ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

【Mac】マウントされなくなった外付けHDDを救出した話

突然外付けのHDDがマウントされなくなった。新しいMacBookに替えて以来、内蔵ストレージがHDDからSSDに変わって容量が減ってしまったので、映画関係の資料や音楽は専ら外付けHDDに保存している。何の気なしに資料を移そうとしてMacに繋いだら、マウントされない。すわ、パソコンを替えて以来の資料消失か……と大焦り——したのだが、普通にデータサルベージに成功したというお話。意外とまとまっているサイトが無かったので、備忘録として残しておく。

 

環境:macOS Mojave 10.14.6

 

  • まずは前提整理だ
  • 基本はディスクユーティリティ
  • ターミナルを使え
  • 【成功】StellarDataRecoveryを使ってみた
  • おしまい
  • 【211217投稿後追記】Stellarが使えなくなっていた

 

まずは前提整理だ

使っていたHDDは、マウントされている時にはランプが点いて稼働していることが分かるようになっている。HDDのランプは点いていた。音もしているので、動いてはいるようだ。

接続部を確認したが、USBハブもHDDもきちんと繋がっている。USBハブに別のHDDを差したがきちんと認識される。念のため別のUSBハブも使ってみたがハブが悪いわけではないらしい。

再起動もしてみたけど状況は変わらない。HDDがやられているようだ。

 

ところでここで、(ディスクユーティリティで確認した上で)「アンマウントされてるみたいだからいっか」と言ってUSBハブを交換したが、本当はあまりよくないらしいのでご注意を。事態打開を急ぐ余り抜き差ししているとほんとにHDDが壊れることもあるらしいので、繋ぐのはできるだけ最小限に。通電せずに数日置いておいたら勝手に直ったという話もちらっと見たくらいなので。

 

基本はディスクユーティリティ

こういう時のためにMacさんの強み・ディスクユーティリティを起動する。

  • Finder>移動>「ユーティリティ」(⌘+⇧+U)
  • 起動ディスク>「アプリケーション」>「ユーティリティ」
  • Launchpad > 「ユーティリティ」(初期設定状態)

で辿り着けるので、ディスクユーティリティを起動する。

 

ディスクユーティリティでは繋がれているHDDやディスクドライブに入っているCD/DVDメディアの情報を読み取ることができる。またMacに繋がれているデバイスが一覧として表示される。認識されなくなったHDDは、名前こそ表示されるがグレーアウトしていて選択できない。名前を右クリックして「マウントする」を選択しても、マウントされない。

後から分かった話だが、デバイス名がグレーアウトしている場合、これはHDDの論理障害を示すという。容量が満杯になっているという表示がされるのも論理障害の証拠だそう。HDDに書き込まれている情報が一部破損していて、PC側で上手く復号できない状態だ。逆に、HDDを落とした、破壊したなど物理的破損があると、ディスクユーティリティにデバイス名すら表示されないらしい。1度繋いでみて状況確認するのはよいと思う。

 

せっかくディスクユーティリティを立ち上げたので、このページ(下記)を参考に "first aid" を走らせてみた。このページではエラーコード1が吐き出された場合の対処法が書かれている。出て来たコードは

ファイルシステム検査の終了コードは8です

だった。このページでは8の時も "fsck_exfat" の強制終了で上手く行くのでは、と書かれていたが、結論から言うと全く無駄だった(そもそも動いていなかった)。別のサイトに上手く認識されるまでfirst aidを走らせろという意見もあったので何回かやってみたが、普通に時間の無駄だった。万事休す。

migileft.com

続きを読む

これで絶対間違えない! マスクの正しい着け方

COVID-19の感染防護策として、本当に猫も杓子もマスクを着けている。いや、杓子がマスクを着けているのはまだ見ていないけれど、猫がマスクを着けているのは確かに見た。急にマスクを着ける人が増えたことで、変な着用法をしている人もよく見るようになった。なんせ医療関係者ですら変な向きで着けてるのだから(残念なことにこれはマジ)、いわんや一般の方や、というところである。ということで、今日は改めてマスクの着け方を復習してみよう……!

