NHKがクイーンのロジャー・テイラー、ブライアン・メイへの単独インタビューに成功した。既に『おはよう日本』や『NETBUZZ』にて一部が放送されていたが、この度ロジャー・テイラーへのインタビュー分が(ほぼ)全文公開されていたのでご紹介する(後日メイの分も追記する予定である)※追記しました(181227)※。
ロジャー・テイラーインタビュー
ざっと読んだのだが、放送で使われなかった分がかなり多く、充実した内容であった。
冒頭、映画について聞かれたテイラーは、事実と違う部分が多少あることは認めつつも、「人々の心に触れ、そして観客の気持ちが少し高ぶるような、真実の物語ーーそれを伝える映画であることを僕もブライアンも望んでいた。(中略) 事実を犠牲にすることなく、かつ、みんながいい気分で映画館から出てこられるような作品にしたかった」と述べている。歴史改変についてはその是非について色々意見が飛び交っているが、個人的には映画制作上の理由だろうと考えて肯定していたので、彼のこの発言についても納得はいく。
またテイラーは、クイーンの楽曲のいくつかに「アンセムのようなスケールの大きさ」があることを認めている。この辺りは先日放送された『ボヘミアン・ラプソディ殺人事件』でも触れられていたが、クイーンの凄さは、『ボヘミアン・ラプソディ』や『We Are The Champions』に限らず、誰でも歌える名曲がいくつも揃っていることだ。この事実は映画のヒットを後押しした要因のひとつだろうと思う。
中盤フレディ・マーキュリーについて聞かれたテイラーは、「いなくなってずいぶんたつけど、忘れたことなどない。僕たちの一部なんだ」と答えている。インタビューでも触れられているように、テイラーの自宅には劇場から移設されたフレディ像が設置されている。バンドに確執が無かったわけではないが、テイラーの中にはクイーンというバンド、さらにフレディ・マーキュリーという人物(181227追記)がひとつの支柱として立っているように思えて、心が熱くなってしまった。
この後、昨今の音楽事情や政治にも触れ、「皆、何かしらのマイノリティー」という名言まで残しているのに、「フレディと女の子を取り合った過去があるよ」とか言っちゃう辺りは流石のロジャーである(笑)。
ロジャー・テイラーって何かあるとマーティンみたいに中指立ててそうだしブライアン・メイはその横でにこにこしてそうって思ったらどんぴしゃの写真あって草 https://t.co/cFmsITkjj4 pic.twitter.com/d4mkmL2vmN
— ふぁじっこあなみ (@mice_fuz_anami) December 14, 2018
——まあ元々こんな人だ(註:マーティン・フリーマンがインタビューで中指立てがちな人間であることは割と有名。そのせいなのか(?)『ワールズ・エンド』では"WTF"が口癖の住宅販売員にさせられている)
因みにインタビューでは日本についても触れてくれていて、英米でも人気はまあまああったが、初めて本当の意味で熱狂的になってくれたのが日本だったと述べている。映画の公開後、いくつも単独インタビューの申し出はあったろうに、初めて応じてくれたのが日本の国営放送公共放送というのも何だか嬉しさがある。(本当のことを言うとちらほらメイのインタビュー記事みたいなものは出ているのだが - UCR(歴史改変の話)*1、LouderSound)
VR版も興味深い
先行公開されたVR版では、2分少々の動画ではあるが、部屋をぐるっと360度眺めることができる。テイラーへのインタビューは彼の自室(ドラム部屋のようだ)、メイへのインタビューは彼の個人的アーカイヴ(つまりは書斎である)で行われたようなので、その辺りも興味深い。
【NHK-VR】
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2018
「裏まで見せます クイーン独占インタビュー」
イギリスの伝説的ロックバンド、クイーンの単独インタビュー。ロジャー・テイラーさんの自宅にあるスタジオと、ブライアン・メイさんの個人アーカイブで行ったインタビュー現場をまるごとお見せします。
→https://t.co/lCoSHKHgz9#nhk_news pic.twitter.com/BdbmTDvND4
そう言えばこのVR特集には、羽生結弦の五輪連覇祝賀パレードの映像もあって面白かったなあ(何の関係も無いけど)。
ブライアン・メイにも
181226 - 明日メイへのインタビューが掲載されるようなので、後で追記しようと思う。良インタビューなので、取り急ぎテイラーの分だけで公開する!
