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【研修医向け】買ってよかった本第1弾 - 小児科・感染症科・救急以外

年の瀬が近付いて参りました。何がというわけではありませんが、大抵この時期になると「#今年買ってよかったもの 」的なハッシュタグが流行る時期なのでこんな話を書いてみることにしました。かなり分野が偏っていますが(ローテートが自由に組める分興味のないところは取っていないので)、自分で買ってよかったなと思うものを羅列していきたいと思います。なお、筆者の専門分野の関係で、小児科と感染症科はかなり紙幅を取るので、次回に回す予定です。あとは救急もちょっと多めなので、分量を見て別記事にするかもしれません。

 

研修医一般

①medicina(医学書院)

内科学会員向けに書かれた医学書院の月刊雑誌ですが、定期的に目を引く巻があって、それでいて初学者/非専門家向けに分かりやすく書かれているので結構お気に入りです。2021年の増刊号「救急診療 好手と悪手」は本当によくまとまっていて、初期研修医必携の1冊だと思います。神経、循環器、呼吸器、消化器、内分泌、、、と救急外来で困らされる疾患たちが1冊にまとめられています。普段より2倍くらいの厚さで¥5,500+税ですが、これはその価値がある(普段の定価は¥2,600+税)。

 

その他で言うと、2020年12月号の「プライマリ・ケアにおける神経症候へのアプローチ」は、神経内科を回りながら読んだところとても面白かったです。脳梗塞髄膜炎などの神経救急的な症例を疑うコツから、変性疾患や自己免疫疾患(Guillain-Barré症候群など)といった少しゆっくりした流れの疾患まで収録されています。今は2021年6月号の耳鼻科編をゆるゆる読んでいますが、これは内科だけでなくて小児科も結構読むべきだと思います(耳鼻科疾患は本当によく来るので)。

 

2020年2月号はちょっと難しいところもあるのですが、意外に基礎の授業以来振り返ることのない病態生理を学び直すには丁度いい1冊です。これと2021年の増刊号を行き来して読むとよさそう。耳鼻科編を読んだ後には、2022年8月号の心電図トレーニングを読む気でいます。ACLSでも心電図トレーニングはありますが、やらないといつまでも苦手なままだしね。あとはぱらぱら読みで成人の話だなと思って買うのをやめてしまいましたが、成人科に行く方は「medicina(メディチーナ) 2022年3月号 特集 成人が必要とするワクチン-生涯を通した予防接種の重要性」で今一度ワクチンスケジュールについて学び直すのもよいかもしれません。

 

②レジデントノート(羊土社)

研修医がいる病院は大抵何にも考えずに講読している気がする本の第1位。研修医が2年で変わることも見越して、同じ内容を数年毎に取り上げてくれるのもよいポイントです。その中でイチオシはこちら。2020年10月号の「ミミックとカメレオン」は救外で鑑別疾患を考えていく上で、こういうpitfallがあるのか、と再確認させてくれます。昨年のステロイドを扱った増刊号は、ステロイドの種類別の力価表があるのが本当にイチオシです。あそこだけコピーして持ち歩いてもいいくらい。先天性副腎過形成(CAH)や汎下垂体機能低下症(panhypopituitarism)のステロイドカバーでお世話になりました。いやこれはほんと特殊ケースなのですが。

 

 

③画像診断

まーどこの科に行っても切り離せない画像診断。色んな意味で画像の本は1冊持っておく方がよいです。筆者が好きなのは学生の頃から使っているこの本(¥3,800+税)。CTだけでなくMRI*1やエコーの所見も書かれていて、めちゃめちゃよいです。因みに同じ筆者で「画像解剖コンパクトナビ」という正常画像リファレンス的な本もありますが、それは欲しい人だけ買えばいいのかなと思います。

 

因みに、M3の電子書籍販売サイトM2plusを見ていると、「CT読影レポート、この画像どう書く?〜解剖・所見の基礎知識と、よくみる疾患のレポート記載例」がよく売れているようなのですが、この本はCTだけに特化しているのと、読影レポートの書き方に主眼を置いているので、放射線診断科でレポートを書く人向けだな、という気はします。肺葉の読み方のところは自分が結構苦手なのでよいなと思ったものの、結局は昔から使っていてUSやMRIもカバーしている上述の本に戻ってきてしまいました。(結論から言うと、自分に合うなら何でもよいです)

