ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

ぼくはあらいぐまロケットちゃん - 映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』(GotG3)

※この記事はGotG3公開直後にかなりの割合を書き上げていたが、あともう少しを完成させる気力がなく年を越してしまったものである。奇しくも今年はGotGの公開から10年、一年の計は元旦にありということで、何とか完成させてシェアしておく。

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ジェームズ・ガンが心血を注いで完成させたGotG3、もとい映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』"Guardians of the Galaxy: Volume 3" ('23)を観てきた。降板騒動を経て、一時はシリーズ制作がどうなることやらと思わされたが、戻ってきた末のガンが完成させたのは、自分の分身と語るロケットを話の中心に据えた、ひどくパーソナルな物語だった。映画界の父的存在であるマイケル・ルーカー(ヨンドゥ役)の退場後、ガンはどのような物語を作るのだろうと思ったが、結果としてはそういう喪失感もキャラクターに含められていた。

www.youtube.com - 日本語版はこちら(ディズニー公式)

 

以下、シリーズはGotGと略する。

 

ネタバレないあらすじ

ピーター・クィル/スター・ロード(演:クリス・プラット)がガモーラ(演:ゾーイ・サルダナ)を失った喪失感に打ちひしがれる中、ロケット(声:ブラッドリー・クーパー)をはじめとしたガーディアンズのメンバーは、ヨンドゥ(演:マイケル・ルーカー)亡き後の部隊を引き取って共闘していた。ある日、突然本拠地ノーウェアに現れた金ぴかの男アダム・ウォーロック(演:ウィル・ポールター)により、ロケットが瀕死の重傷を負ってしまう。改造実験の技術を守るため、ロケットの治療技術はオルゴ・コープと呼ばれる実験施設に隠されており、仲間を救うために駆け出したガーディアンズたちは、ロケットの過去を知ることになるのだった……

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  • ネタバレないあらすじ
  • ロケットはガンの分身
  • はじかれものだって集まれば強いんだぞ
    • ぼくはあらいぐまロケットちゃん
  • 間違ってもやり直せばいいさ、ウォーロック
  • GotGらしいコメディシーン
  • "クィルは帰ってくる"が、他の人はそうとは限らない
  • おしまい

 

!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!

※この先にはGotGシリーズ各作品に触れるネタバレがあります※

 

ロケットはガンの分身

第3弾の制作に紆余曲折あった中で、ジェームズ・ガンは3部作を上手くまとめたと思う。第1弾で荒くれ共の大集合、第2弾で父子関係を描いた中で、第3作に据えられたのはアライグマに改造されたロケットの哀しい過去であった。ガンは以前から「ロケットの人生は自分のもの」と公言しており、今まで誰に対しても内面を隠してきたロケットの過去を描くということは、ガン自身の自分語りも含まれるということである。

思えばガーディアンズたちの過去は大抵が既出であったが(クィルはGotG1/2、ガモーラとネビュラはGotG1とアベンジャーズEG/IW、ドラックスはGotG1、マンティスはGotG2)、ロケットの過去については人体実験の結果この姿になったようなことのみが明かされていた。どう見てもアライグマ姿ながら、アライグマの「ア」の字が出るだけで怒り始めるので、結局何があったのかは分からずじまいだったのである。

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よくも悪くも比較される2つの大河ドラマ - 『鎌倉殿の13人』vs.『どうする家康』

本日12月17日は本年度の大河ドラマ『どうする家康』の最終回放送日。最後まで言うまいとは思っていたが、正直なところ、よくも悪くも昨年の作品とは比較されるよなあと思って見ていた。今年の分は15話くらいで脱落してしまい、後半はやっていれば観るくらいのテンションでつまみ食いしかしていないが、自分なりにもやもや1年考えていたことを出力しておく。

  • 主演のふたり
    • 最終回ゲストはよいが
  • 脚本のふたり
    • コメディの才は共通だが、そもそもの背景が違う
    • 並外れた三谷のオタクぶり
  • おしまい

 

主演のふたり

主演のふたりが比べられるのはしょうがない。小栗旬は1982年生まれの今年41歳。松本潤は1983年生まれの今年40歳*1。ふたりはほぼ同い年の盟友で、作品以外にも何かと共演の多い人物である。その源流を辿れば、いやはや最早どちらも20年近く前になるわけだが、2002年のドラマ『ごくせん』第1シーズン、2005年から放送された井上真央版『花より男子、というのは異論がなかろう。特に後者では、松本は主人公とバチバチにバトルしつつも惹かれ合っていく道明寺司小栗旬は主人公憧れの花沢類をそれぞれ演じ、原作通りにファン人気を二分したのであった。