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181227追記) メイのインタビューも掲載されていた。
お孫さんと鑑賞しに行ったことはInstagramでも明かしていたが、まさか7人みんな連れて行ったとは(笑)「何回観てもグウィルは若い時の僕そっくりだねえ」とかお孫さんに言いながら観ていたのかなと思うとちょっと微笑ましい(完全な妄想だが)。そんなこと言ってたら後ろの方で「(フレディ役の)ラミや、僕の役を演じてくれたグウィリムの演技はすばらしかった。僕たちの容姿だけでなく、どんなことを感じていたかも見事に表現してくれた」とまでべた褒めしていた(笑)。
グウィリムくん関連のブライアン博士テンション高めインスタ投稿(コメント)特集
— ようこ👑QUEENは家族 (@0010pie) December 25, 2018
ブライおじいちゃん本当に嬉しそうなのが伝わる pic.twitter.com/49DJUyViXD
日本について聞かれたメイは*2、テイラー同様に、「初めて日本に行ったとき、世界のほかの場所ではクイーンはまだこれからのバンドだったのに、日本人は僕らがビートルズであるかのように扱ってくれたからね」と答えている。今でも日本を特別な国だと思ってくれている様子で嬉しくも思った。そう言えばこないだは法被を貰って大喜びだったが……*3
www.instagram.com博士のインタビューの後半では、日本でライブを行った後、父親に大丈夫だったのか心配された話が出て来た。メイは1947年生まれだから、彼が言う通り父親世代の知る日本は大日本帝国時代であり、日英同盟も消失して枢軸国側と化していた頃だ。イギリスにしてみれば日本は中国よりもっと先のよく分からん島国だし、生意気にも戦争を仕掛けてきた黄色人種どもの国と考えていてもおかしくはない。
そういう国を音楽で魅了したメイだからこそ、ニュースウォッチ9で取り上げられていた、「僕は壁ではなく橋を作りたい」という発言が出てくるのだろうと思った。世界は再び民族国家成立の向きに進んでいるが、どこかで上手く折り合いを付けられないものかと願うばかりである。
www.huffingtonpost.jp - こないだも紹介したけどこんな話も
映画中の歴史改変については、事実を描くことが主眼だったわけではなく、「フレディの内面までも理解できるような肖像画をどうやったら描けるのか、その追求だった」とした。だからこそ前者を求める人から批判があるのは当然だとしている。一方でフレディ本人については、「そしてその人物[=映画の中心だったフレディ]は僕らにとってとても大切な人だったからね」と述べているが、この発言ひとつ取っても、バンド内の絆を強く感じる次第である。(ううむ、どこぞのパイソンズでそんなことを言うかなあ、げふんげふん)
映画でフレディの苦悩が描かれていることと関連して、そういった悩みを話し合ったか聞かれたメイは、「直接話すことはあまりなかった。時折あるとしても、それは曲を書くとき」と述べている。その中で珍しく直球に表現したのが『永遠の誓い』"It's A Hard Life"だと明かした。
www.youtube.comそう言えばミュージックビデオの出来についてちょっと触れているけれど、これ確かリズム隊に不評だったのでは無かったかな? ご指摘の通り、PV中のロジャー、かなり不機嫌である(笑)
yuuki-rinrin.cocolog-nifty.com
ここでは紹介しなかったが、日本語歌詞もある『手を取りあって』の制作秘話、またお気に入りの日本についてもまだまだ語っているので、是非ゆっくり読んでみてほしい。
そう言えば最後ちょっと触れてるクイーンの3Dブックは、博士の趣味である立体写真作りと関係した1冊である☞
クイーン立体写真集『QUEEN in 3-D』【洋書・日本語解説小冊子付】
- 作者: ブライアン・メイ
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック
- 発売日: 2017/08/29
- メディア: 大型本
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——リュウグウの立体写真作って大喜びしてたのもこういう理由でした
天文学者、20年ぶりのソロシングル発売
180101追記) そう言えば書き忘れていたのだが、博士が20年ぶりのソロシングルを発表したようなので追記しておく。
詳細はこちらで。NASAのNew Horizonsは元旦の10時(JST)にウルティマ・トゥーレでフライバイする予定。ミッションの公式ページも合わせてどうぞ。
190101さらに追記) YouTubeのQueen公式チャンネルにてミュージックビデオが公開されていたのでシェア☞
おまけに
181227追記) このインタビュー公開と前後して、ブライアン・メイのInstagram(というよりブライアン・シンガー元監督のInstagram)で、本編からカットされた『'39』のフッテージが公開されていた。せっかくなのでここでシェアしておく。ライヴエイドも完全版があるとのことなので、恐らく特典盤に収録されるのではないだろうかと思う。しっかし、すなおさん(@Svnao)もTwitterでご指摘の通り、ブライアン・シンガー、途中解雇のはずなんだけどなァ……
関連:ボヘミアン・ラプソディ / クイーン / ロジャー・テイラー / ブライアン・メイ
*1:UCRのこのインタビューでは「続編があるかもね」とまで口を滑らせている博士。あの話はあれで終わるからこそいいのだと思うが、ボラプボーイズ4人組の大集合はまた観たいのでそこは複雑である
mice-cinemanami.hatenablog.com
mice-cinemanami.hatenablog.com
*2:ここで日本について聞くことに批判もあるのかもしれないが、インタビューの主体は公共放送たるNHKなんだから仕方が無い。それとクイーンにとって日本が特別な国であることは否定できない事実だ
*3:プレミアで海外俳優に法被を着せることは色々意見があると思うが、博士に関しては大喜びしているのでオールオッケーである