今日こそ延々書いてきた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の話も終わりである。
何だか知らないけれど6記事も書いていた。大部分、原因がマッゼロさんの悪ふざけな気もするが気のせいとしておこう。
mice-cinemanami.hatenablog.com
そもそもわたしがクイーンを聴くきっかけになったのは、やっぱり映画である。前の記事で書いた通り、「CMや別映画で使われていた曲がいいなあ、と思っていたら、何故だかそういう曲は我が家の超絶偏向プレイリストに入っていた」のが聴き始めたきっかけだった。というわけで、この記事ではわたしとクイーンの出会いを振り返りつつ、彼らの曲が効果的に使われている映画を紹介したい。
ところで使われているシーンについてネタバレありで語るので、読みたくない人は目次で作品だけ読んで、「最後に」まで飛んでほしい。
- BBC One『SHERLOCK』S4 - 13. "I Want To Break Free"
- 『ショーン・オブ・ザ・デッド』 - 21. "Don’t Stop Me Now"
- 『ムーラン・ルージュ!』 - 22. "The Show Must Go On"
- 最後に
!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
因みに大見出しのトラック番号は、映画『ボヘミアン・ラプソディ』のサウンドトラックに対応している。是非どうぞ。
ほんとにナチュラルにネタバレるので、情報シャットアウトしたい人は帰った方がいいと思いますよ?
BBC One『SHERLOCK』S4 - 13. "I Want To Break Free"
わたしを英国沼に引きずり下ろしたBBC Oneの傑作ドラマ『SHERLOCK』。2017年に放送された第4シーズン*1では、死んだ筈のモリアーティの帰還がティーザーで明かされ、大きな話題となった。
そんなモリアーティがヘリで帰還するシーン*2で聴いているのが、この"I Want To Break Free"(邦題:『ブレイク・フリー(自由への旅立ち』)である。歌詞まで読むと、なかなかにメタファーの効いた良演出にもなっていることが分かる*3。
なかなか日本放送の噂が出ない上にメアリー役のアマンダ・アビントンをフォローしていたら思いっきりネタバレかましてくるので*4、筆者は遂に禁断のPAL-UK版に手を伸ばすことになった。英語字幕で何とか観ていたら第3話で突然のクイーンである。何かもう笑うしかなかった*5。
で、勢いで色々調べてるうちに、このPVに辿り着いてしまった。何じゃこりゃあ。完全にモンティ・パイソンだろ。
嘘だと思ったらこの辺をチェックしてほしい。PVの始まり方もパイソンっぽいでしょ?
youtu.be - これはテレビシリーズ版。アイドルがとっても麗しい。その後住宅街が映るところもそっくり
www.youtube.com - 有名な「ペンギン爆発」。博士は怒りそうだね(笑)
1本目の「地獄のバアさんグレバッバ族」("Hell's Grannies")では、当時のイギリスのおばあちゃんたちが着ていた服装が再現されている。PVでジョン・ディーコンが着ている服はこれだ。彼は偏屈そうなばあさんの表情まで凝っている(笑)。
2本目の「ペンギン爆発」はパイソンズの代名詞とも言える「ペッパーポット」*6。PVでカーラーぐるぐる巻にしてるメイは、「ペッパーポット」と同じ中流階級のおばちゃんに扮している。博士、高学歴なのも一緒だし*7、普通にパイソンに出てそうな出来だ*8。
フレディのことは放っとくとして(多分この家族構成から考えると姉娘だが)*9、問題はロジャーである。どっからどう見ても可愛い女子高生じゃないか!
