mice-cinemanami.hatenablog.com - 第1弾:ネタバレレビュー記事
前作はこちらから。
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- 新生メリー・ポピンズ、エミリー・ブラント
- ジャックを演じるのはアメリカ・ミュージカル界の天才
- 彼がフレディ・マーキュリーになるかもしれなかった - ベン・ウィショー
- 母の仕事を引き継いだ姉娘ジェーン
- これはあの大ヒットミュージカルキャストだ!
- 御年93歳コンビ! ディック・ヴァン・ダイクとアンジェラ・ランズベリー
- 最後に
新生メリー・ポピンズ、エミリー・ブラント
前任のジュリー・アンドリュースにとって、前作が撮影された1960年代後半は、うなぎ登りのキャリアを築き、彼女の黄金期とも言える時代だった。1964年制作の『メリー・ポピンズ』でアカデミー主演女優賞に輝いた翌年には(何とこの作品が長編映画デビュー!)、あの名作『サウンド・オブ・ミュージック』でマリア・フォン・トラップを演じている。そんな彼女から主演を見事に引き継いだのは、同じくイギリス出身のエミリー・ブラントだ。
昨年は実の夫ジョン・クラシンスキーが監督した『クワイエット・プレイス』"A Quiet Place"に出演し(実質主演)、全米映画俳優組合賞では助演女優賞受賞の快挙に輝いている。ディズニー・ミュージカルでは、2014年の『イントゥ・ザ・ウッズ』"Into The Woods"に出演しており、この辺りも経験充分。本作でも、だみ声からささやき声まで見事に使い分け、アンドリュースが確立したメリー・ポピンズの魔法の世界を見事に再現してみせた。
因みに『イントゥ・ザ・ウッズ』で共演したジェイムズ・コーデンとは、本作のプロモーションも兼ねてこんな見事なパフォーマンスをしてのけた。ミランダも合わせて3人で早変わりし続ける素晴らしさ……! この映像で登場する『シカゴ』は本作のロブ・マーシャル監督作品だし、『イントゥ・ザ・ウッズ』のパン屋夫妻を再現するし(実際にコーデンとブラントが演じた)、ところどころキャストへのオマージュがかかっているのもよい。関係無いけどこの動画でもいじられるごずりんの前髪よ(笑)(『ラ・ラ・ランド』)。
www.youtube.com - 洋画界隈ではお馴染み、ジェイムズ・コーデンの『レイト・レイト・ショー』!
そんな彼女が初めてメジャーな映画賞で評価されたのは、2006年の映画『プラダを着た悪魔』。この作品で彼女はゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞の助演女優賞ノミネートを勝ち取った。この作品でいけずな鬼編集長ミランダを演じた人物と言えば、本作にも登場するメリル・ストリープである。この機会に是非こちらの作品もチェックしていただきたいと思う。
ジャックを演じるのはアメリカ・ミュージカル界の天才
メリー・ポピンズのよき相棒となるジャックを演じるのは、アメリカ・ミュージカル界の天才リン=マヌエル・ミランダである。2015年には、アメリカ建国の父アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描くミュージカル『ハミルトン』を制作し、トニー賞で13部門16ノミネート11受賞という輝かしい成績を残した。他にもざっくり彼の略歴を知りたい人にはこちらの記事がお勧めである。☞ミュージカル「ハミルトン」あらすじ&キャスト/日本公演最新情報 - アートコンサルタント/ディズニーとミュージカルのニュースサイト
ミランダとディズニーとの縁は、この作品が初めてではない。2016年に制作された『モアナと伝説の海』"Moana"で、ミランダは本編の音楽を共同担当しているのである。この作品の主題歌となった『どこまでも~How Far I'll Go〜』を手掛けたのもミランダだ。そういうわけでこのキャスティングは、実力充分としてミランダありきで決まったものだろう。
ミランダ演じるジャックは、前作でディック・ヴァン・ダイクが演じたバートに相当する役として準備されたもの。ヴォーグ誌のインタビューでは前作に夢中になった過去を明かしていたミランダだから、きっとこのキャスティングにも大喜びだったと思う。キャラクター造形には、2歳の息子が大きく影響したとか!(Praybill)
明らかにミランダのために作られたようなジャック役だが、彼の素晴らしさを如実に感じられるのは、きっと『本は表紙じゃ分からない』中盤のラップシーンだと思う。ミランダの独壇場、とくとご覧あれ……!
