第1弾はこちらから。年の瀬の「#今年買ってよかったもの」便乗記事です。今回は救急編。第3弾として小児科・感染症科編を予定しております。小児救急は第3弾に回します!
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雑誌:救急医学
ひょんなことで買って以来(後述)たまーに気になる巻があると買ってしまうへるす出版の「救急医学」(定価¥2,900+税)。こないだもDCS; ダメージコントロール手術の回だったのでうっかり買ってしまいました。中でもお勧めなのが2021年の臨時増刊号「外傷画像診断アトラス」(定価¥4,000+税)。いやこれはほんと持ってた方がよいです。頭から腹部臓器まで、ありとあらゆる外傷の画像が載っていて、それでいてその分類や治療法まで総論的に書かれています。Amazonで探すとたっかい中古本しかありませんが、医学書取扱の実店舗で何とか市場在庫を探してもらうのがよいのかもしれない。
マイナーエマージェンシー
もうひとつ必携の1冊が、P・バタラヴォリらによる「マイナーエマージェンシー 原著第3版」です。紙の本も持っていますが、電子版を買い直しました。
「タモリ倶楽部」で取り上げられて一躍有名になったこの本、本当に、メジャーどころの救急疾患は一切書いてありません。それでも「成書にはなかなか載ってないけれど地味に困るな……」というラインの症例ばかり、おまけに動画付きで載っているという「誰がこんなん作ろうと思ったんだ(褒めてる)」という1冊。電子版だと検索がすいすいなのもとてもよいです。ちなみにど田舎の当直中、朝3時に爪下血腫で叩き起こされた時にも活躍しました(実話)。
タモリ倶楽部でこそ面白おかしく取り上げられたものの、実際後述する小児救急の本でも出典として取り上げられているくらい、中身はきちんとした本です。日本語に訳す際に、日本での診療に応用できるようローカライズされた訳註が沢山加わっているのもイチオシポイントです。
愛して止まない(けれど)シリーズ
ここからは筆者が愛して止まないけれど実際に来ると物凄く困るシリーズです。
①中毒関連
学問としては物凄く面白いけれど実際に来ると大変困るシリーズ第1弾、それが薬物中毒です。いやもう何で皆さんおくすり飲んで死ねると思うんですか。というかそれだけの錠数頑張って飲む気力が最早凄い。夜中に来ると頭が働かないのもあって、「中毒量……計算できない……」になりがちです。
そんな中毒関連で一番使いやすい成書がこれ、医学書院の「臨床中毒学」です。筆者の上條先生は最近埼玉医大に日本で初めての臨床中毒センターを立ち上げた発起人! 植物毒、動物毒、そして薬毒物とかなりの量が網羅されていて、救外で大変お世話になる辞書本です。因みに!!!この本は来年3月に改訂版が出ます!!!!!