・出典:英語版Wikipedia
そもそもこのPVは、ロジャーの発案で女装パートを撮ることになったらしい。本番では黒ブラを付けてたとか(少なくとも黒タイツを履いてるのはほんとだ)、妬かせようとして監督といちゃついたとか、発案だけじゃなく本番でもノリノリだったらしい逸話もあったりなかったり。ところでこの時ロジャ子は34歳である。
ネタ元はパイソンズではなく、ITVのソープオペラ『コロネーション・ストリート』"Coronation Street"だというが(どうやら格好もそのキャラクターに合わせているらしい)、背の高いおっさんたちが可愛く化けているのでパイソンズみを強く感じるのも当然だろう。映画でもこのシーンはちゃんと再現されていたのでにやっとしてしまった。そう言えばスクリーンXではサイドスクリーンにベンハくん演じるロジャーが映るらしい!楽しそうだから1度観てみたいなあ。
I Want to Break Freeの女装撮ってるとこ、後ろの3人はほとんど映らないじゃないですか。#スクリーンX だと、横のサブスクリーンにメンバー全員アップで映ってきたりすんですよ #ボヘミアンラプソディ
— がぶろす (@gaburi54ce) November 27, 2018
20181210追記 - 因みにスクリーンXではこんな感じになるらしい!
スクリーンXだとボヘミアンラプソディがこんなイメージで見えるよ!!っていう動画あった!!https://t.co/3xJTTvGFJj
— せり (@cerriiee) December 10, 2018
このPVで大笑いしたことが、ある意味にわかクイーンマニアへの道を開いたのかもしれない。ま、笑って正解のものだとも思うが……
そう言えば一時期販売停止になっていた公式の謎解きアプリが復活していたと噂なので、是非ダウンロードしてほしい。¥480出せばフルパックの謎が解けるし、無料でも確か3題までは解けるはずだ。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』 - 21. "Don’t Stop Me Now"
サントラの最後2曲はエンドロール使用曲だ*10。どちらも個人的に大好きな曲で、下手の横好きなカラオケで歌うくらいなオールタイムベストの一角でもある。そんな"Don’t Stop Me Now"が使われているのが、2004年公開の映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』"Shaun of The Dead"だ。
この作品は、サイモン・ペグ、ニック・フロスト、エドガー・ライトがタッグで送る「スリー・フレーバー・コルネット」3部作(Wikipedia)の1作目*11。主人公ショーンは、彼女のリズがいながら毎日パブで悪友エドと飲み明かすクズ人間だが、リズが彼を見限った翌朝、突如ロンドン中にゾンビが溢れて大騒ぎとなる。リズに未練たらたらのショーンは、何とか彼女(と自分の母親)を救って生き延びようと考えるのだが、そのための避難場所として選ぶのは、——何といつも呑んだくれてるパブのウィンチェスターなのである(ダメだこりゃ)。
終盤、何とかウィンチェスターに辿り着いた一行は、これでもう安心だと思い込むのだが——この後、彼らは「絶対に手を止めてはならない」窮地に追い込まれ、そんな時にこの曲が流れるのだ。このシーンは終盤のハイライトなので、是非実際に観てほしいと思う。改めて見てみたら、結構曲とぴったり合わせて演出されていて面白かった。
映画では更に、ジョン・ディーコンが手掛けたあの名曲『マイ・ベスト・フレンド』 "You're My Best Friend"も使われている。ディーコンから妻へのラブソングだったことは有名だが、映画では文字通り友情を歌う歌として効果的に使われているのでここも見どころである。
ところで、この映画を撮影したエドガー・ライトは、映画『ベイビー・ドライバー』"Baby Driver"も手掛けた音楽ギーク監督だ。こちらでも例に漏れずクイーンが使われているので是非チェックしてほしい(使用曲は"Brighton Rock")。
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ちょっと寄り道して
この曲を聴いたら紹介せずにはいられないのがあれである。
youtu.beジミー・ファロンの『トゥナイト・ショー』の人気企画、リップシンクバトル。そこでこの曲を選び、神回とも言えるパフォーマンスを披露したのが、MCUのアントマンことポール・ラッドである。「熱唱」(?)も大熱唱、ちょこちょこカメラを意識したパフォーマンスで笑わせにくる。流石はアントマンだ。