www.youtube.com - 該当シーンは2分半過ぎから
彼がフレディ・マーキュリーになるかもしれなかった - ベン・ウィショー
前作から成長して、3人の子どもを育てる父親になっているマイケル・バンクスを演じるのはベン・ウィショー。『パディントン』タイトルロールに『007』シリーズのQ、"A Very English Scandal"ノーマン・スコット役での大絶賛など、このところ話題作出演が続いていて追い切れないくらいだ。そう言えば先日007新作の出演者スチルが公開されて、どのボンドガールよりも可愛くてあざとい表情をしていたことが話題になっていたが……
Back for his third 007 outing after SKYFALL and SPECTRE is cat-loving Q, Ben Whishaw #BOND25 pic.twitter.com/urSlK2a6Dm
— James Bond (@007) April 25, 2019
——あざとい。あざとい。出演発表動画もなかなかにあざとい
そんなウィショー、実は『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリー役を打診されていたという事実はご存じだろうか。実際に役を射止めたのは先日『007』新作への出演が発表されたラミ・マレックだったわけだが、当初のフレディ役だったサシャ・バロン=コーエンが降板した後、最初に噂になったのはウィショーだったのである。(勿論このキャスティングは、ウィショーがイギリス人であること、またゲイであることが大きく影響していると思うが、パールシーの移民だったフレディはイギリスの白人とは少し異なる顔立ちをしているので、正直どうなっていたことやらと思う)
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そんなわけで、今回この作品でマイケルを演じていると聞いた時、筆者はウィショーの歌声がどんなものか大きく期待していた。あの大ヒット映画、『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディを演じていたかもしれない彼、はてさて……
いや、普通に上手いやんけ。
www.youtube.com - サントラ3曲目『君はどこへ』"A Conversation"
ウィショーが最初に歌声を披露するのは、ミランダによる『愛しのロンドンの空』、そしてスタッフロールの後ろで流れる序曲に続く本編3曲目の『君はどこへ』"A Conversation" である。妻を亡くして男やもめになったマイケルが、屋根裏部屋の思い出深い品々を前に、妻なしで子どもを育てていくことの不安を歌う曲だ。この曲の他にも、最終盤で大団円となる『舞い上がるしかない』の歌い方もなかなかに吹っ切れていて素晴らしい。
いやはや、彼にもっともっとミュージカル映画の仕事が回ってきてほしいなと思うばかりであった。そう言えば子ども向けと言えば、ウィショーと筆者の大好きなサリー・ホーキンズが出演している『パディントン』も宜しく頼むぜ!
母の仕事を引き継いだ姉娘ジェーン
マイケルの姉ジェーンを演じるのはエミリー・モーティマー。前作でふたりの母ウィニフレッドはサフラジェット活動にうつつを抜かしていたが、ジェーンはそんな母親の気質を受け継ぎ、労働者の人権活動に勤しんでいるようだ。今までのディズニー作品ではなかなか描かれてこなかった人物造型であり、『プーと大人になった僕』のイヴリン然り、ディズニーも変わってきているなあという気がする。
そんなジェーンを演じるモーティマーの代表作は、ニコールを演じて2作に出演したリブート版『ピンクパンサー』、またメインロールを演じた『ラースと、その彼女』。後者は彼女のできない冴えない童貞男(ごずりん)がある日突然ラブドールを彼女にしちゃって大騒ぎというなかなかに訳分からん作品である。またヒュー・グラントの出世作となった『ノッティング・ヒルの恋人』では、グラント演じるタッカーが思い描く理想の女性として登場している。また2010年の日米合作映画『レオニー』では、イサム・ノグチの母レオニー・ギルモア役を演じて主演している。
男やもめの弟マイケルの元へ通い、甥・姪の世話も買って出るジェーンが可愛らしく見えるのは、モーティマーがジェーンというキャラクターに息を吹き込んだから。この可愛らしさをこれからも追っていきたいなと思わせるくらい素敵な女優である。(しかし、サリー・ホーキンズと同じで、これくらいちゃんと名前を知っているのに、出演作をほとんど観たことがなかったというのもちょっと勿体ないと思わせられる)
因みに、前作『メリー・ポピンズ』でジェーン役を演じたカレン・ドートリスは、さくら通りで主人公たちとすれ違う女性役としてカメオ出演している。マイケルを演じたマシュー・ガーバーは若くして膵炎で死去しているほか、ジュリー・アンドリュースは「エミリーの物語になるべき」と述べて出演を断ったと報じられているが、前作への目配せがちゃんと仕込まれているのは嬉しい話である。因みに『本は表紙じゃ分からない』に登場するペンギンたち、メリー・ポピンズが帰ってくるきっかけとなる屋根裏の凧も前作への目配せ!
www.youtube.com -前作の話になってしまうが、『お砂糖一杯』のシーンのつぐみちゃんはディズニーが誇るオーディオ・アニマトロニクスの先駆けだ!
これはあの大ヒットミュージカルキャストだ!