 

メジャー科

循環器

心カテの本はローテート中だけでもいいのですが、心エコーは意外に救外で求められることも多いので、1冊本を持っておくとよさそうです。はっきり言って何でもいいのですが、筆者は書店で色々選んで日本医事新報社の「レジデントのための心エコー教室」を買いました(¥4,200+税)。初歩的なパラメータの読み方と、疾患別の実際のエコー画像がまとまっています。日本医事新報社の本は、シリアルコード登録でネットで読めるので、持ち運びできるのもいいところです(但し、ネットで読むにはちょっと癖があるのですが)*2

 

心カテに関しては、MEDSiの「心臓カテーテルハンドブック」をローテ中使っていました。少し古い本ではありますが(新版が出ないので)、薬と違ってカテの手技自体はそう変わるものでもないので、読み方を勉強するにはよさそうです。

心臓カテーテルハンドブック 第3版

心臓カテーテルハンドブック 第3版

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なお、日本循環器学会は大変太っ腹でお金もあるので、大抵の治療ガイドラインはネットで無料閲覧できます。治療薬や治療法など日進月歩の部分に関しては、変に本を買うより、ガイドラインを確認する方がよさそうです。

www.j-circ.or.jp

呼吸器

筆者は呼吸器は一切回っていませんが、それでも他科でCOPDやら喘息やらを見ることは多いですし、COVID-19が流行りだしてからうっかり肺炎を見つけてしまうことも増えたので、やはり切っても切れない分野です。前から呼内のレジデントの先生たちが持っていていい本なのかな〜と目を付けていたのが「ポケット呼吸器診療」(2022版は¥2,000+税)。お手頃+ポケットサイズで、画像から薬剤の使い方までよくまとまっている本です。何より肺野画像の専門用語が画像付きで分かりやすくまとまっていてすき!

 

神経内科

神経内科は成書を買うより、ネットでいいものを沢山クロールして使っていたような気がします。買った本は上述のmedicinaくらいかな。神経領域はネット上にきちんとした記事がよく転がっているので、あまり成書を買う必要性を感じませんでした。

 

どうしても言葉の定義がなかなか難しい神経内科さんですが、疾患定義やら、治療法やらという話で、日本神経学会が出しているガイドラインをよく引きました。また、神経系の専門があると、神経診察で診療点数を取ることができますが、その雛形となる「神経学的検査チャート」は初学者が取り漏れを防ぐためにも有用です。

あとは脳卒中診療で切っても切れないNIHSSちゃんですが、正直救外にあるような一覧表チャート(協和キリンのこの表など)は、評価項目をきちんと覚えていないとしんどいです。そういう意味で、岡山市総合医療センターが出している「解りやすいNIHSSの評価」(PDF)は初学者向けに物凄く分かりやすいです。

 

脳外の教科書としては金芳堂の「脳神経外科学」が大変細やかなものの、かなり辞書的なので、脳外にならない限りは図書室で適当に借りてきて参照すればよいのかなとは思います(¥34,000+税)。さわりだけ知りたいのならば医学書院の「標準脳神経外科学」(¥7,000+税)も安定ではあります。

 

てんかんは小児にも関係があるので、小児科編にて触れます。

マイナー科

内科は必要最低限しか取らなかったのでひょっとするとマイナー科の方が分量が多いかもしれません。

整形外科

ちょっとした縁で「標準整形外科学」をもらって持っているのですが、正直重いので、医局に持って行くのも面倒で本棚の肥やしになっています。学生時代は「病気がみえるvol.11 運動器・整形外科」(メディックメディア、¥3,800+税)もよいなあとは思っていましたが、これも、他の巻より重いです。整形外科疾患となると大抵は整形外科医を呼ぶことが多いので、あちこち網羅している必要はなくて、こういう時はまずいから整形を呼んでね!というのが分かればいいんだ、ううんと。。。。。。。ありました。

