ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

首里城だけじゃない、琉球文化を学べる施設 - 沖縄観光の助けに

首里城火災のニュースがあって、在りし日の様子をブログでまとめてみた。地元の人たちの悲痛な声が溢れていたのは言うまでもないが、ネット上では沖縄を訪れたのに火事があって首里城を観に行けなかった、という人の声も散見された。国営公園は休園しており(首里城公園プレスリリース)、守礼門・歓会門までしか入れないという(同じ方のツイートによれば、県で管理している円覚寺跡も立ち入りが規制されているという)。これだけの被害があれば当然のことではあるが、観光で訪れていた方には落胆も大きいと思う。そんな方のために(?)、文化の日特別企画*1として琉球文化を学べる施設を勝手にご紹介したい。

mice-cinemanami.hatenablog.com

 

 

那覇市

おもろまち沖縄県立博物館・美術館(おきみゅー)

——Twitterの文字数制限のせいで若干文章が不謹慎なのは許して

 

皆さんにお勧めしたいのはおもろまちにある沖縄県立博物館・美術館(愛称:おきみゅー)。旧博物館と美術館を合わせて移転新築した建物で、開館12年あまりになる。博物館側は2017年現在で94,000点の資料を所蔵しており自然史から琉球史・民俗史に至るまで、沖縄の様々な側面を切り取った展示がなされている。筆者の記憶が正しければ、首里城の展示の中には、本物がこの沖縄県立博物館に収蔵されており、首里城ではレプリカ展示だったものもいくつかあったように思う。実際、有料エリアすぐ手前に展示されている万国津梁の鐘は、この博物館に展示されているものこそが本物で、首里城公園にあるものはレプリカである。いずれにしろ、県立博物館は現在の沖縄に至る歴史を辿れる文化財を所蔵する県内最大の施設なので、是非足をお運びいただきたい。

 

11月19日からは世界遺産登録20周年を記念して特別展も開催予定! 普通にこれ行きたい。行けないのがしんどい。

okimu.jp

筆者のツイートでも示した通り、おもろまちに位置するおきみゅーへは、ゆいレールおもろまち駅で下車して徒歩10分ほど。最寄り駅は国際通りの端に当たる県庁前駅と、首里城に程近い首里駅*2の丁度中間くらいに当たるので、是非ふらっとお散歩へ!

okinawa-labo.com

県庁前:那覇市歴史博物館

 

もうひとつ筆者がお勧めしたいのが県庁近くにある那覇市歴史博物館。那覇市琉球王国の王家だった尚家から多数の貴重文化財の寄贈を受けており、それらが「国宝・琉球国王尚家関係資料」として収蔵されている。また、沖縄出身初の大臣経験者にして、伊江御殿家出身でもある伊江朝雄氏が管理してきた資料の寄託を受け、「伊江御殿家関係資料」として管理している。本年3月には後者が国の重要文化財にも指定された。

www.city.naha.okinawa.jp - 那覇市のプレスリリース、挨拶が沖縄方言なの何かいい

この博物館の凄いところは、そんな収蔵物をデジタルミュージアムとして惜しげもなく公開しているところだ。紅型とか見ているだけでも美しい。全国各地の博物館でこういう取り組みを行ってほしい。おまけに那覇市内の史跡をまとめたページまで作ってくれている。何から何まで太っ腹過ぎる。

www.rekishi-archive.city.naha.okinawa.jp

 

そう言えば大変タイムリーに、11月1日から2週間限定で琉球王国の王冠が実物展示されている様子。大変貴重すぎるし、観に行ける方は是非観に行ってほしい。

www.rekishi-archive.city.naha.okinawa.jp - 何それ、そんなおいしい展示わたしも観たい……

場所はゆいレール県庁前駅直結のパレットくもじ4階。アクセス抜群なので是非お立ち寄りを。

 

牧志:壺屋やちむん通り

最後は博物館ではなくて、ふらっとお散歩できる壺屋のお話。現在絶賛建て替え中の牧志公設市場から徒歩で10分くらいのところにある。壺屋には焼き物屋が多く軒を構えており、「壺屋やちむん通り」という名前は、沖縄方言で「焼き物」を意味する「やちむん」の名が冠されたものだ。石畳でほどよいアップダウンのある道で、朝誰もいないうちにお散歩するのも大変気持ちいい。途中には有形文化財である登り窯・南窯(ふぇーぬかま)もある。通りの店を覗くと、沖縄らしくシーサーをメインにしていたり、沖縄独特の焼き方で日常食器を焼いていたりと、各店少しずつ個性が出ていて、その辺りも面白い。

tsuboya-yachimundori.com

通りにある那覇市立壺屋焼物博物館では、沖縄の焼き物の歴史がまとめられているほか、この場所から発掘されたという「ニシヌ窯」が移築展示されている。入口こそこじんまりとした見た目だが、充実した展示のようなので*3こちらもご覧いただきたい。

www.edu.city.naha.okinawa.jp

また、牧志から壺屋へ向かう道の近くにあるてんぶす那覇には、那覇市伝統工芸館が位置している。沖縄の伝統工芸を展示するだけでなく、紅型、琉球硝子、壺屋焼き、首里織琉球漆器の体験ができるコーナーもあるようだ!

