。しょうもない敵やギミックでなんぼミスしたことでしょうか。キノコ嫌いなのに沢山食べさせてごめんね*4

 

ラストシーン、マリオ・ルイージクッパ砲丸投げの要領で投げ飛ばすのは、「スーパーマリオ64」からの引用。いや〜Switchの限定パック買っといてよかったですね〜ほんとですね〜GWプレイします。

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お馴染みのジングルや音楽もふんだんに使って

冒頭の"Mario Brothers Rap" でも分かる通り、今作ではお馴染みのジングルや音楽がふんだんに使われ、気分を挙げる一助になっています。長年マリオの声を担当したチャールズ・マーティネーでなく、イタリア系でもないクリス・プラットがマリオの声を担当することには異論も多々あったようですが、冒頭のラップシーンで「マンマミーア!」「It's me!」といったお馴染みのジングルとマリオの台詞が交互に入ってくることで、声優が違ってもすっと話に入れる効果がありました。

Mario Brothers Rap

Mario Brothers Rap

  • Back Lot Music
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www.youtube.com - これはジミー・ファロンのトゥナイト・ショーでオリジナル版声優たちが勢揃いした動画

YouTubeにイルミネーションが公式で出した動画があったので見比べていましたが、日本語版はオリジナル版に加えて「救えブルックリンからクイーンズ」、の部分で台詞を足しているんですね。このラップシーン自体はかつて制作されたスーパーボウル幕間CMのオマージュだそうです。日本語版では木村昴がラップを担当しています。

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音楽を担当したのは『ワイルドスピード』シリーズなどでも知られるブライアン・タイラー近藤浩治が作曲したオリジナル曲を上手く活かしながら、細かなオマージュとして沢山引用しつつ、新たなサウンドトラックに生まれ変わらせていました。個人的にはダンジョンの曲をクッパがピアノで弾いてたところが本当に憎い演出でしたね、、、ピーチへの愛の唄と同じくらい……(いやてかオリジナル版も聴いたけど英語でも「ぴーちぴーちぴちぴちぴーち」って言っとるんかい……!)

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あ、安部礼司」ばりに今ツボな音楽で送るサウンドトラック

お馴染みのゲーム音楽だけでなく、今作では「あ、安部礼司」ばりに今ツボな音楽で彩られています。選曲のセンスからも、やはりマリオに親しんで育ってきた大人世代をある種のターゲットにしているような気がしてなりません。

 

初めての大乱闘のシーンで布袋寅泰の "Battle Without Honor or Humanity" が流れた時には本当に笑いました。いやみんな『キル・ビル』もそうだけど、布袋のこの曲好き過ぎるだろ。だってパラリンピックの閉会式でも布袋弾いてたぜ? 映画界で幾度となく使われる、ジャパニーズ発の名曲です。

 

ピーチ姫がマリオを特訓するシーンで流れているのはボニー・タイラーの "Holding Out for a Hero"。日本では麻倉未稀の日本語詞版が『スクール・ウォーズ』の主題歌に使われたことでも有名です。日本でも人口に膾炙している名曲だし、内容としても「救世主/ヒーローとなるために奮闘するマリオ」の背景に使われているのでぴったりではありますが……運の悪いことに昨年の『ブレット・トレイン』('22)で、全く以て同じようなシーンで使われていたこともあり、二番煎じ感が否めませんでした。

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コング王国に着いたマリオたちが、王国内のコースをカートで走り抜けるシーンの曲は a-haの "Take on Me"。この曲も数多の映画で使われてきた名曲です*5。例えば『ラ・ラ・ランド』で主人公ふたりがいけ好かない再会をするシーンとか。ヒーローものでは『バンブルビー』(実写リブートトランスフォーマー)や、『デッドプール2』など。ある意味名曲過ぎてこすられた曲なのです。このシーンでは、コング王国のサルたちがいかついカートで大挙して走ることもあって、若干『マッドマックス』感が出ていたのも面白かったです(心の中で「いや『怒りのデス・ロード』かよ!」とめちゃくちゃツッコみました)。

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まー今ツボというかこすられた音楽が多いなあとは思いながら観ていましたが、いやもう最後のあれは何なんですか。クリス・プラット繋がりですか?

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ラストシーンでブルックリンの平穏を救った後、新しい朝と新しい仕事に向かうマリオの耳元で流れているのは、Electric Light Orchestraの "Mr. Blue Sky" です。なんぼ流れても名曲は名曲ですが、主役マリオの声優クリス・プラットが主演のGotG2('17)のオープニングでド派手に使われていたこともあって、そちらがちらついてしまいます。うーん……いいんだけども……何か不思議な気分に……

 

 

やや海外化されたキャラクター造形も

マリオが原作設定通り「イタリア系アメリカ人の配管工」として登場し、ゲームさながらの大奮闘を見せる中で、その他のキャラクターに関してはちと海外化されたな、という印象もありました。キノピオたちが「ぼくたちはかわいすぎるので!」とあざとく言っていたのはある意味オリジナル通りでしたが……

