ちいさなねずみが映画を語る

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杜の都から『 #おかえりモネ 』を語る - 第5週〜第7週

実生活が忙しすぎて3週分くらい溜めていた『おかえりモネ』を一気観しました。全然杜の都から語れておらん。何なら『クルエラ』の記事すら溜めています。今回は前回の続き、第5週分からです。

mice-cinemanami.hatenablog.com

 

第5週「勉強はじめました」

遂にモネちゃんが本腰を入れて気象予報士試験の勉強に取り組み始めました。菅波先生も勉強を手伝ってくれます。……待ってわたしにそんなことできない。いくら何でも畑違い過ぎて、熱心さがなければできないことだと思います。そら米麻の皆さんも色めき立つわ(そして分かりやすい葉っぱのあんちゃん展開!)。

——「葉っぱのあんちゃん」についてはこちらをどうぞ

 

一方で、二束三文で売り払われるナラ材に心を痛めたモネは、これを登米市内の小学校の学習机に使えないかと考えつきます。乾燥にかかる時間とコストを解決するアイデアも出し、翔洋さんにはすっかり「プロジェクトリーダー!」と褒められるやら。気象の勉強も活かしながら成長していきます。しかしながら、伐採中の大雨に口を出したモネは、山の棟梁・クマさんに露骨に嫌がられてしまいます。まだまだ青い感じがあっていい展開ですね。

 

ナラ材を使った机には納期の問題がありましたが、モネの奮闘に心動かされた川久保さん(演:でんでん)が引退したお師匠さんたちを集め、みんなで奮闘して市内の小学校分を納めることに成功しました。元々登米も栗原も間伐材の活用へ熱心に取り組んでいますが、その様子がドラマの中でも描かれるのは嬉しい話ですね。出来た机は、早速林間学校でやってきた圭輔たちの小学校へ。どうやらロケ地は登米市の上沼小学校のようです。 

www.city.tome.miyagi.jp

 

第6週「大人たちの青春」

出たwwwwwwwwこれが噂の「内野聖陽鈴木京香で25年前の青春描いてみた!」週です。もうお腹痛いくらい面白い。ネタでしかない。

 

気象予報士試験、受けてみます

はてさてモネは気象予報士試験を実際に受けることを決めました。菅波先生と特訓を重ね、仙台にやって来て試験を受けることになります。試験会場の外観として使われたのは、定禅寺通の東京エレクトロンホール宮城です。東京なんか宮城なんかどっちかにせいと思われるかもしれませんがごめんなさい。大和町に大規模半導体工場を持つ東京エレクトロンが、宮城県民会館ネーミングライツを購入したためにこんな名前になっています。結構いいホールです。

www.tel.co.jp

こちらが県民会館の外観。緑溢れる定禅寺通の真ん中にあるよいホールです。

Miyagi Prefectural Auditorium viewed from a greenway in Jozenji-dori avenue

——neuropower, Public domain, via Wikimedia Commons

 

実はこの直前に仙台の雑感として交差点の高所映像が流れているのですが、めちゃめちゃ馴染みのある場所過ぎて笑いました。場所は県民会館から少し西に行ったところのスクランブル交差点です。何なら高校時代とか緑のおかげで少し涼しい定禅寺通通りたくて遠回りしていたので、大好きな場所なのです。

 

菅波先生の個人レッスンで勉強して気象予報士試験に臨んだモネですが、そこは合格率5%の難関試験、モネはあっさり試験に落ちてしまいます。でもそんなとこも見越して、試験の当日からせっせと勉強に挑ませる菅波先生偉すぎる。筆者なら絶対そんなことできないし、だからこそ菅波先生はあんな感じなのでしょう。モネには「人の気持ちが読めてない」とぶった切られるけれど。

 

まさかの過去編が過去編じゃない(?)

第6週のもうひとつのハイライトは、モネの両親をよく知る喫茶店のマスター・田中(トムさん、演:塚本晋也)が積極的に物語へ絡んでくるようになることです。写真家でもあるトムさんは、モネにとっては米麻にやって来ては写真を撮りに来る陽気なおっちゃんという印象でしたが、実はステージ4の肺癌を抱えるシビアな患者でもありました。積極的治療を望まないトムさんに対し、菅波先生は何とか治療をしてほしいと訴えかけますが、なかなか彼は首を縦に振りません(おまけにモネに「人の気持ちが分かってない」と言われて心当たりありまくりでへこみます)。げっそり痩せ気味の塚本晋也使ってるので何かあるんだろうなと思ったらそういうわけか……*1

 

トムさんの登場で、モネの両親・耕治(演:内野聖陽)と亜哉子(演:鈴木京香)が出会った理由が少しずつ明かされ始めます。時代は遡って1986年。『あまちゃん』ですら昔の両親のシーンでは若手俳優を使っていたのに(これが有村架純ブレイクのきっかけでした)、ふたりがそのまま若手時代として出演するなんて……! まさかの過去編が過去編じゃない!(笑) でもタンクトップ系のコージーも、おっけーバブリー!な教育学生の亜哉子もしっくり来過ぎて何か笑ってしまいます。鈴木京香がそのまま過去を演じるとか最早『重力ピエロ』かな?*2

 

