本当に今更なのだけど、友人と浦添ようどれの話をしていて、そう言えば『ハクソー・リッジ』"Hacksaw Ridge"('16) 観ていなかったな、と思ったので観た。賞レースをひた走っていた頃は、「アンドリュー・ガーフィールドが主演男優賞を争っているらしい」(※オスカーにもノミネート)、「メル・ギブソンが凄い映画を撮ったらしい」(※賞レース前大絶賛)ということだけ掴んでいて、これがまさか前田高地の激戦を描いた話だとは知らなかったのである*1。そう言えばゆいレールも浦添まで延伸され、終点のてだこ浦西駅は舞台となった前田高地までほんの少しの距離にある。というわけで映画を観てみたのだが……沖縄戦は遠い昔の話だと思っていたが、米軍側から描かれた話とはいえ、素直に観ることのできる作品ではなかったというお話。
——今週のお題「遠くへ行きたい」
- ネタバレない程度の前提整理
- 話自体は淡々と進む
- メル・ギブソン監督作品であることには触れねばならない
- 沖縄戦のシーンは、単純には観ていられない
- 戦艦から容赦無く浴びせられる砲撃
- 日米双方の若者が散っていった
- 茅葺き屋根の家屋、あったんですね
- ゆいレール延伸で行きやすくなりました
ネタバレない程度の前提整理
とはいえ、主人公の背景を言った時点で大ネタバレだが、まあその辺は目をつぶっていただこう。
アンドリュー・ガーフィールド演じる主人公のデズモンド・ドスは、いわゆる「良心的兵役拒否者」だ。テレンス・マリック監督が送った『名もなき生涯』"A Hidden Life" で取り上げられたことで存在を知っている人もいるに違いない。簡単に言えば、不殺生を戒律とする宗教を篤く信仰していて、そのために殺傷を伴う兵役には就けないと拒否する権利のことである。『名もなき生涯』のフランツは良心的兵役拒否のために殉教したが、今作の主人公のドスは、国のため何とかして兵役に就きたいと、銃の訓練を拒否した上で衛生兵になることを目指す。
ドスは訓練を受けた後、沖縄戦における激戦地のひとつ、「ハクソー・リッジ」(直訳すれば「弓のこ尾根」)に赴き、ここで75名もの米軍兵を救ったとして英雄的存在になった。「ハクソー・リッジ」というのは米軍側が付けた名前で、本来の地名は「前田高地」といい、日本でもその激戦ぶりがよく知られている。なお、この尾根の上には、浦添城に加え、琉球王朝時代の王家の墓である浦添ようどれが存在する。これで話が冒頭に戻りましたね。
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