ちいさなねずみが映画を語る

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映画『ソー:ラブ&サンダー』の当てにならない感想さん

最近当直明けに映画を観に行くのにはまっているのだが*1GotG Vol.2.5と聞いたのでMCUの新作『ソー:ラブ&サンダー』"Thor: Love & Thunder"('22)を観てきた。というわけでこの記事はIWの記事並みに当てにならない感じでお送りする予定である。

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準備はいいかな〜?

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!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※この記事には映画『ソー:ラブ&サンダー』のネタバレを含みます※
※でも、中身としては実にくだらないものです※

 

因みにこの記事のネタ元はかなりの割合 "Insider" に載ったこのインタビューです。

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まだ続いていた「アスガーディアンズ

今作にGotGが出演するというのは随分前から言われていた情報だし、そのために劇場へ足を運んだのだが、正直「アスガーディアンズってまだ続いていたの?(笑)」みたいな気持ちでげらげら笑ってしまった。弟ロキの死で自堕落ビール腹おじさんになった上に、絶妙にのんびりしてて話の通じないソー。いい加減ロケットちゃん(声:ブラッドリー・クーパー)かネビュラちゃん(演:カレン・ギラン)がしびれを切らすタイミングなんじゃないかと思っていたら、まさかの不思議ちゃんガールことマンティスちゃん(演:ポム・クレメンティエフ)すらちょっと引いてて笑ってしまった。つくづくこの喧嘩っ早いメンバーの中でよく一緒に旅をしてきたものです。

 

でも今作のソーはひと味違う。ムジョルニアに代わる新たな武器ストームブレイカーを使いこなし、ビール腹は丹念なRIZAPそぎ落とし、貫頭衣の下には鍛え抜かれた肉体を秘めて戦うのだった。「オレひとりで充分だ!!!」とばかりにぶんぶんとストームブレイカーを振り回すソー、……正直ビール腹時代よりめんどくさい!!!!!(笑) GotGだって大抵依頼主の話を聞いてないで無茶苦茶やるけども!!!みんな「おれだけでいいわ!!!」みたいなこと言うけども!!!*2

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でもそんなアスガーディアンズも、今作で終わりを告げることになる。別々の道を歩むことになり、スター・ロード/ピーター・クィル(演:クリス・プラット)と別れを無駄に長く惜しむソー。「これが人間の握手、これがアスガルドの握手、そして……」のシーンは、クィルより寂しがり屋で笑ってしまった。つくづくクリヘムとタイカだからこそできるこのギャグシーン。そしてミラノ号を「俺の船」と言い放ったりと*3、GotGよりGotGっぽいソーである。

 

この辺は多分どうでもよい筋書きなのだが、筆者はアスガーディアンズのシーンで寡黙に戦うドラックスを見ながら、デイヴ・バウティスタの勇姿が見られるのもあと2作品*4なのだな、と感傷に浸っていた。ジェームズ・ガンの解任騒動の後、真っ先に監督を擁護して*5、ガンが降板するならば自分も降りる、と言い放っていたバウティスタ。満を持してGotG Vol.3でドラックス役をやりきるのをしかと見届けたいなと思った。

 

やぎさんゆうびん

違いますか? 違いますね。

やぎさんゆうびん

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惑星を救った(?)お礼に、やぎさん2頭を押しつけられたソーとコーグ。クィルの愛機ミラノ号の中でも爆音で鳴き続け、堪忍袋の緒が早めに切れるネビュラに射殺されかかる始末。案外ソーは気に入っている様子で(タイカ版らしいなという気がする)、この先も随所で大活躍することになるのだった。因みに2頭の名前は「トゥースグラインダー」Toothgrinderと「トゥースグナッシャー」Toothgnasherなのだが、その意味はさしずめ「奥歯ちゃん」と「歯ぎしりちゃん」*6というところなので、たとえ鳴かなくてもめちゃめちゃうるさそうである。

 

ちなみにこのやぎさんの鳴き声は当初全く決まっていなかったのだが、"Insider"のインタビューによると、ポスプロで誰かがこのfan-made PVを見つけてきて、一発採用されたらしい。テイラーも多分びっくりである。

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トラブル

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アスガルドカメオ出演が進化してやがる

ここでちゃんとした映画評ならジェーンがアスガルドへやってきて……という話をやるべきだが、映画館でげらげら笑いながら観たのをそのまま垂れ流している記事なので、当然のように脇道に逸れていく。

本来の国土を失ったアスガルドの民たちは、IW/EGでの騒乱を経て、北欧の漁師町にちょこんと収まって「新アスガルド」を名乗り、観光産業を軸に外貨を稼いでいた。王位を継承した戦士ヴァルキリー (演:テッサ・トンプソン) 自らがこれを先導し、アスガルドは観光立国として随分成功しているようである。因みにヴァルキリーが『オペラ座の怪人』やらブロードウェイミュージカルのTシャツをやたら着てるのが個人的ツボだった。ヴァルの趣味はその辺なのね。

 