 

  • よく言われる方法もあるけれど
  • プリーツの向きなら絶対間違えない!
  • こういうマスクは見分けやすい!
  • 使い終わったらこうしましょう

 

よく言われる方法もあるけれど

これは厚生労働省が公開している正しいマスクの着け外し方。大事な

  • 鼻を中心に顔にしっかりフィットさせる
  • マスクのおもて面には触れず、ゴム紐だけ触って捨てる

点が強調されている。でもどういう向きで着けるのがいいのかは書いてない。

www.youtube.com

 

正しい向きの見分け方としてよく言われているのが、

  • ノーズワイヤーを上にする
  • 耳ひもの接着面がおもて

というものである。『フラジャイル』の円さんのモデルになった柳田先生もそう書いてる。でもこれ、ちょっと間違っている。

news.yahoo.co.jp

  • ノーズワイヤーを上にする ☞ 
  • 耳ひもの接着面がおもて  ☞ 

耳ひもの接着面で判断するというのはよく言われる言説だ。外側に接着面がある方が顔面への密着性が高まるためとされているためである。が、実際にはメーカーによって、内側の面に付いていることもあるので、案外当てにならない

 

プリーツの向きなら絶対間違えない!

というわけで、皆さんに覚えていただきたいのは、プリーツの向きで判断する方法である。めんどくさいこと言わずに図解にしてみた。

マスクを着ける際の正しい向きを見分ける方法の図解

これが正しい向きの見分け方だ……!

山(プリーツ)の向きが全て揃っているマスクは、「下向きの山が連なるような向き」が正解。ウイルスや菌を下に流していくイメージで着用しよう。

中央に山ができるようなデザインのマスクは、表面に山折りを持ってきて、上下にプリーツが流れるように着けるのが正解。表裏逆にすると、表面にポケットができてしまうのでNGだ。

 

どちらの場合も、顔に当てる前にマスクの上下を引いてしっかり広げることが大事。広げずに四角い形で着けている人がいるけれど、しっかり広げて、鼻からあごまで覆いきることが大事である。

続きを読む

クリス・リードの死に寄せて (本日葬儀が配信されます)

先日既に追悼記事は書いたけれど。

mice-cinemanami.hatenablog.com

 

リアルスポーツでよい追悼記事が出ていたのでシェアしたい。何故か本記事には上手くリンクできないので、Yahoo!で掲載されている方も載せておく。

https://real-sports.jp/page/articles/370759511876568086

 

Instagramを通じて姉のキャシーから、彼の葬儀を中継配信するとの知らせがあった。COVID-19感染拡大に伴い、ファンが彼に心を寄せられる時間を作ろうとの配慮で配信を決めたと葬儀のページに書かれていた。辛い時期だろうに。ファンのためにお別れを言う時間を作ってくれたリード家の皆さまに感謝である。

www.instagram.com

葬儀は日本時間で3月21日(土)21時から営まれる。葬儀場のウェブサイトには日本語と英語双方で追悼記事(=obituary)と葬儀のお知らせが掲載されており、メールアドレスを登録するかFacebook認証すると、お悔やみのメッセージを寄せることができるようになっている。ひとりでも多くのファンが彼に別れを告げる場に辿り着けますように。

www.schrader-howell.com - 日本語。

www.schrader-howell.com - 英語

関連:クリス・リード

ねえクリス、早過ぎるよ - クリス・リードが亡くなりました

世の中はホワイトデーが過ぎたばかり、今週のお題も「ホワイトデー」だというのに、悲しいニュースが飛び込んできた。カンファの前にふとスマホを開いたらこんなニュースが飛び込んできて、正直信じられないでいる。

 