筆者はMCUの中ではGotG、特にスター・ロードが好きで、他にもデップーなどおちゃらけ路線の方が好きなのだが、その流れでアントマンもお気に入りのひとり。あっ勿論エヴェレット・ロスさんも好きですけどね?*12そう言えば先日第1弾トレイラーが発表された『アベンジャーズ:エンドゲーム』"Avengers: End Game"でアントマンは重大な役割を担うようだ。ついでに映画もチェックしてほしい。GotGとアントマンとデップーだけでいいので。
あとついでに推しのエマ嬢の名演もステマしておこう☞
『ムーラン・ルージュ!』 - 22. "The Show Must Go On"
エンドロール2曲目は、フレディが死ぬ直前に制作された事実上の最終アルバム『イニュエンドウ』"Innuendo"収録の『ショー・マスト・ゴー・オン』"The Show Must Go On"。筆者にとっては1番好きなクイーンの曲であり、個人的には羽生結弦引退シーズンのフリーに選んでほしいと公言し続けている作品である*13。
歌詞の内容としては、「ショーは進まなくちゃいけない、だから化粧がひび割れても笑顔を絶やさないんだ」というプロ意識の塊とも言える曲。死の直前とは思えないほど力強い声で、だからこそ余計に悲しさが募る作品でもある。最期の瞬間までエンターテイナーでいようとしたフレディの覚悟が滲んでいて、聴く度胸が詰まる思いである。これを最後に使うのは大正解でしかない。
www.youtube.comPVはフレディの体調がかなり悪化していて撮り下ろすことができず、過去のPV映像を切り貼りしている*14。音楽と変わり目が微妙に合っていないのが勿体ないが、そのくらい彼の病状は悪化していたのだ。ところで『ブレイク・フリー』のワンシーンがかなり繰り返して使われている。
この曲に登場人物の運命を重ね合わせるのが2001年のバズ・ラーマン映画、『ムーラン・ルージュ』"Moulin Rouge!"。ニコール・キッドマンとユアン・マクレガーを主演に据え、数々のヒット曲をカバーしてふんだんに盛り込んだ作品である。トレイラーは何か見つけられなかったので、代わりにテサモワの名演を貼っておく(このヴァーチュー、ちゃんと劇中のサティーンが施す化粧を真似ていて、キッドマンそっくりだ)。
この映画で"The Show Must Go On"を歌うのは、英国を代表する俳優でもあるジム・ブロードベント。『トプシー・ターヴィー』などで知られるが、筆者としてはハリポタのスラグホーン先生のイメージもまあまあ強い。尚コルネット3部作の『ホット・ファズ』"Hot Fuzz"では第1作を観て出演しなかったことを後悔し(ry
よしなはなしはさておき、ブロードベント演じるジドラーは、恋に溺れゆく高級娼婦サティーン(キッドマン)に対し、雇い主の立場として、仕事に集中するよう諭すところでこの曲を歌う。ところがサティーンは、(冒頭でしっかり明示してあるのでネタバレでも何でもないと思うが)死にゆく運命にあり、このダブル・ミーニングは悲劇をこれでもかと演出する名シーンとなっている。
この作品では、『アンダー・プレッシャー』"Under Pressure"でクイーンと共作したデヴィッド・ボウイがナット・キング・コールの『ネイチャー・ボーイ』"Nature Boy"をカバーしている。また同じくバイセクシュアルでフレディと深い交友もあった、エルトン・ジョンの『僕の歌は君の歌』"Your Song"もカバーで使われている。ほんとにいい曲ばっかり使われているのでチェックしてほしい。日本語字幕が戸田奈津子女史なのだけが玉に瑕だが*15。
最後に
と言う訳で本記事では、わたしのにわかファンへの道を開いた映画・ドラマをご紹介した。これ以外にも古今東西の映画やドラマ、CMで使われているので、『ボヘミアン・ラプソディ』でどっぷり沼に嵌まり込んだ皆さんは、そういう切り口で次の映画を探してみてもいいのかもしれない。
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そう言えば来年の1月いっぱいカラオケで特別映像バックに歌えるらしいぞ。
関連:SHERLOCK / ショーン・オブ・ザ・デッド / ムーラン・ルージュ / ボヘミアン・ラプソディ
*1:正確にはこの前のスペシャル『忌まわしき花嫁』"Abominable Bride"で明かされている。日本では2016年2月公開。
*2:因みにこのGIFはGIPHYから取ってきたが、ここにはSHERLOCK公式アカウントもあったりして意外と福利厚生が手篤い。もうちょっとコンスタントに作品が出れば言うことなしなんだけどね……?(みんな売れっ子になっちゃったししょうがない!)
