ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

#Dlifeでシャーロック 『ピンク色の研究』まとめその1

今週のお題(出典探してるうちに先週になった)は「老いも若きもたのしく研究」ということで、「わたしの自由研究」だそうな。大人になって研究するなんてそんなもの……

 

ありましたわ。

dlife.disney.co.jp

実は筆者、このブログでは必死に隠していたけれど、筋金入りのホームジアーナ。現代版としてヴィクトリア朝を舞台としたドイルの原作から大きく姿を変えていても、脚本陣の原作愛とギークぶりが隠しきれない『SHERLOCK』はお気に入りドラマのひとつだ。この度、吹替版がBS無料放送局・Dlifeで放送されるということで、何度も観ているのにわくわくどきどきしてしまった。今週月曜日9月2日には、第1話『ピンク色の研究』の前編が放送されたが、それに合わせて流していた小ネタツイートをまとめておこうと思う。

——今週のお題「わたしの自由研究」※最早先週のお題

 

 

 

みんなルーが大好きでわたしは嬉しい

放送中ツイートしたら想像以上に拡散されていたのがこのツイート。もう少しで3桁いいねに達しそうだが何と3桁いいねに到達したが、ルーが大好きな筆者としては嬉しい限りである。

 

SHERLOCK』は、イギリスのご長寿ドラマ『ドクター・フー』"Doctor Who" の脚本を担当していたスティーヴン・モファットとマーク・ゲイティスのふたりが、お互いホームジアンという共通点から書き始めたドラマだ。現代版を作る上で、彼らはひとつ約束事を決めて脚本を書き始めた——それは、「原作に登場しないキャラクターは(メインとして)登場させない」ということだった。

——11代目ドクターことまっすみさんは、実はジョン役のオーディションを受けて落ちた人(本当)

 

実は『SHERLOCK』、本シリーズが作られる前に、お偉いさんに見せる用のパイロット版が1本作られている。制作されたのは同じく『ピンク色の研究』だが、尺が60分であったり、カンバーバッチとフリーマンがやたら若かったり、傘おじさんのくだりが無かったり、色んな差異があるので是非ご覧いただきたい*1。その中で、ルイーズ・ブリーリー演じるモリーは、本シリーズと同じ「シャーロックに遺体を恵んで、コーヒーを運んでくる研究員」として登場する。脚本陣はこの1シーンだけだったブリーリーの演技をいたく気に入り、約束事を曲げてモリーをメインキャラクターに据えたのである。

 

そんなモリーを演じるルイーズ・ブリーリー*2は、(イギリス演劇界あるあるだが)、ケンブリッジ大学で歴史を学んだ才女of才女である。若い頃から批評記事・取材記事を投稿するなど文筆業でも活躍しており、彼女のTwitterでは社会問題にも熱心に取り組んでいることが垣間見られる。

twitter.com

これはシーズン4微ネタバレ。→*3

 

オタクが過ぎる脚本陣、忠実すぎる設定たち

モファティス*4は本当にオタクが過ぎる。現代版として新たなシャーロック・ホームズ像を生み出しつつも、細かい設定には原作ネタを多数盛り込んでいるのだ。中には有名どころも沢山あるが、この記事では敢えてマイナーどころを紹介していきたい。

 

『緋色の研究』より、衝撃的な登場シーン

『緋色の研究』"A Study in Scarlet" と言えば、記念すべきホームズシリーズ第1作。ホームズ作品に4作しかない長編のひとつで、ワトスンとの鮮やかな出会いも描かれている。今作の大枠となった作品でもあり、シャーロックとジョンの出会いから同居に至るまでの流れは、意外に原作通り描かれているのだ。

緋色の研究 (新潮文庫)

緋色の研究 (新潮文庫)

 

——個人的には小学校にあった偕成社版が好きだけど、そこは大人しく延原訳を*5

 

 

SHERLOCK』を観ていて視聴者が大変衝撃的に思われたであろうシーンが、シャーロックの初登場シーン。モルグの死体袋から覗き上げるような構図でシャーロックが映り、そしてその後……鞭で死体をひっぱたき続けて延々と止まらない。挙げ句の果てにはモリーから「良くない日だったの?」"Bad day was it?" とか聞かれちゃうレベルである。このドラマ、シリーズを通して大変悪趣味だが、このシーンはその中でも1、2を争うものだと思う(笑)。

——因みに、ジョンが「どんなやつ?」と聞いてスタンフォードの口からシャーロック評が出てくるのも原作の筋書きをなぞっている。ふたりの持つカップには、原作でふたりが再会した「クライテリオン」(酒場)の文字が!