クリスは間違い無く、日本のアイスダンスを牽引した立役者だった。カップル競技の練習場が限られている日本において、そもそもカップル数自体が極端に少ないのだが、それでも全日本選手権10度優勝という成績は素晴らしいものだと思う。

競技生活からは引退し、これからコーチとしてセカンドキャリアを歩むのだと思っていたのに。かなちゃんがアイスダンスに戻ってきたのを喜んでいたばかりだったのに、あなたがこの世を去ってしまうなんて。どうしようもない気持ちを出力させてください。

 

 

 

キャシーと組んでいたころ

クリスは元々姉のキャシーとカップルを組んでいた。実のことを言うと妹のアリソンもジョージア代表などとして出場しているアイスダンス選手である。父はアメリカ人だし本人もアメリカ生まれだが、母が日本人であったことから、日本所属のカップルとして競技を続けることになる。クリスだけでなくキャシーも長身なので、彼女の長いスカートがひらひらとまたたくのはとても見栄えのする演技だった。

 

ちなみにアイスダンスは純粋にスケートとリフトの美しさを競う部門である。ダイナミックなスロージャンプがあるペアも素敵だが、個人的にはツイズルが大好きなので、やっぱりアイスダンスの方が好みである。ステマのように個人的に大好きなテサモエ*1ムーラン・ルージュを貼り付ける。

 

これはキャシーとのカップル時代の話である。実際の映像がこれ。いつもの元気はつらつなクリスの演技で、怪我していたなんて全く信じられない。2007年から10度の優勝を重ねた全日本を、唯一欠場したのがこの年である。

www.nicovideo.jp - こうやって見返すと、キャシーが長身で物凄く映えるから素敵だなあ……

正直なところ、リード組の頃はわたしも熱心にアイスダンスを追っていなくて、大好きなプログラムというのがぱっとは浮かばない。それでも、エキゾチックな魅力を持つ顔の姉キャシーと、反対に若々しさを前面に出した弟クリスというカップルがとても素敵であったことだけはよく覚えている。

クリスは後述する村元とのカップル時代も含めて長年国別対抗戦に出続けた。シングルにいくら強い選手がいても、カップル選手がいなければ団体戦には出場できないのである。クリスはその事実をよく分かっていて、いつも他の選手を励ましつつチームを引っ張るアイスダンサーとして踊り続けていた……ように思う。これは2013年のフリーダンス。(ちなみにリード組では2010年のバンクーバーと2014年のソチの2回、オリンピックに出場している)

www.youtube.com

キャシーの引退、それでも

キャシーは2014年シーズンで現役を引退し、クリスのみが日本チームに残ることになる。その後キャシーはコーチとしてセカンドキャリアを歩み始めるが(彼女のInstagramでは彼女が指導するカップルの練習風景や試合結果などが報告されている)、ふたりはその後も仲の良い姉弟であり続けた。クリスが正式に引退を発表する前からも、キャシーの指導するカップルにクリスがお手本を見せに来たりと、氷上でのコラボレーションは綿々と続いていたのである。

www.instagram.com

今年の1月には、正式にリード姉弟でコーチカップルを組むことが公表されていた。実際ふたりが滑りながらお手本を見せる動画もあったように思うし、ふたりに指導を受けたならどれだけ素晴らしい経験だったかと思う。

ameblo.jp

 

クリスの訃報が発表されたのと同時に、キャシーは彼との写真をそっと公開している。クリスが引退して、共に後進の育成にも当たっていただけに、彼女の心中はいかばかりかと思う。正直キャシーが1番心配だ。

www.instagram.com

一方妹のアリソンはInstagramで追悼文を公開している。

www.instagram.com

 

かなクリになってから

キャシーの引退後、クリスは村元哉中(かな)とカップルを組んで再始動することになる。村元は元々シングル選手だったが、アイスダンスへ転向し、1つ目のカップルを解散して相手を探していたタイミングだった。ふたりのタイミングがぴったり合い、平昌へ向かうこのカップルが結成されたのだ。

