筆者は映画だけでなくいわゆる映画音楽も好きなのだが、最近ふと思い出して映画音楽ばかり集めたプレイリストをかけてみた。『坂の上の雲』の主題歌である"Stand Alone"が入っていて、好きな曲なのでついリピートしてしまう。
実はこの曲、第1部から第3部にかけて、3人の歌手が歌い継いでいる。第1部は世界の歌姫サラ・ブライトマン。第2部は日本が誇るソプラノ歌手森麻季。そして第3部は作曲家・久石譲の実娘である麻衣だ。
——これは麻衣バージョン
筆者のプレイリストに入っていたのはブライトマンと森のものなのだが、ヴォカリーズのところはふたりとも大変素晴らしい。でも日本語歌詞の部分になると、やはり森に軍配が上がってしまうなと思うのであった。
これはやはり、森が母語話者なので、正確な発音が分かって歌っているというところが大きいと思う。ブライトマンもよく噛み砕いて歌っているのだが、助詞の強弱であるとか、細かい発音*1であるとかが少しずつ異なっている。勿論そのことは彼女の素晴らしい歌唱を前にしては玉に瑕なのだが……
歌唱における日本語の発音というと、例えば合唱の時に、口の形を綺麗にしなさい、とか、助詞は弱く語頭ははっきりと、と言われるわけだが、そういうのもナチュラルな日本語として聞くには大事なのかもしれない。ミュージカルを数多く手掛ける劇団四季に至っては、公演の曲を全て母音だけにしてトレーニングする、と公言しているが、そういうのもはっきりしっかり聞かせるための一助なのだろう。
逆に言えば、我々が日本語以外の外国語を話す時にも、同じようなことが起きているということである。日本人歌手が英語の曲を歌って「カタカナ英語じゃないか」と思うことはままあるわけだが、それも発音であるとかイントネーションの問題が大きい。昔そういう部活にいて隠れ専門でもあるので、なかなか面白いな、と学術的に考えてしまった。
世間は新しい大河ドラマ『鎌倉殿の13人』開始で盛り上がっているが、製作上の問題から足かけ3年のスペシャルドラマになったものの、『坂の上の雲』も大河ドラマに引けを取らない名作である。既に放送から10年以上が経過しているのがにわかには信じ難いほどだ。日本が誇る劇伴作家のひとり、久石譲の書いたスコアにも注目である。COVIDさんが落ち着いたら愛媛に足を運びたいなあ*2。