カットは変わり、アスガルドの常設劇場で前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』"Thor: Ragnarok"の筋書きを再現する芝居が打たれているシーンになる。はいマット・デイモン!!!2作連続出演!!!!!もうこの辺で笑いが堪えられない*7。この後のシーンを見ると、実は彼は劇作家であったらしい。なんでもかんでも戯曲にしているらしくて空気の読めなさが面白い。

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ソーはクリヘム本人なのかなと思うくらいだったが、実のお兄ちゃんことルーク・ヘムズワースが演じている。本編ではアンソニー・ホプキンズが演じていたはずのオーディンはグラント博士の見る影もあんまりないサム・ニール*8。そしてもうひとり、まさかのシットコムの女王メリッサ・マッカーシーがヘラ役で出演!!!!!アスガルドカメオ出演が進化してやがる。

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このシーンと前後して登場しているのが、ソーとかつてルームシェアしていた「一般男性」ことダリル・ジェイコブソン。すっかりアスガルドの敏腕マネージャーになっていた。この辺の展開はタイカの過去作『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』みたいなところがあるなと思う(この作品にも一般男性が吸血鬼たちのルームシェアに迷い込んでしまうような描写があるため)。

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シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(字幕版)

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(字幕版)

  • タイカ・ワイティティ/ジェマイン・クレメント/ジョナサン・ブロー/コリ・ゴンザレス=マクエル/スチュー・ラザフォード/ジャッキー・ヴァン=ビーク
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カメレオン俳優の本領発揮

穏やかなアスガルドのシーンも束の間、今作の悪役であるゴアがアスガルドを襲撃し、子供たちをさらっていってしまう。ゴアを演じるのは稀代のカメレオン俳優ことクリスチャン・ベール。うっかりすると誰だか分からないくらいの憑依ぶりである(勿論特殊メイクの力も凄いのだが)。因みにゴアのためにはいくつもの「グレー」が準備されたそう。モノクロのシーン、とても美しかったですね。

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クリスチャン・ベールと言えばバットマンが有名だろうと思うが(実際バットマンとこの役との共通点も感じていたよう)、カメレオン俳優ぶりという点では、彼が史上最悪の副大統領と評されたチェイニーを演じた『バイス』をお勧めしたいところである。この作品も特殊メイクの力が光るが、それ以上に役者たちの演技もあってこその高評価なのである。

 

いくらアスガルドでもその選曲はずるい

ゴアとの対決を経て元カノ・ジェーン・フォスター博士(演:ナタリー・ポートマン)と再開したソー。未練たらしいソーによって美化されたふたりの恋路がタイカによって堂々と映像化される。このシーンのナレーションがタイカ演じるコーグなのもずるい。絶対意気揚々とやっただろ。

 

このシーンのバックで流れているのが、北欧、というよりスウェーデンが誇るABBAの "Our Last Summer"。タイトルも「僕らの最後の夏」なのでお察しだと思うが、終わってしまった夏の恋を振り返る切ない1曲である。未練がましいソーにぴったり! スウェーデンだし!

 

映画『マンマ・ミーア!』でも使用され、コリン・ファースが美声を披露していたことでも有名な1曲。『マンマ・ミーア!』とコリン・ファースが好きな筆者としては歌詞までよく知っている名曲である。それだけにとてもずるい。サビのリフレインで普通に爆笑した。だって "I can still recall, our last summer, I can still recall..."(拙訳「まだ思い出せる、最後の夏、思い出せる……」)だぜ……? ソーの未練にあまりにマッチしすぎている(笑)。

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わがままボディゼウスにこれ以上の適任はいない気がする

グラディエーターかと思ったらゼウスでした*9

——LightningとThunderboltのギャグ、面白かったです*10

 

今作で初登場のゼウスを演じているのは、タイカと同郷・NZ出身のラッセル・クロウ。ソーシリーズはクリヘムの出身地オーストラリアで撮影しているので、オセアニア出身俳優がちょこちょこと顔を見せているが、クロウもまたそのひとりである。酷い訛りで喋っているのでオーストラリア訛りなのかと思ったら、よく聞いたところギリシャ訛りだった。私生活の粗暴さで変な印象が付いているが、映画『ビューティフル・マインド』でも分かる通り*11本来は演技派の俳優なので、この辺りはお手の物といったところだろう。体型の上でもゼウスを演じるのに適任過ぎる。ゼウスのわがままボディを表現しつつ、サンダーボルトをあんだけぐるぐる回せるのはクロウだけな気がして爆笑してしまった(笑)。

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病気を乗り越えること、そして父娘の絆

今作の大きな味噌は闘病中ながらムジョルニアのパワーを得て戦いに挑むジェーン、そしてゴアの行動原理となる父娘の絆である。

 

!!! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! SPOILER ALERT! !!!
※この先には特大のネタバレを含みます!!!!!※

 