 

元々村元は平昌五輪出場を目指してアイスダンスに転向した選手だが、その宣言通り、ふたりのキャリアのクライマックスはこの五輪シーズンにあった。かなクリの結成以来、クリスは姉キャシーとカップルを組んでいた頃から少しイメチェンし、ダンディな年上男性といった雰囲気になる。どこかベネディクト・カンバーバッチアダム・ドライヴァーを思わせるような感じで、それがまた元気はつらつとした村元の演技と相性が良い。この演技を続けて観てくださいよ。わたしはオリンピックの時、FDで普通に泣いたよ。日本のアイスダンスがここまで上がってきたということに対して泣いたよ。今も見たけど、違う意味で泣けてしまうのが悲しくてならない。

 

平昌はフィギュアに団体戦が導入された最初のオリンピックだった。この大会で主将の役割を務めたのはクリスの相手・村元であった。チームのムードメーカーで、周りより少し年上のお姉さんという立場で全員を引っ張る村元を、陰からそっと支えていたクリスが印象深い。また村元は帰国子女ということもあって英語が堪能なので、日本語でのインタビュー時に、村元がクリスのインタビューの手助けをしていたのも印象深かった(例えば難しい質問を訳してあげたり、逆に言葉に詰まるクリスを「こういうことだよね?」とそっと手助けしたり)。

この年かなクリは、直前の四大陸で日本カップル最高位となる3位入賞を飾る(五輪との関係で出場しなかった組も多い(はずだ)が、にしても快挙だ)。五輪の15位、世界選手権の11位もそれぞれ日本カップル最高位だ。この年の8月、方向性の違いから突然カップルを解消してしまったが(正直この時は本当にパニックになって泣いた)、日本のアイスダンスを最後まで牽引してくれたのが、クリス・リードという男だったのである。

 

これはかなちゃんの追悼文。大好きなかなちゃんが髙橋大輔と組んでアイスダンスに戻ってきてくれるのを喜んでいたのに、クリスの訃報を聞くなんて、かなクリがとても大好きだったわたしには大変辛い話だ……

www.instagram.com

ameblo.jp

コーチとしてのセカンドキャリア

クリスは昨年末に正式に引退を発表した。村元とのカップル解消後も相手については聞こえてこず、30という大台に乗ったところだったので(近年は怪我の話もちらほらあったし)、そろそろ退く時期ではあったのかもしれない。それでも、全日本優勝10度の彼が退くというのはなかなかに大きなニュースであった。丁度Team CoCoKoKo*2の小松原が脳震盪で休養を余儀なくされていたところだったし。

既に各種報道でも触れられているけれど、クリスはアイスダンスの指導のために日本にやってくる予定でいた。彼にはコーチとして素晴らしいセカンドキャリアがあってしかるべきだと思っていたし、姉キャシーと実際に滑りながらコーチングする動画も上がっていたので、楽しみにしていたのだけれどなあ。つくづくつらい。

ameblo.jp

スケート界からの追悼

同じくアイスダンスから、Team CoCoKoKoのコレトさん。どれだけ悲しいか表す言葉も無いよ、って、その通りだよね。優しい兄貴として付き合ってくれてたことがよく分かる写真たち。

 

わかばちゃん。仲の良い池江が久々プールに入ったことリツイートしてるけど、発表直後は驚きで疑問符しか打ってなかった。

 

小塚さん。

 荒川さん。

無良さん。

織田さん。織田さんが一緒に行ったのは2010年のバンクーバー

村主さん。

他にもインスタのストーリーで何人かのスケーターが反応していた。ストーリーを転載するのは趣旨に合わないと思うのでやらないけれど、多くのスケーターが早過ぎる死を悼んでいる。

 

