家にいるのに映画のひとつも観ないで過ごしているのが憎らしくなってきたので、映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』('18)を観た。筋ジスを患いながら病院生活を厭い、大勢のボランティアを囲って自立生活を送った鹿野靖明という人物の伝記物である。わがまま放題に生きる鹿野を演じるのは、同じ北海道出身の大泉洋。……これがまあ、彼を知る人物ならよく分かるだろうが、彼以外に誰がいるのというくらいの適役だった、というお話。
——お題「#おうち時間」
- 背景:筋ジスなんか関係あるか、わがまま放題で生きろ
- あらすじ (ネタバレなし)
- 主演陣に、言うことはなし
- 大泉洋以外に適役が見当たらない
- 若手名優の代表株がカップル役で共演
- わがままな息子に、湿っぽくない母
- 障害者だからって、鬱屈として生きなくても
- 佐藤浩市の友情出演は、そういうわけか
- おしまい
背景:筋ジスなんか関係あるか、わがまま放題で生きろ
この作品はまず、実話をベースにした作品である。この映画の原作となったのは、2003年に渡辺一史が出版したノンフィクションだ。鹿野は筋ジストロフィーを患い、移動にも電動車椅子が欠かせないながら、多数のボランティアを囲って自立生活を営んだ。渡辺は鹿野本人とその周りにいた人々を実際に取材してこの本を書いたという。残念なことに鹿野は本の上梓を待たずに前年に亡くなっていたが、渡辺の他に、鹿野のボランティアとして働いていた人々も、折に触れ鹿野の母の元へ集まって交流しているという。現在は文春文庫で読むことができる。
webronza.asahi.com
ちなみに鹿野のアパート場面の撮影は、実際に彼が住んでいた団地で行われたそうだ。すごい。
www.athome.co.jp
「こんな夜更けにバナナかよ」という強烈なタイトル通り、実際の鹿野も大変わがまま放題な人間だったようだ。この本のタイトルは、鹿野に言いつけられたボランティアの心へ実際に浮かんだ台詞なのだというから、その辺りはお察しである。そんなわがまま放題、ゴーイング・マイ・ウェイな彼の役には、同じ北海道出身の大泉洋が当てられた。……言うまでもなく、適役中の適役である。
あらすじ (ネタバレなし)
ケーキ屋でアルバイトとして働く安堂美咲(演:高畑充希)は、彼氏の医大生・田中(演:三浦春馬)に連れられて、彼がボランティアで訪れる鹿野靖明(演:大泉洋)の家に行く。筋ジスを患う鹿野は、誰かの介助無しには生活できないが、根っからの病院嫌いが元で、「ボラ」と呼ぶ多くのボランティアに身の回りの世話をさせて生活していた。単に介助されるだけでなく、常にわがまま放題な指令を飛ばしてくる鹿野に、彼氏についてきただけの美咲は当初反感を抱く。しかしながら、気付けば美咲は鹿野のボランティアにのめり込んでいき、反対に田中は自分の医師としての素質に疑問を抱くようになっていったのだった。ふたりが鹿野を挟んですれ違っていく中、突然鹿野が倒れて生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされ……
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