前作にも登場していたバンクス家のメイド・エレンを演じるのは、イギリスの大女優となりつつあるジュリー・ウォルターズ。マイケル役のベン・ウィショーとは、『パディントン』シリーズでも共演している。またハリポタシリーズでウィーズリーきょうだいの母モリーを演じていたことでも有名だ。
そして今作新登場となる、メリー・ポピンズのまたいとこトプシーを演じるのはメリル・ストリープ御大。今年で70歳というのも信じられないし、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞では輝かしい受賞・ノミネート記録を持っている。そして白眉は、ロシア訛りの英語を使いこなした『ひっくりカメ』シーンでの大熱演!*1因みに「トプシー・ターヴィー」という名前は『ノートルダムの鐘』にも登場するが、元々は原典のキャラクターへの言及である。
更に本作の悪役であるウィリアム・“ウェザーオール”・ウィルキンズにはコリン・ファース。誕生日が1日違いのヒュー・グラントと並んで、イギリスのイケオジ俳優の一角を成す名優である。というか筆者はコリン・ファースが出るのが1番の決め手になってこの作品をチェックしていたくらいだ。
さあ皆さん、このキャストの並びを見て何か閃くものはないだろうか。ジュリー・ウォルターズ、メリル・ストリープ、コリン・ファースと来たら……
勿論、『マンマ・ミーア』だ!
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当時ソフィの父親候補のひとりを演じたピアース・ブロスナンの歌声が酷評され、ラジー賞助演男優賞にまで輝いてしまったが、元々オペラ歌手としてレッスンを受けていたメリル・ストリープの演技は大絶賛された。その中でも、ストリープ演じるドナが自らの人生を歌詞に重ね合わせる結果となった『勝者がすべてを』"The Winner Takes It All"は作品中の名シーンと呼ばれるほどだった。
またジュリー・ウォルターズも、ドナの友人で昔のバンド仲間であるロージーを演じている。もうひとりのバンド仲間ターニャ(演:クリスティーン・バランスキー)と共に、"Dancing Queen"や"Super Trouper"を歌うシーンも有名だ。またコリン・ファースも、ソフィの父親候補であるハリーを演じ、こちらは"Our Last Summer"を割といい感じにカバーしている。
そんなわけで、この3人が別作品で共演している姿は、『マンマ・ミーア』ファンにとってはそこそこ面白い状況なのである。
御年93歳コンビ! ディック・ヴァン・ダイクとアンジェラ・ランズベリー
前作への目配せの中で、全世界が最も喜んだはずのキャスティングが、ディック・ヴァン・ダイクの出演である。前作でメリー・ポピンズのよき友人バートを演じたヴァン・ダイクが帰ってきた! おまけに前作では老けメイクを施してドース・シニア役を演じたが、今回は作品世界が彼の実年齢に追い着いてのドース・ジュニア役で、この辺りも前作のファンにはたまらない。終盤の登場シーンでは、軽やかなタップダンスも見せてくれ、瞳の奥に潜む若々しさを画面のこちら側に届けてくれた。
そしてもうひとりのレジェンドが、『舞い上がるしかない』のシーンで風船売りとして登場するアンジェラ・ランズベリーである。こちらもヴァン・ダイクと同じ1925年生まれの93歳。伸びやかな歌声はマイケルを舞い上がらせた風船のように軽やかで、物語自体にも花を添えていた。
www.youtube.comランズベリーは舞台版『スウィーニー・トッド』や『王様と私』に出演した経験を持つ、ベテランミュージカル女優としての顔も持っている。声優としても活躍しているが、ディズニー的にはアニメ版(本家)『美女と野獣』で、ポット夫人役を演じ、そのタイトル曲を歌ったことでも知られる。
最後に
どの作品をとってもキャストが豪華なことで知られるディズニー作品であったが、この『メリー・ポピンズ リターンズ』はなおさらという出来である。そんなキャストが歌う曲も珠玉の数々なので是非聴いていただきたい。この映画に関する記事の第3弾はそんなサウンドトラックを取り上げる予定だ。
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——円盤も6月5日発売が待ちきれない筆者
さてお次は第3弾としてサントラ記事……と行きたいところだが、1度お休みして『アベンジャーズ/エンドゲーム』の記事をどどん!
関連:エミリー・ブラント / リン=マヌエル・ミランダ / ベン・ウィショー / エミリー・モーティマー / ディック・ヴァン・ダイク / アンジェラ・ランズベリー / ジュリー・ウォルターズ / メリル・ストリープ / コリン・ファース / ピクシー・デイヴィーズ / ナサニエル・サレー / ジョエル・ドーソン / 平原綾香 / 谷原章介 / 岸祐二 / 堀内敬子 / 森田順平 / 島田歌穂 / ロブ・マーシャル / メリー・ポピンズ