オーストリア代表だったケルシュティン・フランク。クリスの交際相手だったんですね。1月には仲睦まじそうな写真と共に交際記念日を祝っていただけに、とてもしんどい。

www.instagram.com

 

そういえばクリスの死は「12時20分」とやたら正確な時間が伝わっているのが気になる。もしかしたらVFとか致死的不整脈を起こして、1回ROSCして、それでも救命しきれなかったのかもしれない。ねえ何で。早過ぎるよ。キャシーが心配だよ。Instagramがもう更新されないのが悲しい。でも彼のアカウントのフォローは外さない気がする。

 

200319追記

※小松原美里・ティム・コレト組の愛称をミスタイプしていました。正しくは "Team KoKo"です。訂正いたしました。

 

日が明けて追悼文を寄せる人も何人か増えていたので、個人的な記録がてらまとめておく。まずは元りくしょーで現在は木原龍一とペアを組むペアダンスのりくちゃん。

 

チェコのシングル代表でチェコいきいき30歳のブジェジナさん(ミハル・ブジェジナ)。一緒にXboxで遊んで、ホッケーの試合を沢山見て、リード家で暮らしていたこともあるからとても仲が良かったんだよ、と。

www.instagram.com

これはハビ(=ハビエル・フェルナンデス)。色んな人の追悼文を読んだけれど、いつも笑わせてくれるジョークセンスのある人だったよ、とあちこちで言われていますね。

www.instagram.com

スケート情報サイト、ゴールデン・スケートから。ヴィクトリア・ブルースの詩を添えて。

www.instagram.com

こちらはランディ・ストロング。振付師として働く彼女は、かなクリ時代のプログラムを載せて彼の死を悼んでいる。

www.instagram.com

ISU; 国際スケート連盟から。Twitterでも追悼として四大陸選手権銅メダルを勝ち取ったFDの動画が公開されている。

isu.org

関連:フィギュアスケート / アイスダンス / クリス・リード

*1:スコットは「モイヤー」なんだから「テサモヤ」じゃね?とか思うのだが、そこは邪推のようである

*2:小松原美里・ティム・コレト組。かなクリの次に来る日本のアイスダンスカップルの2番手だった。ふたりは夫婦。

どうでもいいひとりごと - 200308

COVID-19について。

 

実演講座でもやってみたら

まだPCR全例に実施したい人たちがいるみたいだから、この際昼の情報番組で「MCが挑戦する! PCR検査の実際」みたいなタイトルでPCR検査やってみたらいいんじゃないか。病原性のあるものとか遺伝子組み換え大腸菌とか使うと面倒だから、何をターゲットにしたらいいかなあ。鼻咽頭ぬぐい液取るところから全て自前でやってほしい。あるはずなのに増幅できないとか試料の調製ミスで大失敗とか、実験系あるあるを是非体験してほしい。そして最後の最後に「生放送の時間に収まりませんでした」とかやってほしい。「一家に一台PCR!」みたいなテンションで話すからにはそれくらい、ねえ?

 

韓国の甲状腺癌検診を思い出す

この話を考えていて、ふと韓国で起こった甲状腺癌の過剰診断の話を思い出した。頚部エコーで簡単に診察できるようになったことから、韓国は若年者の甲状腺癌のエコー検診を無料にして広く普及させることにした。甲状腺癌は若年者の癌死亡でそこそこの割合を占めているので、早期診断できれば死亡率が減らせるのではないかと考えたのだ。実際この検診を導入したところ、韓国国内での罹患者数は急増した。癌なのに診断されていない人たちが沢山見つかったのである。

しかしながら数年経って論文が出て、この検診は死亡率を全く下げていないことが分かった。普通は早期診断が出来れば早めに治療に移れて、その後の転移や死亡などをリスクを下げるものだと思う。しかしながら、甲状腺癌は全身各臓器の癌の中で、比較的ゆっくり進み、予後の良いものとされている。死亡率を全く下げなかった、ということは、この時点で診断する必要は全く無かったということなのだ。要するに、見つける必要の無い癌を見つけて、数が増えた*1、と言っていたのである。この話は韓国国内のメディアにすっぱ抜かれ、若年者の検診受診者は下降の一途を辿った。罹患率はエコー検診の導入で一次爆上がりしたが、現在は諸外国と同じ程度の割合にまで下がったという話だったように思う(ソースは探すのが面倒なので各自お調べ下さい)。

synodos.jp

医者が必要だから必要……?