kogeikan.jp

壺屋やちむん通り・那覇市立壺屋焼物博物館、那覇市伝統工芸館ともに、最寄りのゆいレール駅は牧志駅牧志公設市場へお散歩がてらてくてく歩いていただきたいと思う。

 

識名園(しきなえん)

首里城から南へ2kmほどの場所にある識名園は、元々王家の別邸として作られた庭園。沖縄戦の被害を受けたが修復され、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」としてユネスコ世界文化遺産へ登録されたうちのひとつとなっている。中国式と日本式の良さを少しずつ取り入れた設計は、琉球が時代に翻弄されながらも賢く生き残ってきたことを思わせる。筆者もまた生きたいなあと思う場所である。

www.city.naha.okinawa.jp

okinawa-labo.com

 

北部に向かって進路を取れ

今帰仁城

琉球王国のグスク及び関連遺産群」として登録された城(グスク)跡は、首里城跡の他に今帰仁城跡、座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡である*4。そのうち最も北に位置する今帰仁城は、琉球王国統一前にこの地域を治めていた北山王の居城であり、石垣マニアの筆者垂涎のお城である。

 

駐車場から城郭に至るまでには、石畳の道の両脇にカンヒザクラが植えられ、1月に見頃を迎える。毎年今帰仁グスクサクラまつりも開かれ、カンヒザクラの名所としても知られる名城だ。

www.nakijinson.jp

 

前の記事でも書いた通り、筆者は本土の城とは全く違う進化を遂げた沖縄の城の石組みが大好きだが、中でも今帰仁の石垣は曲線美と雄大さを兼ね備えた素晴らしいものである。上に建物を復元した首里城とは違い、建物がない分石垣だけを堪能できる素晴らしさもあるし、ごつごつとした岩肌がむき出しの石垣は雄々しさも兼ね備える。観てよこの美しさ。崖を活かした城作りも見事過ぎる。元あった建物の遺構については、杭だけが立てられて観る者の想像力に任せるようになっているが、それも素晴らしい。正直言って今まで観た城の中でトップ3に入るくらい好きである。

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今帰仁城跡(2015年撮影)

何故筆者が今帰仁を推すかというと、今帰仁村本部町に隣接しているから。本部町には大人気の美ら海水族館などを擁する海洋博公園があり、帰りにふらっと寄るにも丁度良い距離である。那覇からは車が無いとしんどい距離ではあるが、せっかくレンタカーを借りるならば、そのついでに今帰仁にも足を運んでいただきたいものである。

 

【追記】おきなわ郷土村 おもろ植物園

何としてでも文化の日に投稿したかったので、途中で無理矢理投稿してしまったが、もうひとつご紹介したいのが海洋博公園の中に位置する「おきなわ郷土村 おもろ植物園」。敷地内には沖縄の伝統的な民家や生活施設が移築されている。島国の沖縄は、同じ琉球という国であっても、島毎に独自の発展を遂げていて、その建築にも当然少しずつ違いがある。この施設では、地元・本部だけでなく、与那国や奄美の民家なども移築されていて、その違いを楽しむこともできる。

oki-park.jp

海洋博公園内に位置するおきなわ郷土村・おもろ植物園は入場無料。広い園内を移動するにはリフト付き遊覧車か電気遊覧車が便利だ。1回100円・1日回数券200円なので、遊覧車に乗ってゆっくり向かってみてもよいかもしれない。そう言えば前の記事で取り上げた建設会社・国建のウェブサイトに、海洋博公園整備の歴史についても掲載されているので、こちらも合わせてご覧いただきたい。

www.kuniken.co.jp

 

おしまい

この記事ではせかせかと琉球文化を学べる施設をご紹介してきた。せっかく長旅で沖縄に行くのだから、本土とは全く違う進化を辿ってきた琉球の文化・歴史に是非触れてきていただきたい。まあ、何が言いたいかと言えば、みんな沖縄に行って沢山お金落として楽しんでこようぜえ! それこそ再建の近道だし、琉球文化の理解にも繋がるしで一石二鳥! 以上!

るるぶ沖縄ドライブ'20 (るるぶ情報版地域)

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沖縄 完全版2020 (JTBのMOOK)

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ことりっぷ 沖縄 (旅行ガイド)

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まっぷる 沖縄 慶良間諸島'20 (マップルマガジン 沖縄 1)

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——ガイドブック並べてるだけで行きたくなってきたぞ☆

関連:首里城 / 沖縄 / 那覇 / 文化の日

*1:文化の日は日本各地の博物館・美術館の常設展チケットが無料になることでも有名だが、まあ、何というか、こういう記事を文化の日に出してる時点でダメ。

*2:ついうっかり終点と書きそうになったけれど、そう言えばゆいレールは10月半ばに浦添まで延伸したんだった!

www.sankei.com

*3:何故伝聞形かというと、さっきちらっと言った通り、筆者は朝早くにお散歩してしまったので、入ったことがないのである

*4:これに加えて首里城公園内の園比屋武御嶽石門と玉陵、斎場御嶽が登録対象。斎場御嶽はいつか行ってみたい場所のひとつだが、世界遺産登録後来訪者が急増し、マナー悪化も問題となって、休息日を設ける案まで出てしまった(実際2012年より年2回の休息日が設けられている)。

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