*3:そう言えばジムモリの着信音、ビージーズの"Stayn' Alive"だったよね(これ以上言うとネタバレるので自重)✩
*4:アマンダのこれは流石に色々と物議を醸していた。生放送観るのはいいけど、ワールドワイドな人気があるし、当然海外での放送は本国より遅れるのだから、実況はやっぱダメだよね
*5:その後我が家のプレイリスト観てたら入ってたのでもっと笑った。何でワークスのこれとレディオガガと悲しき世界だけ入ってるんだよ。つくづくよく分からないプレイリストである。ううむ……
*6:キンキン声で喋るおばちゃんたち。メンバーの母親たちがモデルと言われる。多分(テリーGを除いて)全員1度は扮していると思うのだが、結構5者5様で面白い。ところでグレアムの足、ほんと綺麗だねえ……
*7:パイソンズはアメリカ人のテリーGを除いて、全員がオックスブリッジ卒だ
*8:ところで、映画でも話題になった「マイアミ・ビーチ」氏ことジム・ビーチ氏は、何とパイソンズのマネージャーでもあった。奇妙な偶然だなあ。
*9:ところで、この曲は圧政に苦しんでいた世界各地で、自由への賛歌として大絶賛されたらしいが、フレディのこの格好そのものは大不評だったようである(笑)。実際アルゼンチンかどこかの公演で、彼がこの格好をして出て行ったら、観客は喜ぶどころかブーイングを浴びせてきた、という話が『今日は一日"クイーン"三昧』でも取り上げられていた(時間としては和久井氏の「マニアッククイーン」のところ)。
*10:ボラプの話をちょっとするが、ここで使うことで、人生をここで止めないでくれ、駆け抜けさせてくれ、というフレディのメッセージにも聞こえてくるので感慨深い。映画では、ライヴ・エイドの直前、HIV感染を打ち明けたフレディからメンバーに「病気であるからと言って遠慮はしないでほしい」と伝えられるのだが、その言葉がこの曲で強化されるようにも思う。
*11:ところでこの3部作にビル・ナイと並んで皆勤賞出演しているのが、『SHERLOCK』でわたしを沼に引き込んだマーティン・フリーマンである。この話はまたどこかで
*12:どうでもいいけど、この動画で「いえーいぼくブルックスブラザーズマン」ってはしゃぐマーティン可愛すぎか。
*13:勿論まだまだ先であってほしいけれど。そう言えばプリンスで滑ってたんだからクイーンでもいいよね?
*14:彼の病状が悪化しているのは、『輝ける日々』のPV(Queen - These Are The Days Of Our Lives (Official Video) - YouTube )、『狂気への序曲』のPV(Queen - I'm Going Slightly Mad (Official Video) - YouTube )などで見て取ることができる。この2本で白黒映像が使われたのは勿論病状を隠す(誤魔化す)ためだし、『狂気への序曲』でバートン映画のジョニデみたいな化粧をしているのも同じ理由だ
*15:戸田女史の『僕の歌は君の歌』の訳、結構ばっさり切り捨ててるので、改めて歌詞を読むとほええと思ってしまう。他にも"Come What May"の訳なんかもかなりあっさりしていた印象