テレビでは医者が必要だと言っている検査なのに出来ないじゃないか、みたいなことを言う人もいる。勿論必要な検査が必要な場所に届かないというのは問題だと思う。

でも、こないだテレビで見たとある医者の診察なんて酷いものだった。70代のおじいちゃんで胸部レントゲンを撮ったら肺炎像があった。接触歴を訊ねたかどうかは定かではない(この時はまだクルーズ船の乗客たちが降り始めたかどうかという時期だったので、市中での接触歴は大分限られていたと思う)。レントゲン自体はちらっとしか見えなかったが、年などを考えれば、先に出てくるのは肺炎球菌とかインフルエンザ桿菌とか、そういう市中肺炎の起因菌だと思う。それに対してこの医者、何と言ったかって、「あー肺炎像がありますね。コロナの検査がしたいからコールセンターに電話しようかな」。電話は結局繋がらず、パンクしてますね、という結論になっていたが、そりゃこういうじいさんがいっぱいならコールセンターもパンクするわと思う。

 

残念なことに、このブログでも何回か取り上げたように、医療資源は有限だ。「OKバブリー☆彡」と言っていた時期はとうに過ぎ去って、今は有限の医療資源をどう回すかということに社会が躍起になっている。そういった観点からよく言われるのが、「問診と身体診察で多くの病気は診断できる」という言葉だ。「肺炎かな? じゃあコロナ」みたいな短絡的思考は許されない*2

安易な検査を踏みとどまらせるために、「検査をしたからには判断が必要、その検査でその後の行動は変わりますか?」ということもよく言われる。検査してもしなくても、どうせ点滴繋いで酸素吸わせてひどくなったら呼吸器繋いで、というような状況なら、その検査は多分意味が無い。

 

これだけ書いて何が言いたいかって、「医者が判断したから」と言っても、その医者の臨床力が著しく低かったら、その判断は当てにならない。そういう一部の偏った例を取り上げて、検査してほしいのにしてもらえない、と騒ぐのはフェアじゃない。

 

おしまい

段々とりとめのない話になってきたので強制終了しようと思う。そう言えば本当に関係無いけれど、この本が面白そうだったのでさっき買った。

関連:COVID-19 / PCR検査

*1:ちなみに罹患者数は検出能のよい検査が開発されれば上がる。「罹患者」の定義が「ある期間に見つかった患者の数」なので

*2:ただ、市中肺炎とCOVID-19を身体診察でどう見分けるかというとそれは無理だと思うので、やはり問診力なのかなあ

いい意味で、ドラマと全く変わらない - 映画『架空OL日記』

ドラマ版のファンとして、公開初日に映画『架空OL日記』('20)を観てきた。いい意味で、ドラマと全く変わらなかった。ドラマの映画化とあって観劇を躊躇している人がいるとしたら、主要人物のキャラクターだけ軽く押さえて行けばそれでいいので、気軽に足を運んでいただきたい。ところでこの記事にネタバレは無い(むしろしようがない)*1

www.youtube.com

  • 原作はバカリズムが密かに書きためていた偽日記
  • 空気感も、登場人物も、ドラマ版と一切変わらない
  • 見どころはない、当然ながらネタバレもない
  • 登場人物はOLだけれど、主題は人間の生活
  • 主題歌も、よりゆるくパワーアップ
  • おしまい

 