クッパキノコ王国を脅かすメインの悪役として登場する中で、マリオの好敵手としてシリーズを通して活躍してきたクッパJr.の登場はありません(キャラクターが増えすぎる+続編を見据えた展開かもしれません)。また、クッパ軍の主力としてカメック率いるノコノコ軍が戦う中で、スーパーマリオブラザーズのW1-1から敵キャラとして登場してきたクリボーはただのモブとして終了してしまいます(キラーがあれだけフィーチャーされているというのに!)。

 

登場人物の中で最も海外化されたな、と感じさせられたのが、メインヒロイン・ピーチ姫でした。まずもってパースが何となくイルミネーションのアニメに寄っている感があって、ぼくらが知っている3Dマリオとどことなく違和感があります。見た目的にはオリジナル版声優のアニャ・テイラー=ジョイに寄せちゃったかな?という気もします。

また、ゲーム版では「何かよく分からないけど、マリオに冒険をお願いするお姫さま」ポジションなピーチ姫ですが、今作では "可愛いだけ" のキノピオたちを従える強い強い自立したお姫さまに変更されています。恐らくは今の映画界の流れを反映したもので、筋書き的にも全く問題はありませんが、ピーチ姫と言えば「何だかよく分からないけど、、、」という行動原理でよかったのもまた事実です。

 

自立した姫としての背景をピーチ姫に持たせるのは時代の潮流なので構いませんが、いちファンとして最も不満だったのがマリオの弟・ルイージの造型です。元々マリオよりも少し臆病でおっちょこちょいな性格なのは事実ですが、あそこまで自分ひとりでは何もできないようなキャラにする必要はなかったでしょう。弟を護るためめげないマリオ、というキャラクターが強調されているが故に、逆にルイージの不甲斐なさが不必要に目立っています。個人的にはニューマリでもマリオランでもルイージをメインで使っていただけに、「いや、、もっと強いし魅力あるキャラクターだから、、、」という気分にめちゃめちゃさせられました。

 

スタジオとしては続編作る気満々

色々文句は書いたものの、エンタメ作品としては90点の出来で(普段あまり点数を付けない筆者が珍しく点数を付ける)、過去のゲーム作品に上手く水を向けた上でよくまとめた作品でした。流石任天堂全面タイアップの力を感じます。元々1993年の実写映画化が大コケしたこともあり、任天堂は次なる映画化へ慎重な手順を踏んでいました。USJのスーパー・ニンテンドー・ワールド建設と同時並行でもあり、マリオ映画の大ヒットを望んでいたのは間違いありません。

 

単発映画として終了した『名探偵ピカチュウ』と異なり、今作は明らかに「もし成功したなら次作を作ろう」という気が満々の筋書きでした。まずは先述の通りクッパの息子でマリオの好敵手であるクッパJr.の登場がありません。また、ベビィピーチの登場シーンで、「ベビィピーチはどこから来たのか、何者か、どこへ行くのか」というストーリーが匂わされていたものの、回収されずに終わりました*6。話が煩雑になるので、そのまま謎として残したのは明らかに大正解ですが、どう見ても続編を見据えた展開です。

そして何より、ポストクレジットシーンで、物語のきっかけとなった地下の配管の脇で、見覚えのある白地に緑ドットの卵が孵化するシーンが付け加えられていました。言うまでもなく、この卵はヨッシーのものであり、次回作以降での登場を目論んでいるものと思われます。

 

おしまい

というわけで映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』をロングロングレビューしてしまいました。日本では4月28日公開、ゴールデンウィークの目玉映画として大ヒット上映中です。宮野真守マリオの吹替版、クリス・プラットマリオのオリジナル版、どちらも楽しんでね。(因みに筆者は今日公開のGotG3も観に行くよ〜クリプラはしごだよ〜)

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原作となったマリオシリーズは各所でキャンペーン中。Amazonでもグッズが当たる抽選キャンペーンが実施中、またNintendo公式では、GW限定で一部作品のセールを実施しているようです。ぼくはNintendo Switch Onlineに入っているので2本でお得パックを複数セット買っちまうか……(じゅるる)。

 

関連:ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー / 任天堂 / マリオ / ドンキーコング

*1:子どもが「マリオがんばえー」と応援する作品という感じではないのだと思う

*2:どうでもいいけどこのシーンでエズラ・ミラーの可愛いキノピコが頭を過ぎってしまって一生懸命かき消した☞

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*3:個人的には昔ディディーで沢山プレイしていたので、もう少し出してほしかったですね、、、キャラクターが増え過ぎちゃうからしょうがないけどさ、、、

*4:個人的にはキノコ嫌いが近くにいたのでちょっとくすりと笑いました、いやあんなに美味しいのにねえ

*5:個人的には『シング・ストリート』で主人公がガールを口説くためにアカペラで歌うシーンで使われていてすきです☞

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*6:ブルックリンの土管からピーチが出て来たせいで『魔法にかけられて』感があるが奇妙な偶然ということにしておこう☞

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