*1:そう言えばこの作品は松潤が四十になって大河の主演に相応しい年になった、とか言われていたわけだが、その彼が未だ結婚していないところにジャニーズの闇を感じるわけだ、まあ後述の話もあるわけで

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アパート管理会社(仙台市太白区のアミックス)とトラブった話

仕事の関係で一時期職場の寮に住んでいたことがある。当初は違う会社が管理会社だったが、途中で仙台市太白区アミックスという会社に管理母体が変更になった。単に変わっただけかと思っていたら、田舎商売をされてめちゃくちゃトラブったので、もし同じような目にあった人がいたらと思って備忘録にしておく。なおかなりほとぼりが覚めてから書いているので直近の話というわけではない*1

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  • 1) だから住所変更したって言ったろうが
  • 2) 退去時確認って何???
    • 2-1) 秋口の退去時確認
    • 2-2) 年度末のバトル勃発
      • クロスの汚れ
      • 水回りの問題
      • 床の汚れとクロスの引き汚れ
      • サッシ汚れ
    • 2-2-1) 泣き寝入りなんかしないからな
      • 原状回復は居住者の責任ですが
      • ちなみに請求にも時効がある
  • 3) 勝訴したのだが、場外乱闘がいくつもあった
    • 3-1) え、他にもやってたの?!
    • 3-2) 入居時からあるガラスの割れを修理請求された
    • 3-3) (綺麗に使ってたのに)クロス交換代の請求
    • 3-4) 前の管理会社時代から再三連絡していたはずの、給湯器故障の修理代金
  • おしまい

 

1) だから住所変更したって言ったろうが

職場の寮だったのだが、引き払った年度は本院と違う場所での勤務が多く、居住実態も大分乏しくなっていたので、年度の途中で引き払うことにした。丁度自分が引き払いを連絡したタイミングと、①別院での勤務で自分が不在にする時期(かなり遠方だったので完全に引っ越しになった)、②管理会社の入れ替わり、のタイミングが全部一緒になった。家賃+光熱費は、前の管理会社と自動引落の手続をしていたものの、退去まで数ヶ月しかないので*2、職場と管理会社側で連絡し、「特例として、退去までの数ヶ月*3は、銀行振込で対応する」との話にしてくれていた。

①で不在にしている事情は職場が把握しているので(勿論)、①での居住場所に請求書を送付してくれたが、引っ越し直後のせいで請求書が仙台に戻ってきてしまったという。職場から上記の事情がメールで伝えられ、振込はしておくので、次回以降本院近くの引っ越し先に請求書を送って下さい、と返信した。職場の担当者からもこの通り分かりました、という返事が来ていた。

実際のメール(来月以降請求書はこっちに送ってね)

引っ越し先というのも家族がいるところだったので、何か手紙がくれば逐一連絡してくれるわけで、実際その他のものは特段問題なく対応できていた。ところが、この会社からの振込依頼だけは届かず、「前の会社は毎月ちゃんと送ってきてくれたのにな……」と思っていた。

で、①から帰ってきて、さあ退去の手続をしようか、と思って寮に行ったらこれ

  • 部屋の使用料(つまり家賃)と光熱費払ってね。
  • 口座振替の依頼書、(職場担当者の所属先)に出しといてな。月単位で手続かかるけどな。

実際届いていた督促状(一部加工しています)

馬鹿なのか?!?!?!

まず、引っ越し先の住所に請求書をお願いします、と言っていたのに、この督促状は職場寮の郵便受けに入っていた。おまけに、特例対応という話になっていたので、そもそも「口座振替依頼書」なんてものは自分の手元に届いていない。意味分かんな過ぎる!!!

*1:けど当時の請求書とかが出て来てめっちゃムカついたのでやっぱり記事にする

*2:自動引き落としの手続自体そこそこ日数がかかるので、そのくらいなら振込の方が早い、のは皆さんご存じの通り

*3:遠方にいてハウスクリーニングなどの立ち会いが難しかったので、①から帰ってきた月に引き払うことにしていた

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医療ってサービス業なんですね(えんえん泣)

まー題名のままだし、サービス業だからクレーマーも意味分からん客もいるのは当たり前なのだが、繰り返されるとすり減るねという話。ついこないだまで夏の熱中症シーズンと感染症のピークが重なっていて、近隣の市町村でも搬送困難症例が多数発生していたとニュースで言われていた。実感としてもそんな気はする。母数が増える分、変な電話/相談の件数も増えるもので、いやはや……という症例もいくつかあった。わかんないからやってるんだな……とは思うが、重なり過ぎると優しくなれない。

