ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

久々にブリリアで沢山映画を観ました

ここ1ヶ月ほど大変ばたばたとしていて、ゆっくりと映画を観る時間もなかった。忙しかった分、急に何するでもない時間ができたので、何の映画を観ようか皆目見当も付かない。そう言えば忙しさにかまけてブリリアの配信作品を放置していたので、折角だから一気観してみた。相変わらずいい作品ばっかりだったので、ちょっと記録に残しておく。

 

ブリリアってなんやねん、という人にはこの記事を。ブログを始めた頃の記事ですね。短編映画祭を背景にしているだけあって、いつも作品の目利きがしっかりしている。

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ハーモニー / Harmonies (2015年・フランス)

今日最初に観たのはフランスの『ハーモニー』。オペラ歌手だったローラは舞台上で突然失声し、キャリアを絶たれてしまう。失意の彼女が散歩中に出会ったのが聾唖のコメディアン・ロレンツォ。一期一会だと思っていたのに、彼はローラのアパルトマンにやってきて、手話を教えてくれるのだった……

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作品はオペラの最中に失声するシーンから始まるが、見せ方がとても工夫されていて、映画的に面白かった。ラストシーン、ロレンツォの抱擁は、ローラへの愛情表現と聾唖の彼が音を"聴く"手段というふたつの意味があって愛おしい。オペラ歌手を演じるローズマリー・スタンドリーはプロの歌手であり、劇中登場する "Oh My Love" は作品の前年にドム・ラ・ネナと共作で出したアルバムからの1曲だ。Eurydice Calméjane監督のデビュー作。2015年、20分23秒。配信は今年12月29日まで。

Birds On a Wire

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  • 発売日: 2014/03/31
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——当該曲はアルバムのラストに収録

ハロー・アゲイン / Hello, Again (2014年・イギリス)

次の作品はイギリスから。実写版『アラジン』での好演が記憶に新しいナオミ・スコットが助演している。母親を亡くし、憔悴しきったオーウェンは、父を置いて母の墓前に向かい、隣の墓に手を合わせに来たモーラと出会う。墓の中の父へ話しかけるモーラの言葉を、オーウェンは自分への挨拶だと勘違い。ひょんなことから奇妙な会話が始まる……

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最近イギリス訛りが大分分かるようになってきたけれど、自分では発音再現できないんだよなあ、ということを思いながら観ていた。口をしっかり動かすアメリカ英語に比べて、イギリス英語は何というか"発音が深い"気がする。一方モーラ役のナオミ・スコットはわざとインド訛りで話していて、そこもまた勉強になる。ラストシーン、父が観ているホームビデオの内容がオーウェンへのメッセージになっているのも、よくある演出ながら心温まる一幕。Tom Ruddock監督、2014年、11分34秒。配信は来年1月6日まで。

祖父とのお別れ / Eutre Deuils (2015年・フランス)

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もうひとつフランスの作品を。こちらはおじいちゃんの散骨をテーマにしたドタバタ劇。孫ふたりとおばあちゃんで延々車中旅をしているが、孫同士は口争いばかり。やっとのことで目的地に辿り着くが、かつての家には別の主[あるじ]が住んでいた。おじいちゃんの散骨場所選びはいつまで経っても難渋し……

 

前の家主とはいえ、突然散骨をしたいと言われたら筆者でも戸惑ってしまうと思う(笑)。ラストシーンで流れるチャック・ベリーの "Johnny B. Goode" が印象的な作品だ(そう言えばこの曲は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストも飾っていたのだった)。Frédéric de Brabant監督、2015年、16分54秒。配信は来年1月13日まで。

Johnny B Goode (from "Back To The Future")

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最後の望み / Erledigung Einer Sache (2014年・ドイツ)

今回観た中で、1番狂おしいけれども愛おしい一作。母を亡くしたヤーコプは、彼女の遺言に従って、精神病院に入ったきりの父親へ会いに来る。父は母との不貞を疑って実の弟(ヤーコプの叔父)を殺し、罪を償った後この精神病院へやって来たのだった。母が今際の際に明かした真実に、心が追い着いていないヤーコプ。やってきたヴァイス医師に生い立ちと事件の真相を訥々と語るが……

 

事件の真相もさることながら、この物語の結末もひたすらに辛い。終始陰鬱なトーンで描かれているのだが、こういう作品もまた好みだなと思った。ヤーコプの時計は、きっと父のものだったのだろう。Dustin Loose監督、2014年、20分40秒。配信は来年1月20日まで。

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犬の生活 / A Dog's Life (2014年・ベルギー)

今度は打って変わってシニカルで笑えてしまうアニメーション作品を。あなたが出掛けているうちに、飼い犬が人間よろしく生活していたらどうだろう? そんな妄想を作品にしたアニメーション。

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飼い主の不在中、自由に羽を伸ばしているのに、帰ってきそうな時間になると「犬らしい」所作を思いだそうと付け焼き刃の練習をするのが面白い。飼い主が構ってくれないと思ったら、最後の最後で衝撃の結末に辿り着き、心の中で笑ってしまう一作。Pieter Vandenabeele監督、2014年、8分20秒。配信は来年1月27日まで。

 

サミラ / Samira (2016年・ドイツ)

ヨーロッパの現代社会を切り取った一作。ドイツからは定期的にこういう社会派映画が出てくる気がする(何と言ったって贖罪のようにヒトラー映画を作り続ける国だし)。フランス語通訳のヤノッシュは、貨物船に隠れて不法入国したアフリカ人女性が、自殺を仄めかして立てこもっていると呼び出される。策を弄して女性を部屋から出すが、彼女の出た部屋には赤ん坊がおり……

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移民問題に揺れるヨーロッパ社会を切り取った一作。ドイツは近年シリア移民などの問題に揺れ動いており、こういった作品が出てくるのも然もありなんだ。ハンブルクメディアスクール在学中だったCharlotte A. Rolfes監督が、修士課程の課題作品として取り組んだもの。良作に年とか立場は関係無いのだなと思わされる。2016年、16分。配信は来年2月3日まで。

 

ゾンビと花束 / Over My Dead Body (2015年・アメリカ)

家で音楽を掛けてるんるんに家事をしていたら、突然ノックされてゾンビがやってきた。花束を差し出して愛の言葉を囁くゾンビから、外はゾンビ・アポカリプスの真っ只中なのだと告げられる。はてさて、この後どうしよう?

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いやあほんとにキリスト教圏はゾンビものが大好きなこって(笑)。血を見ればひっくり返るヴィーガンのゾンビとか、ただのネタでしかない。さくっと見られる尺だけれど、随所に笑いの種が蒔かれていて、明るい気持ちになる一作。Timothy Plain監督、2015年、6分54秒。この作品だけ配信終了間際で、11月11日までなのでお早めに。

 

おしまい

というわけで今回は一気観した短編映画たちをさくっとご紹介した。Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINEでは、無料のメールアドレス登録だけで、世界中の良作短編映画を観ることができる。各作品は3ヶ月ほど配信され、随時更新されるので、是非ご登録を。ブリリア、そろそろ配信作品円盤化とかしてくれないかなあ……

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  • 発売日: 2012/12/05
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——過去には劇場公開された作品をアンソロジー化してリリースしているのですが

 

関連:ブリリア / Brillia SHORTSHORTS THEATER ONLINE / 短編映画

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