【ネタバレ】ジェーンのラストシーン

ムジョルニアからパワーを得て、元カレ・ソーばりに寒い台詞を吐きながら果敢に戦っていたジェーン。しかしながら、ラストシーンで彼女の力は限界に達し、ゴアを押しとどめた後、ソーの腕の中でそっと息を引き取る。

 

個人的に好きだったのはポストクレジットのシーンだ。イドリス・エルバ演じるヘイムダルがジェーンを迎え入れ、ここはヴァルハラなのだと告げる。シフのシーンで示唆されていたが、ヴァルハラは戦闘の最中に死なないと行けない場所である。ジェーンは戦いの最後で力尽きて元のジェーンに戻り、ゴアの魂を救う言葉をかけて息を引き取るので、ゴアとの戦闘はノーカウントのはずだ。

 

このシーンはつまり、ジェーンが血液腫瘍との闘いの末に息を引き取ったことから、ヴァルハラに招かれたと示している。病気と闘うことも、立派な戦闘なのである。実にタイカらしいメッセージだなという気がするし、自分の仕事が仕事なのもあって、ぐっときてしまった。

 

【ネタバレ】それはずるいてクリヘム

終戦闘の中、ジェーンに諭されたゴアは、ふと娘の姿を思い、落命したはずのゴアの娘が蘇る。ネクロソードに蝕まれたゴアはそのまま命を落とすが、娘の行く末をソーに託してゆく。その後のシーンで、ソーは本当に彼女を引き取り、シングルファーザーとして育てていたことが分かる。娘の名前は愛を意味する「ラブ」、そう、ここでタイトルの "Thor: Love & Thunder" が回収されるのである*12

 

正直このラストはちょっと救済感が強くてあまり好きではないのだが、クリヘムが自分のインスタに載せていたこの投稿でぐっときてしまった。なんだよラブちゃんクリヘムの実の娘ちゃんなんじゃないか!!!!!おっひょ!!!!!

 
 
 
 
 
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おしまい

というわけで死ぬほど当てにならない、トリビアでもない記事はおしまいです。読んで面白かった真面目な記事をいくつか載せておきます。たしかにIW/EGの後、テレビシリーズも出しただけに、追うべきコンテンツが増えちゃって全て観るのも大変になってしまいましたね。最初から筆者みたいに好きなシリーズだけつまみ食いして観ているのもよいのかもしれません*13

realsound.jp

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映画『ソー:ラブ&サンダー』は好評公開中。同じくタイカ・ワイティティがメガホンをとった前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』は各種配信サービスで配信中。今作もタイカらしくげらげら笑えるコメディ作品でした。こういう作品にしっかり愛とか絡めてくるのがニュージーランド一の監督らしいですね*14

 

関連:ソー:ラブ&サンダー / クリス・ヘムズワース / ナタリー・ポートマン / タイカ・ワイティティ / テッサ・トンプソン / マット・デイモン / GotG

*1:今まで何でやってなかったのだろうと思うものの、よく考えたらハイポ病院で給料も安いのに、無駄に仕事をして帰っていたのだった

*2:GotGのメンバーはならず者の寄せ集めなので、みんな自我が強くて自分一人で充分だと思っている……ネビュラが加わってもその辺のパワーバランスはそう変わらない

*3:こういうのは本来クィルの専売特許ですからね!

*4:GotGの次作と、配信予定のクリスマススペシャル

*5:この辺は賛否両論だと思うが、バウティスタの情の篤さを示すエピソードではあるだろう

*6:"grinder"のみで「臼歯」という意味があり。勿論コーヒーのグラインダーと同じなので、粉挽きなどの意味もある。

*7:ちなみにマット・デイモンは確かクリヘムと元々仲が良くて、その縁で前作のクソカメオ出演が決まったとかいう話だったと思う

*8:そう言えばジュラシックワールド3部作完結編が出るそうですがグラント博士推しのわたしは旧作の3博士が揃ってくれてとても嬉しいです!!!

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*9:言うまでもなくクロウの出世作なのだが、今見たらやっぱり今よりしゅっとしてた。個人的には『ナイスガイズ!』の全然カタギじゃない探偵さんが大好きです(ごっすりんも含めて)。

*10:どちらもMacの端子規格だが、加えて雷様を想起させる名前である。ここに北欧由来のBluetoothが加われば完璧といったところ

*11:そう言えばこの作品では教授が統合失調症と共存する人生を選んでいたのが医学的に興味深いところであった……

*12:イカなのであのグラフィックアートでポップなミュージックにのせてエンドタイトルを出してきて、演出が良すぎて喜んでしまった

*13:ところで筆者の推しはGotGとアントマンです! あとタイカです!

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*14:ワイティティはニュージーランド国内でマオリの子どもを主人公にした作品を作り、NZ興収第1位を2度塗り替えたという実力派監督である。マオリとロシア系ユダヤ人のルーツを持ち、民族の微妙な立ち位置も知るだけに、繊細な作品も作っている。なお、これをメジャー作品としてやったのが、フォックス・サーチライト作品の『ジョジョ・ラビット』である(取り上げたのはホロコーストであるが)。

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