原作はバカリズムが密かに書きためていた偽日記

この作品は元々、バカリズムこと升野英知が2006年から密かに書きためていた偽日記を映像化したものである。原作となったブログは今でもアメブロに健在だが、ドラマと映画を観てから読むと、結構忠実にエピソードを再現していて面白い。2013年には1巻・2巻が合わせて待望の書籍化となり、『ビットワールド』で共演以来バカリズムが師匠と崇めるいとうせいこうが巻末文を寄せている。

架空OL日記 1 (小学館文庫)

架空OL日記 1 (小学館文庫)

 

nikkan-spa.jp - ブログ連載期間は実に3年

*1:そもそも「ドラマと全く変わらない」というのが最大のネタバレな気がするが、どうせ細かいところはこれでは伝わらないのでセーフセーフ

続きを読む

天気予報と医療情報の違いは何なのだ

COVID-19を巡る一連の報道に食傷気味な筆者である。否、正確に言えば、それを巡る情報番組の作り方に、だ。

 

2003年に起こったSARS、2009年の新型インフルエンザと大きく異なるのは、このウイルスの流行が運悪く春節に重なったということ、世界中での人の移動が昔とは段違いであること、そして、人々がすべからく何らかのSNSにアクセスしている、という事実である。2009年だってTwitterはあったが、その利用者数は今ほどではなかった。街ゆく人々が全てスマートフォンを持って、思い思いに情報を発信する世の中ではなかったのである。

 

  • 果たして何人いるのだろうか
  • 言うは勝手、行うは難儀
    • PCRの話
    • 後医は名医
  • 天気予報と医療情報の違いは何なのだ
  • おしまい

 

果たして何人いるのだろうか

残念ながら人類は歴史から学ばない。オイルショック時に主婦たちがこぞってトイレットペーパーに群がった姿、東北を冷夏が襲った時に米を求めて奔走した姿、そういうものは当然歴史の時間に習っているはずである。しかしながら、今回のCOVID-19流行に伴い、多くの人がマスクや消毒用アルコールを求めて右往左往している。「備えあれば憂いなし」とはよく言ったものだ。

多くの人がマスクや消毒用アルコールを買い求め、特殊マスクのN95*1や業務用アルコールに手を出した人々もそれなりにいるという。それでも、N95を付けてリークテストまでしっかりやれる人がどれくらいいるだろうか。アルコールによる手指消毒をしっかりできる人がどれくらいいるだろうか(どうせハンドクリームのように手の平にだけ塗る人だって多いに違いない)。そもそも通常の手洗いがきちんとできている人が何人くらいいるだろう。接触感染・糞口感染と言うけれど、それなら食卓の消毒は毎日しているのだろうか。消毒液と言えば、アルコール以外にもクロルヘキシジンとかグルタルアルデヒドだってあるけれど、何故みんなアルコールばかりに走るのだろう?*2 医療系の勉強をかじったものがこうやって考え込んでいるうちにも、多くの人が右倣えと言わんばかりに買い占め行動の一翼をになうこととなる。そしてその先には転売ヤーがおり、彼らのニーズを悪用して大儲けしているという構図がある。(実際メルカリなどのフリマサイトで、明らかに医療用のアルコールが転売されていたという話もあるし……)

 

言うは勝手、行うは難儀

そしてそういった消費行動を煽っているとも言えるのが、マスコミの報道姿勢である。連日のように報道される「PCRができない」「マスクが無い」「欲しい人の元に届かない」と言った言葉たち。それを煽っているのは自分たちなのに、その姿は棚上げだ。実に見事である。

*1:「最も捕集しにくいと言われる0.3μmの微粒子を95%以上捕集できる」(3Mウェブサイトより)保証が成されている特殊マスク。医療現場では結核菌予防のために使われることが多い。

*2:勿論この文章では、意図的に人体に使えるものと使えないものを混ぜています

続きを読む
Live Moon ブログパーツ