ちいさなねずみが映画を語る

すきなものを好きなだけ、観たものを観ただけ—

医学生だって卒業旅行に行きたい

随分と大きな主語で、大きなことを、と言われてしまいそうだが、そんなことは気にしないことにした。

 

COVID-19が世界的に流行し始めて、そろそろ半年は過ぎようかというところである*1ゴールデンウィークまでの緊急事態宣言で第1波は何とか押さえ込んだが、相も変わらず東京では火種が燻り続けていて、6月19日の県境を越える移動の解禁でパラパラと広がっていった印象だ。思うところが無いわけではないが、端的に言うならば、「やれやれ」といったところだろうか。いわゆるGo Toキャンペーンも始まり、よくよく気をつければ国内旅行だっていいんだよ、という雰囲気になってきたが、そう簡単に腰は上がらないというのが正直な気持ちである。

 

実習の合間にロッカー室でぼーっとしていたら、ひとつ下の学年が、やれ東医体*2がどうの、海外に行く卒業旅行の予約がどうの、という話をし始めた。呑気な話をしているなあというのがこちらの印象である。どう考えても年明けに全て丸く収まっているとは思えないし、うっかりどこか旅行して拾ってこようものなら、新年度からちゃんと働けるかどうかも怪しいものだ。実際、今年の春には京大病院が「2人以上で会食したものは全員謹慎」と言い渡して、新年度から働くはずだった研修医57人が謹慎に追い込まれたというニュースがあったし(BuzzFeed)、多分他人事ではないのだろう。卒業旅行の行き先については、友人とも家族ともいくつか目星を付けてあったが、どれもきっと無理なのだろうな、という諦めが大きい。

 

そもそも、5月の半ば(39県が解除されたとき)にあれだけ感染者数が減っていたのに、7月に入ってまた上がり調子というのはおかしな話だ。テレワークやオンライン呑み会でやって行けることが分かったはずなのに、緊急事態宣言の解除、そして県を跨ぐ移動の解禁と共に、気付けば色んなものがじわじわと元に戻ってきている。あの新規感染者の減少は、緊急事態宣言が出されて、例年ならばゴールデンウィークにあっただろう人の移動を徹底的に絶った結果だったわけだが、喉元過ぎれば何とやら、なのだろうか。「経済が」「経済が」という言葉が免罪符のように使われるのもおかしな話だと思う(昔の記事)*3。「やった気」の感染対策*4を施して「対策は万全です!」と言われても、「そうじゃない」感が満点だ。やるべきことと、そうでないことが、あべこべになっている。

 

色んなものがじわじわと元に戻ってきているのは、感染が落ち着いている県の医療現場も同じだと思う。相変わらずマスクだとかガウンの供給はかつかつなようだが、それでも一時期よりは大分余裕が出てきた気がする。数日使い回せと言われていたマスクは1日1枚になったし、手術室で使うのも、洗浄できる布マスクから不織布の紐マスクに変わってきた。でも、学生が今まで病棟で適当にかっぱらっていた*5マスクは、「供給が落ち着いてきたので、個人で準備してね★こっちで準備するやつは引き上げるよ★」と言われ、何のための学費やねん、と思わされてしまう。これは某大学さんへの個人的恨み言だ。

 

ぐだらぐだらと書いてしまったので、話を元に戻す。医学生だって卒業旅行に行きたい。一般人よりなまじ医療の知識があるために「医療人としての自覚を」と言われてしまいがちだけれど*6、その前に医学生だって一個人である。気心の知れた友人と、学生生活の終わり掛けに旅に出たいと思うのは、他学部の学生たちと同じことである。心に決めた行き先は、のどかな温泉宿かもしれないし、TDRUSJのようなハイパー遊園地かもしれないし、はたまた海外かもしれない。 そのためには、せめて国内だけでも感染状況が落ち着いてくれなければどうしようもない。地方では落ち着いているけれど都心部はまだ、という状況ではダメで、完全制圧が必要だ。第2波と言われる現在の状況が傍証となっている。

