ちいさなねずみが映画を語る

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これは「コーエン兄弟の作らなかったコーエン映画」 - 映画『スリー・ビルボード』『ファーゴ』ネタバレ考察3

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GG賞授賞式とBAFTAノミネート発表があって暫く空いてしまったが、『スリー・ビルボード』ネタバレ考察の続きである。Critics Choice Awardsの授賞式もあって映画賞もアツいのだが、何故か謎のクエリで拙ブログに辿り着いた人がいるらしいので、第3弾をお送りする次第である。なお、今後もあの話の犯人を書くつもりは無い(というか……うんにゃ自重自重)。

 

因みに前の記事はこちら。☞

mice-cinemanami.hatenablog.com

mice-cinemanami.hatenablog.com

 

 

 !!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※当記事には『ファーゴ』('96、映画版)のネタバレを含みます※
ファーゴ (字幕版)

ファーゴ (字幕版)

 

 ——観てない方はくるっと足を引き返した方がいいかも……しれない

 

 

コーエン映画、もとい『ファーゴ』との共通点

映画を観た理由たるおかえもん氏の総力特集だけでなく*1、『スリー・ビルボード』がコーエン兄弟作品と類似しているという声はあちこちから上がっているようだ。何せ主役がジョエル・コーエン(コーエン兄)の妻フランシス・マクドーマンドである。

Embed from Getty Images

 

『デイリー・ヘラルド』に掲載されたダン・ガイア (Dann Dire) の批評記事は、「皆さんはマーティン・マクドナーの『スリー・ビルボード』を、ジョエルとイーサンの兄弟が決して作らなかった、凄まじいコーエン兄弟映画だと考えるかもしれない」"You can consider Martin McDonagh's "Three Billboards Outside Ebbing, Missouri" a terrific Coen brothers movie never made by siblings Joel and Ethan." という書き出しから始まる。かくいう筆者は、こんな映画ブログを運営しながら『ファーゴ』と『モネ・ゲーム』くらいしか観ていない貧弱な鑑賞履歴なのだが(しかも後者に至ってはリメイク作品の脚本のみ担当だ)、言われてみれば『ファーゴ』といくつか共通点があったように思うので少し考察してみたい。

www.dailyherald.com

そもそも『ファーゴ』とは

※作品のネタバレを含みます※

『ファーゴ』"Fargo"は1996年にコーエン兄弟が制作した作品。タイトルにも使われたノースダコタ州ファーゴが一瞬舞台となるが、隣接するミネソタ州ミネアポリス、またブレイナードこそが本当の舞台だ。ファーゴはノースダコタ州の東端にあって、幹線道路も通るアクセスの良い街。位置関係を示すとこんな感じになる(ついでにミズーリがどこかも示してみた)。なお、ロケ地についてまとめた記事もあったので興味の有る人はどうぞ。☞

 

ミネアポリスに住む自動車ディーラーのジェリー・ランディガート(ウィリアム・H・メイシー)は、度重なる借金で首が回らない。義理の父親は資産家だが、婿であるジェリーをよく思っておらず、財布の口もかなり堅い。そこでジェリーは、義父から金を引き出すため、妻ジーンの偽装誘拐を思いつく。

依頼した相手はならず者のカール(スティーヴ・ブシェミ)とゲア(ピーター・ストーメア)。ところがこのふたり、そもそも最初から息が合っていない。よく喋るカールに対し、ゲアは寡黙で、互いに疎ましく思っている有様だった。ふたりは何とかジーンを誘拐するが、隠れ家に向かう道の途中で職務質問に遭ってしまう。ここで寡黙ながら手が早いゲアが警官と対向車の男を殺してしまい、負の連鎖の引き金が引かれる事となる。

 

一方、この射殺事件の捜査に当たることになったのは、地元ブレイナード警察の署長マージ(フランシス・マクドーマンド)。どんどん狂っていくジェリーとカールの計画に対し、マージの生活は終始ほのぼのしたタッチで描かれていて、その対比も面白い作品だ。

 

www.youtube.com

「実話ベース"風"」の脚本

 『ファーゴ』の冒頭で、この話は実話だったと示されるが、これは演出上の嘘だ。実際にこのような事件が起きた事実は無く、飽くまでコーエン兄弟のオリジナル脚本となっている。

ここで示すハフィントンポストの記事では「結局実話に基づいていた!」と銘打たれているが、彼らが参考にして取り入れたのは作中の要素要素であって、話そのものが実話というわけではない。

イーサン・コーエン「僕らは実話映画に分類される映画を作りたかっただけなんだ」("We wanted to make a movie just in the genre of a true story movie.")

www.huffingtonpost.com - 彼らが実話と明かしているのは、シリアル番号を悪用した車の詐欺と、ウッドチッパー(木材粉砕機)のくだり

  

一方の『スリー・ビルボード』は、「こういう話、あるよね」というのをフィクションで描き出した作品。この作品が映画賞を賑わせた2017年から2018年にかけては、ハーヴィー・ワインスティーンのレイプ事件が明るみに出て、「#MeToo」運動が高まり*2抗議した女優陣が黒いドレスでゴールデン・グローブ賞に参加したことでも話題になった。勿論この作品の脚本はそれより前に書かれているのだが、レイプ事件、更に「捜査されない事件」*3が社会問題となっているのは、今に始まった話ではない。

front-row.jp

rollingstonejapan.com - ワインスティーンの逮捕は2018年5月のことだった

 

スリー・ビルボード』で描かれるのは、未解決となったアンジェラのレイプ殺人事件に加え、白人ながら「支配者階級」に入れないディクソンの姿(この辺は前記事に書いた)、そしてレイシストヘイトクライムが存在する鬱屈とした社会状況。旧来は黒人相手のヘイトクライムばかりが報道されてきたが、昨今ではユダヤ系を標的にした事件も発生しているし、件数自体も増えている(BBC News Japan)。