 

ところがこのシーン、まさかの原作踏襲である。引用元は『緋色の研究』で、スタンフォードからワトスンがホームズ評を聞いているシーン。何度読んでも酷い描写だ。まあ、正直法医学的には面白い記述ですけどね……

“Yes, but it may be pushed to excess. When it comes to beating the subjects in the dissecting-rooms with a stick, it is certainly taking rather a bizarre shape.”

“Beating the subjects!”

“Yes, to verify how far bruises may be produced after death. I saw him at it with my own eyes.”

(拙訳:[スタンフォード]「そうだが、ちょっと極端すぎるかもしれんよ。解剖室の中で杖を使って遺体を打ち続けるとなると、確かに奇妙なやつだと思える」

[ワトスン]「死体を打つだって!」

[スタンフォード]「そうさ、死後どれくらいまでなら痣が出来るか確かめるためにってね。彼のそんな姿をこの目で見たよ」)

 

アフガン戦争に従軍したジョン・ワトスン

ワトスンの従軍歴については『緋色の研究』でも触れられており、戦地で負傷してロンドンに戻ってきた設定となっている。

 

シャーロックはジョンの足の悪さを即座に心因性と見抜く。その理由は以下のツイートの通り。『緋色の研究』では肩を負傷したことになっているが(原文で読むシャーロック・ホームズ)、次の『四つの署名』では足にすり替わっている。この辺の議論はこちらのページに詳しい。☞「8、ワトスンの負傷

 

「床掃除」ネタも原作踏襲

現場に到着するなりサリーとアンダーソンの制汗剤の匂いを嗅ぎ取って、それとは気付かずふたりの不倫を言い当てるシャーロック。このネタはシリーズを通してモファティスがぶっ込みまくっている「シャーロック=ヴァージン」ネタのひとつだが*6、実は原作ネタという憎い演出である。ネタ元は『赤髪連盟』とだけ申し上げておきます。

 

 『這う男』の「ツゴウガヨケレバスグコイ ワルクトモスグコイ」は名訳だと思います。

 

そう言えば関係無いけど、パイロット版久々に見返したらアンダーソン(演:ジョナサン・アリス)は大変もっはもっはだった。

 

現代版オリジナル設定

ホームジアーナの密かな叫び

これだけは知っておいていただきたい豆知識である。何か『SHERLOCK』大ヒット以来、原作のホームズとワトスンを「シャーロック」「ジョン」呼びする人が増えたように思うけど、(兄マイクロフトが登場する前者はさておき)、やっぱりワトスンのことはワトスンと呼んでいただきたいなあと思う限りである。

 

というわけで、S4E0『忌まわしき花嫁』でもちゃんと「ホームズ」「ワトスン」呼びをしている。

www.youtube.com - 忌嫁、嫌いじゃないけどS3まで観ないと意味分からないエピソードなんだよな

 

俳優陣裏話

カンバーバッチの嘆き

カンバーバッチがこの話をしていたのは確実にどこかのエピソードのコメンタリーなのだけど、コメンタリーを回す時間がなくて正解がよく分からない。S1だとしたら最終話『大いなるゲーム』"The Great Game" かなあ。是非円盤を買ってご確認ください。

(高いのばっかり貼って申し訳無いけど、廉価版のプチボックスにはコメンタリー入ってないんだもの!)