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  • おやすみのお時間シリーズ
  • この時間なんで……シリーズ
  • 久々なので……シリーズ
  • 持病があるんですけど……シリーズ
  • ナチュラルに盛ってくるシリーズ
  • 土地勘無いので……シリーズ
  • 大きな病院だから診てくれるんでしょシリーズ
  • 俺は医療関係者なんだぞアピールシリーズ
  • おわり

 

おやすみのお時間シリーズ

ここからはあるあるシリーズ。

今日からの熱なんですがかかりつけ医が[休診で/電話が繋がらない]ので、(中核病院に)電話してみました!」

かかりつけ医が「休診」の方がまだましで、それなら近くの別医院探して下さい、となるのだが、「電話が繋がらないので」「いつも予約でいっぱいなので」とかいうのはほんとひどい。地域の医院がお忙しいのは分かってるんだけどね。でもあなたのおうちの人が大きめの病院で診てもらえる理由にはならないよ。

これもまあ中核病院に直接電話掛けてくるならまだましな方で、ひどいと救急車呼んでたりする。#8000か#7119掛けて相談して!!!

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もっとひどいのがこれ。

「いつもの症状(=慢性疾患の症状)だと思うんだけど、今電話掛けたらかかりつけ医が昼休みだったから、そっちで診て下さい!」

いやいや経過知ってるかかりつけ医で診てもらってくれよ。ぽっと出の僕らが変な薬出す方が危ないよ。しかも慢性疾患なら昼休みの数時間くらい待てるでしょうよ……(喘息発作など除く)。

あと、「朝具合悪くなったんだけど、受診しようと思ったらこの時間でえ〜、普通の医院やってないんでえ〜、救急車呼びましたあ〜(※朝8時)」ってのもあった。ついさっきからの発熱咳嗽だろ? 1時間待て!!! (大抵地域の医院は9時始まり)

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このメタメタしさはマーゴ・ロビー版『銀河ヒッチハイク・ガイド』 - 映画『バービー』

マーゴ・ロビーとライアン・ゴスリングが主演*1グレタ・ガーウィグ監督作品の映画『バービー』"Barbie" ('23) を観てきた。今をときめくグレタ・ガーウィグの作品なので、、、と思っていたが、実際にはマーゴ・ロビーがプロデューサーも兼任して率いた作品であり、その出来は実にシニカルでクレバーであった。ハッシュタグ "#Barbenheimer"*2のせいで日本では不名誉な広まり方もしてしまったが、ガーウィグとロビーの作品に罪は無いので、ふたりの才女が生んだこの作品を観に行ってほしい。

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あらすじ

バービーたちのバービーによる国・バービーランドに住む定番バービー(演:マーゴ・ロビー)は、ガールパワーで成り立つバービーの国で、完璧な毎日を送っていた。ビーチに行けばバービーを愛するケンたち(演:ライアン・ゴスリング、シム・リウほか)がおり、夜な夜なガールズパーティーで盛り上がっている。ところがある日、突然彼女はに思い至り、以来完璧だったはずの毎日は少しずつ崩壊していく。現世でひどく弄ばれた挙げ句へんてこになっていた変てこバービー(演:ケイト・マッキノン)の助言で現実世界に行くと、そこはバービーが思い描いていたのとは全く違う世界だった……

 

  • あらすじ
  • 最高にクレバーなプロデューサー、マーゴ・ロビー
  • 何故ゴスリングが典型的ブロンド男ケン役を受けたのかとは思っていたが
    • 40過ぎたんだからほんと何してるんだ(褒めてる)
  • このメタメタしさはマーゴ・ロビー版『銀河ヒッチハイク・ガイド
  • おしまい

 

 

!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※この先には物語の核心に迫る記述があります※

 

*1:どちらもマーゴット・ロビーライアン・ゴズリング表記の方が日本語では人口に膾炙しているが、いちファンとしてはちゃんと書きたい

*2:北米でノーラン作品の『オッペンハイマー』と本作が同日公開になったために生まれたハッシュタグ。一部のファンアートで「原爆の父」オッペンハイマー(演:キリアン・マーフィー)とロビー演じるマーゴ・ロビーをコラージュし、後ろにキノコ雲をあしらったデザインが爆発的に広まったことから、海を越えた日本で大問題になった。そもそも同日公開になったのは、ワーナーを見限って移籍したノーランへの当てつけという説もある。ユニバーサルはそれよりも日本で早く『オッペンハイマー』を公開しろ。