単に「実話です」と示した『ファーゴ』より、有りそうで無い話を淡々と描く『スリー・ビルボード』の方が、よりダークな印象を見せるのは当然だろう。

 

正体はどちらもダークコメディ、そして「勘違いの文学」

『ファーゴ』のジャンルは、shmoopによれば「ダークコメディ、ネオ・ノワール、犯罪映画」となっている。RottenTomatoesでは「ドラマ、ミステリー&サスペンス」とされているが、マージの捜査風景よりジェリーとカールの計画が大崩れしていく様が中心になっているので、ダークコメディという方が正しいだろう。勘違いと意思疎通失敗の末に、ジェリーもカールもとんでもない悲劇へと嵌まり込んでいってしまう。

 

結末こそ違えど、『スリー・ビルボード』も同じような枠組みを持っている。この作品で話を進める鍵となるのも勘違いと意思疎通の失敗だ。ディクソンが広告屋のウェルビーを殴りつけに行くのは、看板が原因だと考えた大きな勘違いだし(ウィロビーはその辺を上手く濁した手紙を残しているので真相は闇だ)、ミルドレッドが署に火炎瓶を投げつけるのも、それが警察やウィロビー信奉者の仕業だと勘違いしたためである。何よりディクソンが真犯人と……(おっとこれ以上は言い過ぎのようなので敢えて濁す)。また作中ではアンジェラが殺された日が回想シーンとして描かれているが、明らかに彼女とミルドレッドの会話はすれ違っている。そして、娘へ愛を伝えきれなかった後悔があるからこそ、ミルドレッドの悲しみは余計に根が深い。

 

この作品がコメディに分類される理由も、ここにある。マクドナーは映画.com掲載のインタビュー(下記)で「本作はアイデアと主人公だけで書き始めたので、どんな展開になるか分からなかった。しかし書き進めるにつれ、それぞれのシーンが別の奇妙なシーンへと導いてくれたんだ」と述べている。この言葉の通り、勘違いの連鎖は物語をあらぬ方向に運んでいくのだ。

eiga.com

そう言えばどこかで、「喜劇と悲劇の違いは、読み手が真実を知るかどうか」みたいな話を聞いた記憶がある。勿論それだけで割り切れるものではないのでちょっとしたトンデモ論なのだが、登場人物が「そっちはアウト」という深みに嵌まっていくからこそのコメディもあるのは確かで、一理無くもない。この作品も、ウィロビー、ディクソン、ミルドレッドの3人が「え、そっち行く?」「そこまでやるの?」という方向に進んでいくからこそのおかしさがあって、そういう点で「ダークコメディ」と言われるのも無理は無いなと思った。

 

www.youtube.com - フォックスサーチライト公式より海外版公式。もう1度これを観ると確かにブラックコメディ臭がする

 

因みにタイトルで引用した『デイリー・ヘラルド』の記事では次のように評されている。

「[コーエン映画風になった]1番の理由は、『スリー・ビルボード』が、コーエン風の要素を巧妙に練り合わせたからだろう——ショッキングで突然の暴力、悪魔的なダーク・ユーモア、登場人物に対して闇雲に抱く共感、そして次に何が起こるか釘付けになっていることを要求する、漠然とした終わり方」

Mostly because "Three Billboards" skillfully blends other Coen-esque elements: shocking, abrupt acts of violence; diabolically dark humor; wildly evolving empathy for its characters; and a nebulous ending requiring us to contemplate what happens next. ——デイリー・ヘラルド、2018年2月19日最終更新

 

共通点は脚本だけではない

スリー・ビルボード』の音楽を手掛けたのはカーター・バーウェル。この作品で英国インディペンデント映画賞を受けているが、元々はコーエン映画全ての音楽を手掛ける人物である。

Mildred Goes To War

Mildred Goes To War

  • provided courtesy of iTunes

 

Fargo, North Dakota (From

Fargo, North Dakota (From "Fargo")

  • Brussels Philharmonic & Carter Burwell
  • サウンドトラック
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

 

賞レースの上でもふたつの作品には共通点がある。フランシス・マクドーマンドは『ファーゴ』でアカデミー主演女優賞の栄誉を得た。『スリー・ビルボード』で2回目のオスカーとなったのも不思議な縁である。そして、壇上まで歩いて行くマクドーマンド、どちらも大変男前!

www.youtube.com - ニコラス・ケイジだ! ニコラス・ケイジだ!

www.youtube.com - こちらのプレゼンターはジョディ・フォスターとジェニロー

 

全然関係無い話だけど

『ファーゴ』のレビューを書く予定は暫く無いので、備忘録代わりに過去のツイートを貼っておく。

——ほんとにカール(スティーヴ・ブシェミ)、本編中でずーーーーーーーーっと「変な顔の男」って呼ばれてるんですよ

 

 

関連:スリー・ビルボード / マーティン・マクドナー / フランシス・マクドーマンド / サム・ロックウェル / ウディ・ハレルソン / コーエン兄弟 / ファーゴ

*1:わたしの賛否についてははてなブックマークでは意図的にぼかしてあるのだが、何かどっかであらぬ方向に誤解されていたような気もしないではない

*2:MeToo」活動を00年代に立ち上げていたタラナ・パークに関する記事を見つけた。本筋と関係無いのだが、良い記事だったので途中まででも読んでほしい☞#MeTooの創始者タラナ・バークが「レイプ文化」と闘った20年|一過性で終わらせないために | クーリエ・ジャポン

*3:勿論レイプ事件に限らず、ヘイトクライムだってそう

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