 

脚本も演技もこなすマーク・ゲイティス

敢えてここでは何の役か書いてないのですが、エンドロールで役名確認してね。ゲイティスの役はパイロット版には未登場だったもの。正規シリーズ化にあたり、尺が60分☞90分に変更されたがために登場した役である。いやああの登場も演出も大好きです。

 

レストレードには勿体ない傾国の美男子ルパート・グレイヴス

レストレードは原作で「イタチみたいな男」扱いされているが、グレイヴスは全くそんなことない。『モーリス』に出演した時以来、美男子のまんまである。シルバーヘアも自然で大変宜しい。

mice-cinemanami.hatenablog.com

ところで主演ふたりは、何故か「カワウソ」と「ハリネズミ」にそっくりだとしてインターネットミームになっている。マーティン・フリーマンと言えばハリネズミハリネズミと言えばマーティン・フリーマン。本名はまーてぃん・ましゅまろ・へっじほっぐ・ふりーまんである*7。イギリスの人気番組『グレアム・ノートン・ショー』"Graham Norton Show"でも特集されるくらい。何なら当時のパートナーだったアマンダ・アビントンから「ファンがこう言ってるけど」と言われて、対抗して「冬眠するみたいに体を丸め」出しちゃうくらい*8

www.youtube.com

さっきの動画でもちらっと出て来てるけど、カンバーバッチがカワウソに似てるというのも有名なミーム。同じく『グレアム・ノートン・ショー』でカワウソ写真再現動画を撮らされているのでこちらもどうぞ。最後、巨大なクマちゃんに腹パンするカンバーバッチだが、あまりにエキサイティング過ぎてジョニデに引かれてるのはご愛敬である*9

 

www.youtube.com

もっとSHERLOCKを知りたくなった人向け

制作の裏話や、原作ネタなどをふんだんに収録した公式ブックが早川書房から発売中。重量感があるが、ファンにとっては値段だけの価値は確実にあるのでお買い求めを。今回の記事の元ネタも実はここからが多い。

シャーロック・クロニクル

シャーロック・クロニクル

 

 

また、全4シーズンをまとめたボックスが発売されているので、こちらもどうぞ。(ちょっとお高いけどね……)

 

これを期に原作を読んでみたいと思った人は、まずは第1作で第1話の原案ともなった『緋色の研究』からどうぞ。ドラマ本編では省かれていたが、原作には現代なら決して書けない裏筋書きがあり、第2部として展開されている。

緋色の研究 (新潮文庫)

緋色の研究 (新潮文庫)

 
緋色の研究  シャーロック=ホームズ全集 (1)

緋色の研究 シャーロック=ホームズ全集 (1)

 

 

ツイートは大体半分くらいご紹介したので、残りは次の記事にしたいと思います。

 

関連:SHERLOCK / シャーロック・ホームズ / ジョン・H・ワトスン / マイクロフト・ホームズ / ベネディクト・カンバーバッチ / マーティン・フリーマン / ルイーズ・ブリーリー / ユーナ・スタッブス / ルパート・グレイヴス / ジョナサン・アリス / ヴィネット・ロビンソン / ポール・マクギガン / スー・ヴァーチュー / ベリル・ヴァーチュー / スティーヴン・モファット / マーク・ゲイティス / BBC

*1:パイロット版はシーズン1のボックスの特典として収録。セットも多少チープだったりして大分面白い

*2:Louise Brealey。彼女の愛称が"Loo"(ルー)。彼女がこだわって投稿している通り、"Lou"でなくて"Loo"である

*3:そんなモリーちゃんの扱いがS4では大分雑だと批判の種に。実際にS4E3『最後の問題』の展開にはブリーリーも1度難色を示し、脚本が書き換えられたほどであった。完成版についてブリーリーは好意的に捉えているようだが、S5を作るのなら脚本陣には1度反省していただきたいものである。筆者もちょっと憤っている

www.independent.co.uk

*4:ティーヴン・モファットとマーク・ゲイティスの名字を縮めた日本での愛称

*5:ホームズ作品と言えば、熱心なファンことホームジアンが多いこと、また既に一種の「古典」と化していることから、多くの翻訳者によって訳されていることでも有名。訳者によって言葉の選び方や登場人物の話し方にも色があって大変面白い。オタクになってきたら読み比べも是非……!

*6:もうひとつ「シャーロックとジョンはデキてる」ネタも大量にぶっ込まれているが、ジョンがいちいち否定しているのもちゃんと見ておきたいところである

*7:本当はMartin John Christopher Freemanです

*8:ソースのアカウントも魚拓も何か見つからないけど、筆者もスクショ持ってるし、実話です

www.reddit.com

*9:この出演はふたりが共演した『ブラック・スキャンダル』の番宣☞

 

Live Moon ブログパーツ