ところで亜哉子さんはトムさん曰く「教育学部生だったんじゃないかな」と言われていましたが、確か高校の教員だったような気がするので、どこの大学なのかな?と邪推してしまいます。師範学校の流れを汲む宮城教育大学は、基本的には小中の教員を育成する大学です。東北大学教育学部の卒業生は、意外に教員にならない印象です。そうすると演じる鈴木京香と同じく東北学院大学を出ているのでしょうか……? 今名前を挙げた3大学だと、学院が一番街中にあるので、コージーのライブも聴きに行きやすそうな気がします。邪推だけど。

 

トムさんの決心

米麻の森林組合にテーブルと椅子を発注しながらも、同じ場所で呼吸困難に倒れ、発注を止めてしまうトムさん。(この時菅波先生が「吸引器!」と言っていますが、うーん正直トムさん喘息あるし吸入剤突っ込む気はする←藪蛇発言) モネは彼のカフェに通い詰め、秘めた思いを聞き出して、彼に生きる気力を取り戻させます。お勉強は菅波先生に敵わないけれど、こういう人の心を読むところは、モネちゃんの方が得意そうです。(こう書くとこの後くっつきそうな書き方ですね……いやそうっぽいけど……)

——人生で大切な手技はみんな『マイナーエマージェンシー』が教えてくれた(そんなことはない)

 

そんなトムさんが写真を撮りに行きたいと話していた「モネの睡蓮」は、登米から程近い伊豆沼・内沼の夏の名物。毎年8月頃になると(丁度お盆の時期)、沼にハスが咲き誇ることで有名です。例年ならば沼を小舟で回るツアーも開かれます。

www.jalan.net

ステージ4の肺腺癌ということで、在宅での積極的治療は難しいだろうなと思わされるところでしたが、トムさんは結局仙台(の仙台医科大学附属病院)で治療を受けることになりました。現実ならば東北大というところで、かなり現実に即しているような気がしますね。

 

第7週「サヤカさんの木」

第7週はサヤカ(演:夏木マリ)が伐採を渋っていた300年のヒバに纏わる週です。あっさり試験に不合格になったモネですが、めげずに次の試験を目指すことになりました。そんな中、遂に300年のヒバを切り倒すことになり、サヤカはそれに合わせて植樹祭を行う計画を立てます。そんな時にやってくるのが……2015年9月の豪雨災害です。

 

ドラマでは大分さらっと描かれていましたが、2015年9月11日、宮城県内は豪雨に見舞われました。朝岡の言う通り台風と前線が相まって大量の降雨があり、宮城県内には初の大雨特別警報が出されています。筆者もぽろんぽろんと鳴る特別警報のアラートに幾度かびっくりさせられた記憶があります。丁度震災から4年半だったこともあり、防災への意識を新たにさせられる日でした。

www.pref.miyagi.jp

そんな中モネとサヤカは語り明かし、実はふたりとも大型台風の日、9月17日に生まれていたことが発覚します(因みにサヤカは「カスリーン台風の日」と話しているので、1947年生まれです)。このシーンで、山側に部屋があるサヤカを気遣って、自分の部屋へ垂直避難させているモネが凄く偉い。折しも静岡や神奈川で豪雨被害が起こり、熱海で土石流が起こった様子をまざまざと見せられたばかりだったので、自分もきちんと防災について考えなくてはと思わされます。(そして勉強したことをきちんと実生活に活かすモネは凄く偉い)。この週、サヤカはしきりと防災のために植樹しているのだと話し、朝岡が連れて来た気象予報士・野坂も山の木の保水力について調査を進めています。熱海の土石流は本当に痛ましい話なのですが、ドラマと現実がやたらとリンクしていて、余計に胸が痛い描写です。

 

朝岡が後輩の気象予報士と共に再登場し、彼の会社で気象予報士として働くことに心が揺れるモネ。1週ごと東京と米麻を往復して過ごす菅波先生の暮らしに疑問を抱きつつも(何なら登米に移住してくればいいのにと思っているようですね)、やりたいことのためには東京に行かなくてはならないのかな? とモネの心が揺れ動きます。でも、「東京ってそんなにいいところですか?」って台詞がモネから出てくるのは大分面白いです。宮城の学生にはなかなか東京に出て行きたい人が多いので(笑)。

 

おしまい!

ということで3週分を大胆に振り返った『おかえりモネ』特集でした。今月からはあまり溜めないように頑張りたいと思います。第8週ではずっとやさぐれたままだった浅野忠信のバックグラウンドについて深掘りされるようです。第1週で産気付いた亜哉子をかっこよくも対岸へ送った彼が、どうしてあそこまでやさぐれてしまったのか? 震災で船を失ったことが背景にありそうだとは匂わされていますが、どういった筋書きになるのか目が離せません。

 

関連:おかえりモネ / 清原果耶

*1:そう言えば塚本晋也は2018年に『斬、』を製作した時に、前作『野火』も引っ提げて度々仙台に来ていたような記憶があります。東京製作の大河ドラマ『いだてん』で副島道正も演じていたので、『いだてん』組ということにもなりますね

*2:仙台が誇る作家・伊坂幸太郎の同名作品を映画化したもの。鈴木京香は主人公ふたりの母親役を演じている

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