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『テルマエ・ロマエ』ばりに時をかけるおじいちゃん - 映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

インディ・ジョーンズシリーズ第5作にして、80歳 (ちなみにあと3日*1で81歳) のハリソン・フォード御大のインディ引退作インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』"Indiana Jones and the Dial of Destiny" ('23)を観てきた。フォードがインディ引退作と明言した通り、作中のジョーンズ博士も引退を間近に控えているが、話の流れは今までのシリーズを汲んで、以前よりも荒唐無稽になっていた。与太話感は以前よりも更にアップしたものの、フォードがこの年になってもインディとしてスクリーン中を駆け回ってくれたことを考えれば差し引いて然るべきだろう。……あとみんな、マッツの悪役大好き過ぎな!!!

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あらすじ

第二次世界大戦中、インディ・ジョーンズ博士 (演:ハリソン・フォード) は、オックスフォード大の考古学教授バジル・"バズ"・ショー (演:トビー・ジョーンズ) と共にナチスの巣窟へ潜り込み、アルキメデスの秘宝である「アンティキティラ」の片割れを盗み出した。20数年後、アンティキティラを巡ってバズの娘であるヘレナ・"ウォンバット" (演:フィービー・ウォーラー=ブリッジ) が突然ジョーンズ博士の前に現れ、これと同時にジョーンズ博士は陰謀に巻き込まれて行く。その影にはシュミット博士と名乗る眼光の鋭い男 (演:マッツ・ミケルセン) がいて……

 

!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOIKER ALERT! !!!
※この先はネタバレ全開で感想だけ言って駆け抜けます※

 

 

*1:ハリソン・フォードは1942年7月12日生まれ

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医療行為は医療者の判断で行うものです

先日救外で「ついでに点滴から薬投与してください、できますよね」と言い出す保護者がいて、それに後輩が安請け合いしていたので、注意した。患者側から色んなことをお願いされることはあるが、実際にやるかどうか判断するのは、基本的には医者側だ。診察の結果その薬は必要なさそうだったのと、待たせている間に有耶無耶になったので、結局薬は投与せずに終わった。

 

投与して下さいと頼まれたのは痛み止めで、いわゆるアセリオ(アセトアミノフェンの静注製剤)くらいなら気軽に使ってしまいがちだが、本当に必要なのか、考えてみるとよい。アセトアミノフェンは最も気軽に使える鎮痛薬である一方で、過量投与すると肝障害が起こる可能性があるということは忘れられがちだ(もっとも救外でそこまで大量に使うこともほとんどないが)。また、アセリオの添付文書には

経口製剤及び坐剤の投与が困難で静注剤による緊急の治療が必要である場合等、静注剤の投与が臨床的に妥当である場合に本剤の使用を考慮すること。経口製剤又は坐剤の投与が可能になれば速やかに投与を中止し、経口製剤又は坐剤の投与に切り替えること。——Kegg.jp/アセリオ添付文書

とあるにもかかわらず、実際には点滴を取った患者のファーストチョイスになってしまっている。

 

痛み止め繋がりでいうと世の中にはソセゴン中毒という不思議なものがあって、いやそんなに強くない麻薬なのだが、確実に中毒者がいてたまに救外へ現れることがある。何かをしてくれと懇願された時に毅然と断るのはなかなか骨が折れる作業だが、とはいえ医師である以上は自分の信念をもってそういうことをしなくてはならない。

実際気合いの入ったソセゴン中毒もいて、何と救急医の学会・日本救急医学会雑誌で堂々と取り上げられるような症例になっている(ペンタゾシンはソセゴンの一般名)。この症例報告の女は、驚くべきことに東北3県の病院を行脚してソセゴンを打てと騒ぎ立てまくった症例である。東北の病院事情を知っているとM県の病院はあそことあそこの分院かな、とか、秋田南部の病院なぞ1市町村に1つくらいしかでかい病院がないぞ、とか、湯沢から先どうやってどこに行ったんだという謎が残るのだが、そこまでしてでもソセゴンを打ってもらいたくてしょうがない、というのが、この筋金入りのソセゴン中毒なのだ。

www.jstage.jst.go.jp

まとめて言うと、若いお医者さんたちは色んな人にやいのやいの言われるかもしれないけれど、安請け合いしないで、自分が不要と思った物はきっぱり断る、逆に必要だと思った物はしっかり実施してね、という話。おしまい。

 

 

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