 

なあ、わたしが言ってるのは、今まで一生懸命手洗いうがいに取り組んで、用がなければステイホームしていた真面目な人たちじゃないんだよ。コロナパーティとか、金目当ての移し合いとか、はたまた出来ていたはずのテレワークを撤回したりとか、ビデオ電話でいいのに呼びつけてくるのとか、そういうヤツらに言ってるんだよ。あんたたちが何考えてるか知らないけど、感染症なんて罹らないに越したこと無いんだからね? インフルエンザだって人は死ぬし、何ならちょっとした風邪でも、死ぬ人いるからね? どうせ薬なんて無いし*7、ワクチンも多分できないし*8、そしたらもう罹らないようにじっと耐えて、嵐が過ぎ去るのを待つしかないわけですよ。

 

なあ、流行、落ち着いてくれよ。悪いのはウイルスだから、運悪く罹ってしまった人を悪く言う気は無い。ただただ、感染者数がゼロに収束して、そこから暫く静穏な日々が続き、その先に元通りの日常が待っていることを願っている。落ち着いたら今までの鬱憤を晴らすように旅に出よう。そのために今は我慢の時だ。

 

めちゃめちゃ旅行きたくてしょうがないから、推しの旅行雑誌でも貼っとくわ。

CREA Traveller 2020 Summer NO.62[雑誌]

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  • 発売日: 2020/06/30
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関連:COVID-19

*1:起点は春節あたりに取ることにした

*2:「とういたい」、東日本医科学生総合体育大会の略。東日本にある医大が集まって行われる運動部の大会。西日本ならば「西医体」。平たく言えば医学部のインターハイの東日本版。

www.touitai.jp

*3:経済が崩壊すれば医療も立ちゆかなくなるので、経済を回さなくてはならない、ということ自体に異論は無いが、それを免罪符として感染リスクのある行為すら許されてしまうのは間違っていると思う。国の指針だとかそういうものに準拠して、制限の範囲内で一生懸命やっている正直者が馬鹿を見るのはおかしな話だ

*4:例えば「店員はフェイスシールドと手袋を着用しています」とか。みんながマスクしている前提ならフェイスシールドなんて要らないし、付けるべきなのは眼に飛沫を受けるおそれのある作業、つまりは咽頭拭い液採取とか、そういう作業をする人たちだけだろう。手袋は「接触感染対策」と言われているが、結局は自分を守っているだけであって、手袋が汚染されればむしろ感染を助長することが視点から抜け落ちている。本当にやるべきは、作業前後のアルコール消毒とかなのに、何故かそちらは広まらない

*5:語弊がある表現だけど、実際自由にそこから取ってね、と言われていたので

*6:そういえば三重大学の医学部でクラスターが出て大問題となっていたが、医学部だから騒がれるものの、内訳を見たら低学年が多いようだし、よくよく考えればそこらの大学生クラスターと大差は無いしなあと思ってしまう(勿論、低学年のうちから「医療人としての自覚を」と叩き込まれるのが医学部なわけだが)。

www.mie-u.ac.jp

www.tokai-tv.com

*7:ウイルス性肺炎に対しては元から薬という薬はあまりなくて、せいぜいがステロイドで過剰免疫を抑えて、解熱などして対症療法……くらいだったので、こちらとしてはまあ納得のいく感じではある。オルベスコが散々持ち上げられていたが、そういうことを知ってると、まあそりゃ効くよね、くらいの認識にはなる

*8:そもそもRNAウイルスのワクチンは作るのがなかなか難しいし(インフルエンザだって毎年変異し続けてずっと流行しているのだから)、コロナウイルス自体も、普通の風邪ウイルス的なものなので、多分永遠にできないんじゃないかと思っている。ワクチンが出来るならば出来てほしいとは思うものの、2003年から大流行したSARS-CoVのワクチンも開発の噂だけで成功したような様子が無いし、今回のSARS-CoV-2に対するワクチンだって分が悪いだろう

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