羊土社のこの本は画像も多いし、応急処置の仕方くらいまではカバーされているのに、ポケットマニュアルサイズという良本です。定価は¥4,000+税。踏み込んだ治療となるとそこまでは載っていませんが、整形外科医に紹介できればよい、と割り切れば充分な量かとは思います。骨折のちょっとした分類くらいは載っているのもおすすめポイントです。

 

麻酔科/ICU

麻酔科研修となると結構色んな人が持っているのが讃岐先生の「麻酔科研修チェックノート」。羊土社はこういうポケットサイズの本を作るのが上手いですね。どちらも4千円ちょいで医学書としては丁度いいくらいの案配です(いやつくづく医学書買うと価格感覚がバグりますよね……)。麻酔に慣れてくると、正直チェックノートの前半は要らないなになってくるので、ローテートの後半は薬剤ノートだけを持ち歩いていました。どうやら麻酔科志望によると「他のところは丁寧なのに薬剤量だけアメリカンな大容量」ということなのですが、そこはまあ上級医と一緒に麻酔をかけるので、上級医に直してもらえばよいところです。薬剤ノートの後ろの方にあるプレフィルドシリンジとγ計算の換算表はめちゃめちゃ便利です!

 

とはいえ上記の本はかなり初学者向けで、麻酔をかけるとは、というところから始まっています。心外、肝臓、呼外(分離肺換気など)と主科が変われば、麻酔で注意するポイントは大きく変わってきます。そういうものを細かく調べるには、診断と治療社の「麻酔科研修ノート」がお勧めです(定価¥7,500+税)。あとは麻酔科系の雑誌LiSA(MEDSi)のバックナンバーを探すのもよいかもしれません。

 

麻酔科研修ノートにも記載はありますが、小児のチューブサイズ計算に関しては、これらの資料がよいのではないでしょうか。日本語の成書は割と年齢からの算出式を頻用していますが、個人的には、小児は体格差がかなりあるので、身長からの算出式の方がよいと思います。

 

色んな麻酔薬のdoseに関しては、日本麻酔科学会が「医薬品ガイドライン」を無料公開していて、ぱっと調べるのに便利です。麻酔薬だけでなく鎮静薬やNSAIDsなどの一般的な鎮痛薬までカバーされていてとてもよいです。中外医学社の「ICU/CCUの薬の考え方、使い方Ver.2」も買いましたが、買った後ICU管理と縁がなく、辞書的に引くこともなく過ごしています(いいのか悪いのか……)。

anesth.or.jp

 

本当は人工呼吸器の本も買った方がよかったのかなとは思いましたが、こちらは実臨床で大分強引に覚えてしまいました。やっぱり実学尊重な感じで生きております。

 

皮膚科

皮膚科はローテートでは回っていませんが、学生時代から使っている良本があるので。北大の清水先生の「あたらしい皮膚科学」は図もキレイでとても分かりやすい良本です(定価¥7,800+税)。旧版は個人のサイトでウェブ公開されているので、外来で画像だけ見比べるなら、旧版をネットで探してもよさそうです。後者の「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」ですが、画像もさることながら、自ら色んな虫に刺されてそれらを撮影したという情報がインパクト大です。普通にいい本なのですが、「いやほんと痛そう……」が先に来る希有な本です(笑)。

 

耳鼻科

先述の通り耳鼻科は何だかんだ切っても切り離せない科なので、そのうち成書を1冊くらい買っておこうかなと思うのですが、書店でぱらぱら見ていて、「あたらしい耳鼻咽喉科・頭頸部外科学」がなかなか読みやすそうだなと思いました(定価¥9,000+税)。診断と治療社の「耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート 改訂第2版」も学生時代に使っていてなかなかまとまっていたと思います。

 

続きます

というわけでかなり紙幅も増えてきましたので続きは次回にとしたいと思います。次回は救急編を挟む予定です。それでは〜

 

関連:初期研修医 / 教科書 / 医学書

*1:産婦人科回った時、婦人科疾患のMRIでめちゃめちゃお世話になりました

*2:電子版読めるのはいいけど、日本医事新報社で出してる全ての本が一覧表示になっていて、そこから買った本を探して登録しなくてはならない、ちょっとめんどくさい

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