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杜の都から『 #おかえりモネ 』を語る - 第2週〜第3週月曜回

朝ドラ『おかえりモネ』勝手に解説記事、今回は第2週分です。過保護過ぎて仕事中のモネに散々電話を掛けてきていた父・耕治が突然モネの働く森林組合に押しかけてきました。そんな折地元の小学生たちが林間学校に訪れ……モネと父の過去も伺える第2週です。mice-cinemanami.hatenablog.com

ジャズで繋がっていた父娘

第1週で島から逃げるように登米に来たことが分かっていたモネ。過保護な父・耕治は、モネが島を出る話をした時のことを悔いており、引き止めればよかったのではないかとわざわざ米麻までやってきます。震災以来ぱったりと楽器をやめ、笑顔も少なくなってしまったモネ。自分もトランペットを吹く父は、娘にまたサックスをやらないのかと訊ねますが、モネは高校の音楽コースに進めなかった時点で諦めたのだと言い切ります。

 

宮城県内で音楽科がある高校はそう多くなく、仙台市内の常盤木(私立高校)か、加美にある国立音楽院のキャンパスくらいなので、気仙沼に住むモネが進学できなかったという高校は明らかに架空の存在でしょう。ここでモネが95年生まれという設定が効いてきます。前の記事でも書いた通り、東日本大震災は、95年生まれの学年が丁度中学卒業のタイミングで起きました。宮城県内の高校入試事情を考えると、この学年がみんな進路を決めたところで起こったのがあの震災だったのです。そう考えると、希望の進路に進めなかったモネが、未曾有の震災を目前にして呆然としていたというのも大分納得できます。脚本の妙です。

 

今週は大学時代の父を知る喫茶のマスターとして塚本晋也も登場しました。初回でイケメンな登場をした浅野忠信はまだ出て来ませんし、第1週でちらりと登場していたモネの同級生たちもまだ全然出て来ないので、暫く登場人物紹介週は続くのかもしれません。しかし内野聖陽の東北訛り全開なのは本当にこの辺の人って感じでいいです(笑)*1

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林間学校

この辺だと林間学校ではなく野外活動と言うのかもしれませんが、とにかくモネの職場に小学生たちがやってきました。本採用の試験を満点合格したモネは、早速子供たちに活き活きと木の活用法を教えます。宮城県内では、以前から翔洋さんの言うような間伐材が有効活用されています。モネが教えた組手什もそのひとつです。林業という点では神去なあなあ日常で描かれたような世界が広がっています。

 

林間学校で急な雨に遭ったモネは、手負いの福本くんを連れて何とか帰らなくてはならないという突然のミッションに遭遇します。気象予報士の朝岡に電話して予報を聞き出すと(本番間近なのに信じられないくらい優しい対応ですが)、ほんの少しの切れ間を見つけて避難小屋へ逃げ込むことに。小屋に逃げ込んだか早いか、今度は菅波から電話がかかってきますが、彼の懸念通り低体温症に陥った福本くんの対応でモネはてんやわんやです。

子どもの低体温は本当に怖いです。身体が小さく予備力がない分、濡れ鼠になっただけでも容易に低体温症を引き起こします。つくづく気象的にも医学的にも啓発的なドラマです。医療監修誰がやってるんだろう……?

 

予想のフィードバックとして電話を掛けてきた朝岡から、海も山も知っているのだから、空も知りなさい、と言われたモネは、ついに気象予報士の本に手を出しました。森林組合の仕事は楽しいけれど、本当に自分のやりたいことは見つけられずにいたモネ。ついに何かをつかみ取ったようですね……!

ところでこのシーン、軽い気持ちで買った教科書を開いて、その難解さに目を剥くモネの描写がとてもよかったです。プロフェッショナルの厳しさを一瞬で自覚して、本をそっ閉じするところなどよく描かれています。しかしながら、モネはその後雲の写真を撮り溜めて、ひとりこつこつと違う方法で勉強に打ち込むのでした。

 

第3週:里帰り編

何だか筆が滑ってしまったので、既に見た第3週月曜回までまとめてしまいたいと思います。第3週は初任給を得たモネの里帰り回。祖母の初盆に合わせてモネは気仙沼へ帰ります。

その直前、森林組合のカフェに出入りする地元のおばちゃんたちが、沢山の農作物や料理をモネに持たせてくれることになりました。あまりの多さにかぼちゃを転がしてしまうモネに、通りがかった菅波はあきれ顔です。そんな彼に、吉田のおばちゃんがひょいっとスイカを投げますが、菅波は上手く取れません(代わりにモネがキャッチします)。もしかして菅波先生には推尺障害*2でもあるのでしょうか? この前後の口ぶりでは、そのせいで本当にやりたかった道を諦めたような話でしたが、果たして……

 

そしてモネの帰省のシーンで、ちらっと石巻線のくすんだ緑が光る車体が写っていたのがとてもよかったです。こないだ乗ったばっかりなので余計にうきうき。作中で語られる通り、気仙沼線は震災後再建を断念し、BRTというバスでの代行輸送で再開することになりました(その後BRTを本線として活用し電車は通さないという決定まで成されています)。地域の足が戻ったといっても、その姿は震災前と同じではないのです。

 

 

関連:おかえりモネ / 清原果耶

*1:仙台に限らず宮城県民はあんまり自覚無く訛っています。都会に近付くほど自覚度が下がりますが、耕治は地元のインテリなので余計自覚が無いのかもしれません(笑)。

*2:小脳失調などで見られる神経所見

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