今絶版になってしまっているのでなかなか手に入らないものの、じほうの「急性中毒標準診療ガイド」も辞書としては良本です。臨床中毒学ではカバーされていない家庭用品(洗剤など)*1なども沢山書かれていて、絶版になったのが惜しい1冊です。誰かうっかり筆者にプレゼントしてくれると泣いて喜びます。
少し古い雑誌ではありますが、2017年の「INTENSIVIST/インテンシヴィスト」の中毒号(MEDSi、定価¥4,600+税)も良い本です。MS(質量分析法)による薬毒物検出の話は、日本でもなかなかやっている場所が少ないので是非読んでほしい箇所ですね。救急雑誌繋がりでいうと、表紙だけおふざけですが中身がなかなか濃い「救急医学」"あつまれ どうしょくぶつの毒"号も大変面白かったです(前述の「救急医学」をチェックするきっかけになった本です)*2。
見つかってしまったので『救急医学』11月号「あつまれ どうしょくぶつの毒」の表紙をご覧いただきましょう。大丈夫です。中身はちゃんと医学書です。自然毒中毒の特集なんです。 pic.twitter.com/QMbJEnyuC2
— へるす出版 (@herusushuppan) 2021年11月8日
致死量をちょろっと引きたいだけならば、後述する南山堂の「法医学」にも同様の表があり、こちらではガス関係もそれなり網羅されているのでお勧めです。
全然関係ないのですが毒物関連で面白い本を置いておきます(すきなので手が滑りました)。クリスティと毒薬の本は少し訳に非専門家感がありますが、中身は面白かったです。
②法医学
これは声を大にして言いたいのですが、研修医、特に救急に関わる研修医は、法医の成書をきちんと持っておくべきだと思います。残念ながら日本の法医学の教科書は図が少なく、二色刷くらいの簡素な本が多いのですが、それでも、1冊は持っておくべきなのではないかと思います。
このブログでも何回か紹介していますが、筆者が学生時代から使っているのは南山堂の「法医学」です(定価¥5,500+税)。創/傷の正しい用語分類は救外で使う法医学知識第1位です。また、身内びいきではありませんが、この本の死亡診断書の書き方はかなり分かりやすいと思います。死亡診断書に関しては厚労省のマニュアル(死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル - PDF)もありますが、こちらの教科書だと法医学的な意味合いも含めて書かれているので……
あとは意外に役立つのがAi; autopsy imagingの本です。死後画像診断は死後変化の所見が入り混じってくるので、生きた人間のCT画像とは異なる箇所が多々あります。通常の死後変化と思われる所見も、それがそうだと知らなければ、病的所見と誤ってしまう可能性があります。絶版になりかけていますが、医歯薬出版の「Aiはどこまで事実に迫るか」(定価¥9,000+税)は初学者程度の内容で、なおかつ解剖所見との対比もあってとてもよいと思います。また、ベクトル・コアの「Autopsy imaging症例集」シリーズは、入門書というよりは症例報告の寄せ集め感があり、ややsnap diagnosisのきらいがありますが、読影枚数を増やすという意味では良書です。英語の成書もあるのでそのうち読みたい(3冊め)。
法医に関しては国によってかなり法体制や解剖に関する状況が異なるので、英語の教科書は、国による違いも考えつつ読まなくてはならないのが難しいところです。アメリカの法医学って全然違うよなあと思いながらこの辺の作品も触れてみました。(因みにディマイオ先生は"DiMaio's Forensic Pathology"という成書を書かれた高名な先生です)*3
AHA BLS/ACLS
研修医になって大抵受けさせられるか、病院がお金を出してくれるAHA BLS/ACLS。テキストは正規だと日本ACLS協会から買うしかないはずですが、割とメルカリに中古が転がっているので、その辺を買うのもよいのかもしれません。但し、レクチャー自体の最終テストでは教科書を引いても構いませんし、意外に問題数が多く解き終えるまで大変なので、新品が欲しい人は、ACLS協会から、電子版を購入することをお勧めします。アプリでさくさく検索できるのでお勧めです。
あとACLSなのですが、初期研修医の身分を失うと費用が病院持ちでなく自己負担になることが多いので、機を逸せず初期研修医のうちに受講しておくことをお勧めします(但しがめついAHAなので、2年ごと再受講せよとか言われますが)。
もう少し続きます
というわけで次がラストの小児科・感染症科編です。すみません、ここまで来てバレたと思いますが、JATECも実学尊重で学んでしまい、結局買ってないし受けてません。この辺に色々貼っておくので許して下さい。熱傷ガイドラインもネットでただで読めるのと、Baxter云々も原理までそこらに転がっているので、そんなので何となくやっていました。メッセージとしては救急に関わる間は毒物と法医学を愛して下さい!というそんな感じですので、どうか宜しくお願い致します。
- 【ガイドライン】大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン (PDF)
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一般社団法人 日本熱傷学会【会員トップページ】(熱傷診療ガイドライン(改訂第3版)公開のお知らせ)
関連:初期研修医 / 教科書 / 医学書