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滅菌ガーゼを買い込んだあなたへ - COVID-19日記

COVID-19による緊急事態宣言が全国へ拡大されて早1週間あまり。筆者は専ら家に籠もってちまちまとSNSを眺めては過ごしているが、全国各地で色々なものが店頭から消えていたり、未だにマスクは店頭に並ばなかったりという状態が続いている。先日はアカチャンホンポから赤ちゃん用のガーゼが消えていたという話が話題になっていたが、その影にはマスク用へ転用する(育児とは無関係の)買い占めがあったのではないかと騒ぎになっていた。

 

本当に棚に無いんですね

筆者もたまたまドラッグストアに立ち寄る機会があり、何の気なしにマスクやガーゼの棚を覗いてみると、当然在庫など(ほとんど)無い。正確にはガーゼの大袋がいくつか置かれていたが、ステラーゼと呼ばれる滅菌ガーゼは全く置かれていなかった。そしてその棚には、「ガーゼ・滅菌ガーゼはおひとり様一点までと制限させていただきます」という但し書きが付いていた。噂には聞いていたけれど、いざ目の当たりにするとびっくりしてしまう。

 

ガーゼが飛ぶように売れている原因は、恐らくマスクが手に入らないことにあるだろう。不織布マスクの使い回しや、(手作り/既製どちらでも)布マスクの使用にあたって、その中に当てる当てガーゼとして需要が高まっている(のだと推測している)。しかしながら、そういう目的ならば、滅菌されていないガーゼでも代用できるということをお伝えしたい。

 

 

 

まずは言葉の定義から

「滅菌」というのは医療現場における概念だ(当然ながら)。言葉の定義についてはアズワンのこのサイトがざっくりしてて分かりやすい。ここに書いてある通り、付着しているものを全て死滅ないし除去するのが「滅菌」だ。

www.as-1.co.jp

一方アルコールを手指に塗り込んだり、赤ちゃんの哺乳瓶を煮沸したりするのは「消毒」だ。「消毒」の定義は、病原微生物の感染性をなくすか量を減らす、とある。そして、医療の世界において、消毒すらしていないものは「不潔」と扱われる。これはちょっとぎょっとする言葉だが、そういうものだと覚えてほしい。

 

細かい定義について掘り下げてもいいのだが、そういうのは今回の目的ではないので、ざっくりしたラダーを書いてみる。

  • 「滅菌」:めっちゃきれい
  • 「消毒」:きれい
  • 「不潔」:何付いてるか分かったもんじゃない

 

ところで、「滅菌」の定義で、"付着しているものを全て死滅ないし除去する"と書いた。つまり、滅菌したものの表面には、生きているものひとつあってはいけないのである。ということは、「滅菌」は人間の皮膚にはできない。だってそのためには皮膚すら殺さなくちゃいけないから。ちなみに消毒は人間にもできる。アルコールをせっせと手指に塗りつけるのは「手指消毒」だし。ということでもう1度ラダーを書き直す。

  • 「滅菌」:めっちゃきれい / もの○ヒト×
  • 「消毒」:きれい / もの○ヒト○
  • 「不潔」:何付いてるか分かったもんじゃない / 何でもあり

 

マスクの当てガーゼに「滅菌」は必要か?

ここで冒頭の話に戻る。マスクの当てガーゼに「滅菌」までしておく必要があるだろうか? 答えは「NO」だ。日本で売られているガーゼは大体衛生面しっかりしてるし、普通のガーゼで大丈夫。手に入らなければ手持ちの清潔なハンカチとかでも大丈夫かもしれない。この理由は簡単。当てガーゼが触れるわたしたちの口元が「不潔」だからだ。

 

医療物品は、先程のラダーで自身よりも下のものに触れると、清潔度が下がって相手と同じランクになってしまう。いくらアルコールで手指消毒していても、マスクに入れるために触れた時点でそのガーゼは「消毒」品質。口元をアルコール消毒する人はなかなかいないと思うので、マスクをした時点で「不潔」扱いになってしまう。せっかくいいものを買ってもあんまり意味は無い。

 

本来滅菌ガーゼというのは、傷口に当てたりパッキングする際に、病原微生物のいないこのガーゼを使って、感染の危険性を下げるというものである。使う時には滅菌した鑷子で上手いことおいて、そのままパッキングなりテーピングしてしまう*1。確かに白十字のパッケージには「マスクの当て布にも」とあるけど、それは「大は小を兼ねる」くらいの感じなので、そら使えますよね。

 

(この文章は滅菌ガーゼの方が予防にいいと思って買い込んだ人を想定して書いています。もし普通のガーゼが無くて、やむを得ずステラーゼを買ったという人であったらごめんなさい。勿論上の段落でも書いた通り、より綺麗なものなので、普通に当て布としては使えます)

 

おしまい

以上ちょっとした独り言でした。実習中オペ看さんに「不潔ですよ」と言われてすこぶるぎょっとした経験のある皆さん、仲間です。こういう記事なのでステラーゼへの商品リンクは貼りません。どうせ高いだろうし。

 

そう言えば見逃し見逃しでいたけど、皆保険制度の無いアメリカの医療の闇を突いたマイケル・ムーアのこれ、何か凄くタイムリーな気がする。

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関連:COVID-19 / 滅菌ガーゼ / マスク / 布マスク / 不織布マスク / サージカルマスク

*1:正直なことを言うと、傷口に触れない面はばしばし不潔扱いのテープで留めたりするけれど

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